第七話 ナルシスト男の意外な過去と新しい住民
「でだ。シャルフ」
と、俺はシャルフを見る。
「お前について教えて暮れないか」
「ええ。そうですね。
ヨシキさんとは子供は三人は欲しいですね。あなたと僕の子供だ。
さぞかし可愛らしく美しい子供になるでしょう。もちろん、ヨシキさんがもっと欲しいと言うのでしたら、僕は何人でも頑張りますよ」
「何を頑張る気だ! つか、誰がそう言う事を教えろ。と、言ったんだ」
と、寝言を言っているシャルフの頭をハリセンで叩く。
……この性格、素なのか演技なのかわからない。今までは、ただの天然バカだと思っていたが、あの時の激高ぶりを見ると考えてしまう。
「お前、呪いの帝国とはどう言う関係なんだ?」
と、俺が尋ねればシャルフは黙る。
「ああ。嬉しいです。ヨシキさん。
僕と所帯をもつ決意を」
「どう曲解した!?」
と、俺は頭を再度、ハリセンで叩く。
「本気で、真面目に聞いているんだよ。
それ以上、真面目に答えないならド頭をかち割るぞ」
と、俺が言えば、
「まあ、良いでしょう。
あなたに興味を抱いて貰えた。それは嬉しいことです」
と、ようやっとシャルフはまともに言うつもりになったらしい。
「私には妹が居ます。ヨシキさんとも勝るとも劣らぬ可愛らしい妹が!
まあ、妹なので恋愛感情は抱いていません。恋愛感情を抱いているのはただ一人!
そう、ヨシキさん。あなただけなのです」
「お前、ナルシストの女好きだけじゃなくシスコン属性もあったのかよ」
残念なイケメン要素が盛りだくさんなやつだ。
と、俺は呆れる。いや、それはどうでも良いところなのだが……。
俺と比べるとは、こいつはよっぽどのシスコンだ。
念のために言うと、俺はナルシストではない。
だが、呪いの影響で男からは絶世の美女……と、言うかひどく男性から魅力的に感じるようにされているのだ。
そんな俺と比べるというだけでも、よほどの美人かあるいはただの兄馬鹿だろう。
「ふふふ。嫉妬ですか?」
「いや、呆れているんだ」
シャルフの言葉に俺はそう答える。
あいにくと、自分より容姿が美しいとかそう言うので嫉妬するのはあの兄と弟に挟まれた次男坊には生まれない感情だ。
「そして、美しい母と美しい父と友にエレメラの街で暮らしていました」
『『エレメア!?』』
シャルフの言葉に驚愕の声を上げるフィリとアリスにフルーにローイ。
「知って居るのか?」
「ああ、有名だ。有名な剣豪が沢山、いる剣士の街。
剣を扱うものならば、一度は生きたい聖地のようなものだ」
と、フィリが言う。なるほど、だから剣の腕前だけは自画自賛しても自意識過剰にならないというわけか……。と、俺は妙な納得をした。
そこで、産まれ育ったシャルフは当然ながら剣の道を修行していた。
剣術を努力していたシャルフは、素晴らしい剣を手に入れる為に必要な鉱物を取りに向かっていた。なんでも、近くの村に偏屈だが腕が良い鍛冶屋がいたそうである。
その鍛冶屋は必要な剣を創るのはお金だけではなく、材料を持ってくるように言うのだ。なんでも、自分の剣の材料ぐらいは自分で用意しろ。と、言う事らしい。
まあ、その考えは理解できない分けではない。そもそも、名匠と呼ばれる人間というのは、そう言う人間がわりと多いものだ。と、俺は根拠もなく納得する。
とにかく、その中で得によい鉱物を手に入れる為に向かっていた。
その最中であった。
「呪いの帝国が街を襲ったんです」
当時、呪いの魔女王こそ封印されたが呪いの帝国は復帰を願い各地で活動をしていた。 当然ながら高い剣の腕前を持つ者達を仲間にしたい。と、思ったのだろう。
「質問。呪いって剣と関係があるの?」
と、尋ねたのは薫だ。
「呪いの剣とかあるじゃないか。
ほら、妖刀村正とか」
と、俺は言う。
妖刀村正。俺の世界で有名な妖刀をあげろ。と、言われたらおそらく高確率で名前が出るだろう。とは言え、それは天下人となった徳川家康の血縁が、何度も村正によって命を絶たれた事に由来しているらしい。
要するに、有名人が不幸な事件で何度も関わったのが村正だったらしい。
「ムラマメ?」
「村正」
と、フルーの言葉に俺は訂正をする。
「まあ、持ち主を不幸にすると言う曰くがある刀だよ。
まあ、俺たちの世界には本当に呪いがあるわけじゃない。
だから、そう言うような不幸な事件が偶然にも何度も起きただけだ」
と、俺は訂正する。
「そちらの世界にも呪いの力の剣があるということですか。ああ、さすがはヨシキさん。
知識が豊富。まさしく才色兼備と言えましょう」
「はいはい。
で、持って居ると体力が消耗する呪いとか……。手にすると、何かを失うとかそう言うデメリットを持つ代わりに、強化された剣とかじゃないのか?」
と、俺は推測を口にする。
「その通りだ」
と、ローイが言う。
「たとえ、剣の素人だとしても呪いの剣を使えば並大抵の剣士よりも高い実力を発揮する事が出来る。だが、それはあくまでもそれなりにだ」
「つまり、元から高い実力を持った剣士が能力を上げる呪いが掛かった剣を使う。
それによって、さらに強くなるというわけだ」
わかりやすく言えば、ドーピングだ。オリンピックとか大きな大会で、有名選手が薬で身体能力を底上げして優勝する。と、言う事がある。良い子はまねしちゃいけないぞ! な、手段である。とは言え、たとえば運動神経が人並み程度の人間が、どんな薬品を使おうが、それを使って大会に出たところで予選すら突破する事は出来ないだろう。
当たり前と言えば、当たり前だがな。つくまり、いくら底上げするとは言え限界というのはあるのだ。十の力を与えるとはいえ、元から十の力を持っていれば二十の力だ。
だが、一の力しか持って無ければ所詮は十一だ。
そもそも、動きとなれば身体能力を上げる事だ。その上がった身体能力を使いこなせるのか? と、言うのもあり元から凄腕の方が効率的と言う事だ。
「私がこの名剣。薔薇の戦乙女神を手にして孵った時には、すでに街は……滅んでいた。
大半の者は連れ去られ……亡骸すら、呪いのために持って行かれた後だった」
その言葉に俺は黙る。
剣の名前にいろいろと、ツッコミどころがあったが(無駄に長いとか、そこにも薔薇をつけるのか? とか、その剣にそんなたいそうな名前があったのか? とか、すごく中二病くさい。とか……まあ、いろいろだ)黙っておく・
いくらセンスがない名前の剣とはいえ、名剣なのは本当なのだろう。
その名剣を手にして、両親に誉められ妹に尊敬される。
そんな出来事がおきるはずだったが、それは一気に絶望と悪夢に叩き落とされた。
「私は……生き残りとして、呪いの帝国に調べた。
そして、ある研究施設で……ようやっと妹を見つけ出す事ができた。
だが」
そこまで来てシャルフは顔をしかめて言う。
「妹は呪いで……異形の姿へと変えられていた」
口に出すのもおぞましい姿とシャルフは言う。
言葉を話すこともなく、その眼に光が灯る事もない。
知能も低下してしまい、もはや獣以下の存在。
まともに歩く事すら出来ないと言う状況であった。
両親はまだ見つかっていない。すでに、無くなって居るのか……はたまた、生きて居るのか? 生きて居るとしても、いったいどんな姿なのか?
それすら、解らないそうである。
「だからこそ、私は旅をしつつ剣の腕を磨き!
そして、呪いの帝国を滅ぼし……妹を家族を取り戻すのです。
妹にかけられた呪いを解放する方法を調べるのです」
おおー。まっとうな理由で動いているのか。と、俺は少しだけ見直した。
だが、
「あのな。それ、呪いの解呪屋に頼む事はしなかったのか?」
うん。それが、最大の疑問なんだよな。
と、俺は思いながらツッコミを入れる。
呪いの解呪屋。つまり、呪いを解く専門家だ。
フルーやローイという存在を考えるに、けして珍しい職業では無さそうだ。
「それは、すでにした」
「したのか」
てっきり思いつかないぐらいの馬鹿だと思っていた。と、思ったのは黙っておく。
そのくらいの空気はよほどのKYじゃないかぎりは解る。
「思いつかないほど馬鹿ではなかったんだな」
あ、言ったよ。と、ローイを見る。KYキングと呼ぼう。
「黙れ。男に馬鹿にされると腹が立つ」
「女なら良いの?」
シャルフの言葉にフルーが疑問を口にすれば、
「女性にそう見られるのは、私の失策。なら、それを直せば良いだけです」
「わかりやすい奴だ」
と、シャルフの言葉に俺は呟く。
良く言えば、フェミニストの男尊女卑ならず男卑女尊というやつだろう。
まあ、そう言う所が馬鹿に見えているんだろうからたぶん、治らないと思う。
あと、何度行っても俺を男だと認識していない事がこれで理解する。
「で、すでにして、どうだったんだ?」
と、無駄な争いは意味が無いので俺はそう話を進めることにした。
「呪いは説くことはできなかった。
乗ろうのに特殊な媒体を使っているらしい。その媒体を見つけない限り、妹は未来永劫に呪われ続けているそうだ」
なるほど、質が悪い呪いだ。
趣味が悪いともいえる。
俺はフルーの方を見ると、
「そういう呪いもたしかに存在しています。
呪いはたいていは、解呪すれば消えますが核がある限りは呪いが消えない。
そんな呪いがあります。ヨシキさんにかけられている呪いもそういうのです。
核となっている九十九の呪いが消えない限り、消えない呪いです」
なるほど。わかりやすい。
「まあ、呪いを別の呪いの核にする。と、いうことはまず不可能。
それができたからこそ、呪いの魔女王は魔女王と呼ばれているのです」
並大抵の技術ではない。と、いうことなのだろう。
まあ、そうそう簡単にまねされても不愉快だけれどな。
「呪いの核は呪いの帝国が所持しているといいます。
その呪いの核から生まれる悲劇による悲しみ、憎しみ、絶望、そういった感情を集めて、別の呪いのエネルギーにしていると聞きます」
その言葉を聞いて、俺はフルーをみる。
「はい。呪いのエネルギーにはもっとも強いのは人間が生み出す負の感情です。
もともと、人を呪う気持ちというのは負の感情から生まれますから」
「なるほど」
その理論は納得だ。
たとえば、異性にモテモテの男性がいる。そして、その異性でハーレムを作っていてその中に、自分の思い人がいたら爆発しろ! と、呪いの言葉ぐらいは吐き出したくなる。
「なんで、人は人を呪うんだか」
と、あきれたように言うローイ。だが、
「あのな。正常な人間ならば、人を恨んだり呪ったり憎んだりするもんなんだよ。
むしろ、それが正常だと俺は思うね。
正しいと言い切れないが、間違っている。と、断言もできない。
つか、それをお前が言うか? フルーに対する対応もある意味では、負の感情だぞ」
俺の言葉に顔をしかめるローイ。
「まあ、羨ましがる、嫉妬する。その感情も、使い方をわきまえれば……制御さえできていれば、良い結果を生み出すことができるんだよ」
たとえば、好きだった人が別の人と付き合った。恨むかもしれないが、その恨みをもってもっと良い男になろう。と、努力する。そして、もっと魅力的な女性と付き合おうとする。そういうふうに、自分の中で昇華してよい結果を生み出せるようにする。
それさえできていれば、良いのだ。
そもそも、神話の世界から人を呪う神やら祟り神が存在しているのだ。イザナギ、イザナミの時代ですら怨みや怒りから呪いの言葉を吐いて、あの世ができたという話だ。
ギリシャ神話なんぞ奥さんは旦那さんの浮気で、嫉妬をしまくりだ。まあ、あれは旦那さんも問題がある気がする。
「そのため、私は妹の呪いを解くために呪いの帝国と戦いつつ。人々に恨みや憎しみといった負の感情だけにと囚われないように愛を広めているのです!
そして、妹を救うのです」
「……お前は、大物なのか。それとも、大バカ者なのかのどちらかだな」
と、俺はあきれたようにつぶやく。
まあ、こういう人間というのもよいのかもしれない。
俺はそう思いながら、食事を食べ終えて街へと戻った。アリスも一緒に……。




