第三話 ドラゴン退治って言うのは、呪いの解呪屋とは無関係じゃね?
お久しぶりです。だいぶ、久方ぶりの更新です。
すみません。夏は更新が遅くなりやすくなります。
ファンタジーに出てくる生き物と言えば?
妖精、エルフなどもあるが、やっぱり王道と言えば、ドラゴンであろう。
ドラゴン! 東西南北問わずに伝えられる伝説の生き物である。
面白い所は、西洋のドラゴンは火を吐き凶暴なる悪い存在であり、英雄やら勇者やら騎士やらに対峙される結末がある。
対して、日本を初めとした東洋では水を司る神聖なる霊獣であり神様扱い。そのために、守り神だの龍神と言う言葉があるほどである。
何となくだが、この世界でドラゴンというと西洋の竜を思わせる。
蜥蜴に羽根が生えたような外見をしており、やっぱり巨大。口から火を吐くと言うのがなんと言ってもイメージしやすい。
実質、この世界では基本的なドラゴンと言うのはそう言う種族であった。
知能は一部を除けば低いらしい。
知能が人間並に高い存在は特殊竜と呼ばれている特別な存在。知能も高く、一定の経緯をもって対応しており、ドラゴンを操る術を持つ竜人も、彼らを操る事は出来ずむしろ、守り神として敬っているらしい。
まあ、それらは例外中の例外らしく大抵は五段階にわけられる。
超小型、小型、中型、大型、超大型である。
で、今回、襲ってきているのは大型。
わかりやすく言うならば、二番目に大きく強さも二番目に強いのが基本らしい。
「なんで、この町にそんなドラゴンが来ているんだよ!」
と、俺は叫ぶ。
あいにくと、ドラゴンに怨まれる覚えはこの町にはないはずだ。いや、まさか……。
「呪いでドラゴンが寄ってくるとか?」
「あり得そうですが、違います。いや、呪いのせいですけれど」
俺の質問に否定するキュリオが言う。
なんでも、操りの呪術でそのドラゴンは操られているらしい。
「誰が、ドラゴンをこの町に……」
と、俺は考える。あいにくと、この町の住民はまず、この町の外に出て居ない。出たのは、俺と薫ぐらいだろう。……あ、まさか……。
「まさか、俺たちが原因か?」
あり得る。
フィリの実家はお取りつぶしになってそれを怨んでいる人間はいるだろう。さらに、フルーの存在もある。フルーはこれでもか! と、怨んでいる人間もいる。
ドラゴンでフルーを殺させる。と、言う計画を立てている人間もいるかもしれない。
「とにかく、いそいで魔法協会へとお越し下さい」
「いや、急ぐ理由は解るけれど……。
なんで、俺たちまで?」
そもそも、俺は戦闘のプロではない。もちろん、格闘技をやってはいるがあくまでそれは平和な現代日本でのスポーツとしての格闘技だ。
もしも、プロの軍人(自衛隊だ)やあるいは、警察官と戦って勝てるか? と、聞かれたら迷わずに無理だと断言できる。
所詮は、学生のスポーツである。
しかも、今の俺は女の体になったのだ。
女の体になる前に比べたら一気に身体能力が落ちている。
「解っておりますが……フルーが原因の可能性もあります」
なるほど。俺も考えたことだ。
とにかく、俺たちは素直に協会へと進む事になったのだった。
「迫ってくるドラゴンはラッファードラゴンです」
「すみません。種族名を言われてもさっぱり解らないんですが」
待合室と言うか部屋に通されて言われた言葉に俺はきっぱりとそう言う。
有名、無名とか無知とか勉強不足以前の問題として、異世界のドラゴンの種族なんぞ詳しいわけ無い。
「すみません。少し、急ぎすぎました」
と、僕の言葉にキュリオが謝罪すると説明をしてくれる。
ラッファードラゴンは、大型ドラゴンの中では比較的、知能が低いドラゴンらしく。魔法などでは人間でも操る事が可能らしい。
主食は風であり、飛ぶ事で風を食べているらしい。ただし、風を基本の栄養源にしているとは言え、人間も食べないわけではないらしい。
むしろ、どちらかと言うと雑食に近い。
また、一度でも戦闘状態になると狂暴の一言に尽きる。
まさに暴風と言う言葉に相応しく、周囲に荒れ狂う風を振りまく。
さらに飛行能力にも長けており、空を飛ぶ魔法を使える存在でも飛行能力に劣っておりまともに戦っても勝てない。
基本的に温厚な種であるらしいが、怒らせてはいけないドラゴンの一つらしい。
「怒ってないときは、翡翠のように緑色の光沢を放っていますが……。
怒りに我を忘れると鱗が真紅に染まります」
「……怒りで我を忘れる」
脳裏に大量の虫が谷にある小さな国へと襲い掛かる。と、言うシーンを思い出した。いや、あれは普段は青い瞳をしていたけれどね。
「あの、念のために聞きますけれど」
と、言ったのは同じようにつれて来られた薫である。ちなみに、フィリもいる。あと、協会の手伝いをしている兄貴もいる。
「まさか、群れで行動しているとかはありませんよね」
どうやら、薫の脳裏にも巨大なダンゴムシもどきが集団となって襲い掛かる光景を浮かび上がらせたのだろう。まあ、巨大な虫に滅ぼされるよりも、ドラゴンに滅ぼされた方が格好いい。とは言え、滅びて欲しくない。
「いえ。ラッファードラゴンは群れません。百年に一度、卵を産みますが卵は天空に浮かび上がり続けており、暖める必要も無く特殊な雲のようなものに覆われています。そして、自動的に帰り雲のようなものの栄養を補充して、成長して行きます。
なので、群れとか仲間意識というのはありません」
それは、良かった。ドラゴン退治なんて一匹でも大変そうなのに、ドラゴンの群れとなるとこの町を見捨てるしかない。だが、おそらくだが呪われた俺たちには行き場はない。
だが、それは一匹でも逃げ出せないと言う事実はある。
「ドラゴンが操られているとはどう言うことですか?」
と、フィリが尋ねる。
そう、ここからが本題なのだ。
「はい。私は基本的に町などに近づくドラゴンを誘導する事を職業としています」
と、キュリオが言う。なんでも、ドラゴンの中にはただ通るだけで災害を引き起こしかねない無自覚災害とされるドラゴンもいるらしい。そう言うドラゴンを倒すのは難しいが、方向を誘導して被害が少ない場所などへと向かわせる事なら出来る。
それが、竜使いと言う魔法使いの仕事の基本らしい。
「ですが、あのドラゴンは魔法が聞きません。
おそらく邪竜化の呪いでしょう」
と、忌々しげに顔をしかめるキュリオ。
「邪竜化?」
初めて聞く言葉(当たり前だが)に俺は思わず聞き返した。
竜は本来ならば、魔力に対す力が人間より高い。そのために、その自分に害を与えるような呪いなどを無効化する性質がある。
正確に言えば、弱い呪いではその身に宿す魔力で打ち消してしまうそうだ。
だが、それはあくまで簡単な呪いでもあるそうである。
そして、竜にかける事に特化した呪い。それが、邪竜の呪いであり術者が呪いを操る事が出来るようになる呪いである。
操られた竜は術者によって操られてしまい、その戦闘能力なども跳ね上がる。ただし、その代わりに寿命や生命力を大量に消費してしまい、死に絶える。
ただし、死に絶えた後も竜の身から呪いが振りまかれてその近辺では、むこう千年間は草木も生えず苔すら生えない死の土地となる。
「その竜がこの町に近づいて来ています。
おそらくですが、この町を破壊し尽くすでしょうし、破壊し尽くせなくても死に絶えてこの町は死の町となるでしょう」
「迷惑な」
迷惑の一言で住む話しではないがそう言うしか思いつかなかった。
「けれど、いったい誰があんな呪いを……」
と、フルーが考えるように言う。
「呪いの魔女王の仕業じゃないのか?」
と、俺が尋ねる。
呪いの元凶なんて呪いの魔女王の仕業ときまっていると思っていたのだが……。
「いえ。あの呪いは遅効性は不可能の呪いです」
と、言ったのはフルーだ。
「あの九十九の呪いは遅効性と言うか、時限式の魔法であることが条件ですが……。あの呪いは即効性で、トラップ……つまり、一定の条件でその呪いが発動させる呪いにする事は不可能です。いくら、呪いに特化している性格、性根がクソ曲がっている代わりに魔法の才能にだけは長けているやつとはは、いえ根本的な性質をいじることは不可能です」
と、言う。
「たまに、口が悪いわね。フルーって」
と、薫があきれたように言う。
たしかに、基本は丁寧な口調だが根本な所は口が悪い。(主に、呪いの魔女王に関してだけでだが……)
それは、さておいて、
「それに、あれには術の生け贄が必要なのです」
「生け贄?」
と、俺は思わず聞き返す。
「はい。ドラゴンは簡単な呪いは吹き飛ばす。
完全にドラゴンを操るのに、人間の生け贄を利用しているのです」
と、フルーが言う。なんでも、術式を使うために術者の媒体として肉体に術式を組み込みその人物をドラゴンへと同化させる。
ちなみに、ドラゴンが死ぬとその呪いの生け贄となった人物も死ぬ。
「まあ、その呪いの生け贄になる人は強力な魔力が必要ですけれど」
と、フルーが言う。
「……悪質な呪いだな」
呪いの魔女王がかける呪いも悪質だと思っていたが、それと同等ぐらいに悪質な呪いである。まあ、悪質じゃない呪いというのが存在するのかどうかまでは知らないが……。
「ところで……ローイは、どうした?」
「それが、家出しました」
ラフェレアさんの質問に俺はため息混じりに言う。
あいつも根からの悪人ではない……のかは、知らないが迷惑なやつなのが現実だった。
「……どうやら、迷惑をかけている様子ですね」
「まあ、今に始まった事ではありませんし……。
と、言うかそう思うなら、引き取ってください」
ラフェレアさんの言葉に俺は謙遜も躊躇も社交儀礼もなくきっぱりと言う。
「そうは言わないでください。これも、一つの仕事だと思って」
「なら、あいつの食費や生活費ぐらいは出してくださいよ」
「成功報酬で、そのうち払います」
信用出来ねえな。と、思う。
偉い人が言う『そのうち』とか、『善処します』『努力しています』『ただいま、会議中です』と、言った言葉は信用出来ない。
と、言うのが現代日本人の常識だ。
疑いの眼差しに、
「そんなに信用出来ないか?」
「日本人は、偉い人のそのうちは信用しない主義なんです」
と、きっぱりと言う。
「こちらの世界ではどうだか知りませんが……。
俺たちの世界では偉い人と言うのは責任逃れと言うのがあるんです。得に、偉い地位と言うのは一定の年数しかつけない。と、言う決まりがある立場が多いんです。
そのために、自分がいる間に問題がなければそれで良いや。と、言う発想でいる人たちの方が圧倒的に多いんです」
と、俺は言う。
政治家だって、偉い地位に就こうとするときは耳障りの良い事を言う。
けれど、それを全て実現した人間なんて居ない。大抵は、退任間際にどうのこうのと言う問題が浮き彫りになる。
その結果として、別の人になるというわけである。
「そんな事はしません。
ただ、彼の性格上、お金が出されている。
と、なると増長するという可能性が高いのです。
なので、後で報酬を払う事も知られると同じ結果を生み出しかねません。
その事から、契約書を交わすことも出来ませんが私が私の誇りにもってお支払いします」
と、断言する。
まあ、これ以上は文句を言っても無理そうだ。
「わかりました。とにかく、問題はドラゴンの方です」
「はい。それで今は調べているんですが」
と、言っている中で、
「た、大変です。ラフェレア様」
と、走ってきたのは一人の魔法使いだ。
かなり特徴的な眼鏡をかけており、左右それぞれに三つずつのレンズが着いており、グルグルと回っている。
……どう言う意味のある眼鏡なんだろう?
「どうしましたか?」
「はい。ドラゴンから放たれている魔力から生け贄となっている存在を調べたところ……。その人物は、ローイ様と言う事が解りました」
…………。
しばらくの沈黙が周囲を支配したが、それはすぐに変化された。
『『『はぁ?』』』
わずか半日ばかり、目を放していた間にどう言う状況になって居るんだ? あいつは?
と、俺は頭痛を覚えた。
あいつは、とことん騒動を引き起こしてしまうらしい。




