モンスターバスターは悪役令嬢になれるか? その1
こちらのサイトで「(乙女ゲームの)悪役令嬢シリーズ」が流行っているようなので、モンスターバスターのキャラクターでやるとどうなるかを実験してみました。
※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件・本編の「ゴメラVS モンスターバスター」とは一切無関係です。
似たような登場人物やどこかで見たような設定がいろいろ出てくるかもしれませんが、多分、気のせいです。
物語の舞台は「中世ファンタジー風の世界」ですので、ご了承ください。仮に設定や世界観が破たんしていても、「ヒロイックファジー(※1)だから仕方ないよ。」くらいの暖かい視線で見守っていただけるとありがたいです。
(※1 いい加減な設定のファンタジーのことをヒロイックファジーと言ったとか、言わないとか…。ちなみに「ファジー」はいい加減、あいまいという英語だそうで…)
その日、私、セリア・ストーンリバーは、学校の授業を終えると自室に戻って休憩していた。
ここは魔法使いや魔法剣士を輩出する「ライトウィンド魔法学校」の寄宿舎である。
曲がりなりにも公爵家の令嬢である私は個室を使わせてもらえることは有難いことだ。
魔法や剣の実技はそれなりに得意であるが、魔法理論やマナーなどの「めんどくさい知識」系の授業はあまり得意でない私は帰ってから「飽きるまで」一生懸命テキストに目を通すことにしている。
自分が元来「ズボラで気分屋、好きな事には夢中になるが、嫌いなことは一切手をつけない」性格であることがわかっているからこそ、あえて「嫌なことを習慣」にしてみたのだ。
前回は三日であっさり挫折してしまったが、今回は今日が三日目だ。前回よりは苦痛も少ないので、今度は一週間は続くかな…と机に向かおうとした時、それが起こった。
何もしないのに、机の引き出しががばっと空いたかと思うと、中から虎縞のワンピースを着た、猫耳娘がひょっこりと顔を出したのだ。
見た目一四歳くらいに見えるが、猫耳だけに実際に一四歳かどうかはわからない。小柄な金髪で、目はくりくりとした青い目をしており、実に愛嬌のある顔立ちをしている。
猫耳娘はしばし、きょろきょろしていたが、私を見つけると可愛らしい顔をさらににっこりさせて口を開いた。
「セリアさま、初めましてにゃ♪私はトラミと申します。」
明らかにこちらを見知っている上に好意的な雰囲気でトラミは話しかけてきた。
私はそれなりに人の顔と名前を覚えるのが得意な方であり、これほどまでに印象的な相手なら忘れたりはしないはずだ。もっとも、このトラミが小さいころだったり、あるいは向こうが一方的に知っている場合はもちろんその限りではない。
本来なら「警備が厳重で、魔法的な防御態勢もしっかりしている」この学校の寄宿舎の私の部屋に潜んでいた?この猫耳娘はスゴク危険な存在であってもおかしくないのだが、なぜか私の「正義の…もとい、危険センサー」にはまったく反応していない。
「トラミちゃん、聞いていい?どうやって『魔法的にも物理的にも完全防御』されているこの寄宿舎の私の部屋に入ってきたのかな?」
にっこり笑って、トラミちゃんに訊いてみる。
トラミちゃんはニコニコしながら「それは…」と言いかけて、ハタと動きが止まる。
私の言ったセリフが「頭の中でしっかり認識」されたようだ。
「え…えーとですにゃ…私はあにゃたを破滅の運命から救いにきたのですにゃ!」
しどろもどろになりながら、トラミちゃんは一生懸命言葉を紡いだ。
「へえ、どうして、トラミちゃんは私を救ってくれようとしているのかな?見返りは?」
にっこり笑って、トラミちゃんをじっと見つめる。睨みつけるのではなく、ただ、優しく見つめてニコニコしておく。
「そ、それはですにゃ…タイム…もとい、……実は私は悪魔ですにゃ…悪魔だから、この部屋にも入ってこれたわけですし、……えーと……魂と交換で契約で救うつもり…なのですにゃ…。」
明らかに目を泳がせながらトラミちゃんは何とか答えた。
身にまとった雰囲気、表情、オーラから推察するに絶対悪魔ではあり得ない。むしろオーラなどは妖精か、天使と言っても通じるくらいのきれいさがある。
「あらー、ごめんなさい。私、自分の魂をとっても大切にしてますから、その取引には応じることが出来ないんです。」
涼しい顔で宣言するとトラミちゃんは思い切り慌てだした。
「……そ、そうだ!!今はキャンペーン期間中ですので、特別に魂と交換でなくても、お助けさせていただきますにゃ!!」
「わかったわ。どうな風に助けてくれるのか、聞かせてくれるかしら。」
にっこり笑うと、トラミちゃんはほっとした顔で笑った。
「お任せくださいにゃ。みら…げふんげふん、天才悪魔のトラミちゃんがきっちりお助けいたしますにゃ。実はこんな恐ろしい未来がセリアさんを待ち受けようとしてるにゃ。そして、それを避ける策を一緒に考えるにゃ。」
トラミちゃんはワンピースに付いていたポケットから大きな本を取り出した。
「こんな風な未来が襲う可能性があるにゃ…」
トラミちゃんがページをめくると、私を非常にリアルに描いた絵と、その説明が書いているようだった。…しかし、ものすごく精密な絵だわね。こんなの描くの大変じゃないかしら…。
「セリアちゃんはこちらの王子様と婚約されてるのにゃよね?ところが、ある女の子をいじめたことによって、その王子さまから婚約を破棄されてしまうのにゃ!!」
な、なんですってーーーー!!!
「……というわけなのよ。」
喫茶室に「腐れ縁の友人」コーイチを呼んでいろいろ話を聞いてもらいました。
コーイチは貧乏男爵の三男…という建前になっているけど、実はこの国の第1王子で皇太子のミツール王子の弟の第三王子で、幼馴染なの。裏の稼…げほんげほん、所属サークルが一緒のこともあり、また、魔術理論の天才でもあるので、一番の相談相手の一人だ。
「つまり、セリアはんが、この身分を隠した『チハーヤ』姫をいじめたことが発覚して、兄…ミツール王子が激怒して、婚約を破棄。そしてセリアはんを国外追放すると。そして、同じように国外追放された貧乏貴族の三男と結婚して不幸な人生を送る羽目になりそうだというわけやね…。ちなみに選択を間違えると怒り狂ったミツール王子が激怒して、セリアはんを切り捨てる…いや、これいろんな意味でオカシイで。」
まだ、実際には会ったことのないチハーヤ姫に関しては何とも言いようがないけれど、その他の人物は私の周りの人物像と一致しているのだ。
「兄いがセリアはんを斬り捨てるなんて、『物理的に無理』やで。絶対にかすりもへんから。逆にセリアはんが兄いを『瞬殺』するのなら楽勝なんやけんどね。
それと、セリアはんが自分より年下の女の子をいじめるとか想像もつかへんわ。むしろべったべたにかわいがりそうなんやけんど…。」
私はそんなに人当たりがいい方でもないし、空気もイマイチ読めないし、ウルトラマイペースではあるが、人をいじめるような経験はあまりしたことがないのだ。
婚約者のミツール王子に対する嫉妬に狂って…ミツール王子はものすごくいい人だし、客観的にみれば超美形なんだけど……恋愛感情があるかどうかと言われると…だし…。
あと、確かにミツール王子は「王族としては腕は立つ方」だけど、攻撃は目をつぶっても躱せるし、いざとなったら、『瞬殺』できるでしょうし。
そう、あの本は微妙なところが一致しつつも、なんだか肝心な部分が変な気がするのだ。そして、どう見てもトラミちゃんは嘘をついている感じがしないのだ。
私の正義の直…もとい、乙女の勘が囁くのだ。
「あら、お二人ともいつも仲がよろしいのね♪」
一瞬ぎょっとしたが、声の主に気づいて、ほっとした。一応婚約者がいる立場の私が他の男性と二人きりというのはあまりよろしくないのだ。実際は兄弟とは言え、「関係ないことになっている」コーイチと一緒というのは非常にヤバイのだ。今回のように相手が全ての事情を知っているアルテア先生でなければ。
「さて、お二人とも『任務』の話になるけど、よろしいかしら?」
アルテアさんの声が真剣になったので、私たちもうなずいて先を促した。
「はーい、今日は転入生を紹介します♪」
教室にアルテア先生が入ってくると、ニコニコしながら口を開いた。
アルテア先生の後ろから黒髪の可愛らしい女の子がもじもじしながら教室に入ってきた。
「少し離れた地方から留学してきた「チハーヤ・カンナギ」さんです。遠い地方なので、皆さん聞かれたことがないかもしれないですが、カンナギ伯爵家の一人娘さんです。あまり失礼のないようにしてあげてくださいね。では、そこの空いてる席へついて下さいね。
それと、ちょうどセリアさんの隣なので、セリアさんにいろいろ教えてもらってくださいね♪」
アルテア先生の言葉に教室がざわめいた。イマイチおしとかやではないとはいえ、一応公爵家の令嬢…の私が面倒を見るというのは校内的には少し異例だ。伯爵家でも…は!!
身分を隠した『チハーヤ姫』て、絶対この子じゃん!!確かに例の絵の通りにめちゃめちゃかわいい子だ。いやこのふわふわした雰囲気はあの絵よりも断然かわいい!!ほっぺとかふにふにさせてもらって大丈夫かしら…いかん、変な妄想に!!
チハーヤ姫は私を見ると一瞬はっと表情が変わったが、その後にっこりと天使の微笑みで私を見た。そして、天使のような素敵な声で囁いてくれた。
「セリアさま、よろしくお願いします。」
そして、授業が終わり、私とチハーヤさんは『偶然』寄宿舎で隣の部屋になったということがわかり、一緒に寄宿舎に向かっていた。『隣の部屋』に仕組んだ奴は誰だ!!絶対学校ぐるみなのは間違いない。
おしゃべりしながら、私の部屋の前に着くと、チハーヤちゃんがもじもじしながら話しかけてきた。
「あの、お部屋を見せていただいてよろしいでしょうか?」
きらきらする瞳でそんなことを言われると、ついつい無条件に「喜んで♪」と口の先まで出かかったが、『やつ』が部屋にいることを思いだし、はたと止まった。
「ごめんなさい、ちょっとお部屋を片付けるから待ってもらえる?」
なんとか笑顔でごまかすと素早く扉を開けて中を見回す。
幸い?トラミちゃんは部屋にいないようだが…部屋に鍵をかけているのにどこへいっているのだ?自称悪魔だからいろいろできるのかもしれないが…。
とりあえず、安心してチハーヤちゃんを部屋に招き入れた。
「さ、どうぞこちらへ♪」
にっこりして部屋の中を見ると…トラミちゃんがちょうど机の引き出しを開けて、こちらへ来ようとしているではないか!!
てめえ!!なんつー最悪のタイミングで出てきやがる!!
「あ、あのね…」
必死で顔を作って、言い訳を考えるために頭を最大限回転させながらチハーヤちゃんの方を向くと、チハーヤちゃんの後ろから黒い影が飛び出してきて、ナイフのようなものを数本、トラミちゃんに向かって投げつけた。
「曲者!!!」
そいつは東洋の彼方の諜報員 兼 戦士、忍者だった。
いやいや、曲者はあんたの方だよね?!
<続く>




