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33 山が動いた? その2

 「では、今日は作戦会議第二部を始めまーす♪」

 石川邸にて、アルテア、瀬利亜を議長に、光一、千早、バネッサ、遥で会議が始まった。


 「清正君は参加してもらわなくていいんですか?」

 「敵を欺くにはまず味方から♪キヨマーは正直すぎていろいろ顔に出ちゃうので」

 遥の問いに瀬利亜が澄まして答える。


 「麗華さんに関して新たな事実が発覚しましたので、その発表をします。アルさん、お願いします。」


 瀬利亜に言われて、アルテアが水晶球を取り出し、空中に立体映像が現れた。

 「先日麗華さんのお父さんと瀬利亜ちゃんが遭遇した話はしましたが、詳細がわかりましたので、音付き立体映像でお見せしますね。」


 『 名家に生まれた大河内麗華は小さいころに母は病気で亡くなり、父と、家政婦さん達に育てられた。


 麗華は見えないものが見えたり、念動力などを操ることが出来た。

 父は自分に理解できない「超能力や霊的なもの」を忌み嫌っていた。

 だから、「あの日」までは父親にも友人達にも「能力のこと」はひた隠しにしていた。


 その日、お嬢様学校に通う級友と父親と三人でドライブに出かけた。

 高原で三人で休憩しているとき、巨大な蜘蛛のモンスターが襲い掛かってきた。

 麗華はとっさに力を使い、巨大蜘蛛を粉々に粉砕した。

 誰にも危害が及ばずに安心した麗華はしかし、とんでもないものを見聞きした。

 震え上がる二人は麗華を見て叫んだのだ。

 「「化け物!!」」と。

 麗華は逃げた。走って逃げた。 


 その後、家出した麗華を探しに来ていた父と瀬利亜が遭遇し、父から事情をきいたのであった。』


 「前回まではこんな感じだと推測されてました。ところが、とんでもない事実が発覚したのです!」

 アルテアが力を入れて話し出した。


 「お父様とお友達にインタビューすることに成功しました!」


 再び立体画像が空中に浮かびあがった。

 「…これ、録画されるんですか?」

 顔にモザイクが入り、音声の変わったであろう映像に年配の男性と、お嬢様学校の制服を着た女生徒が映し出された。


「…麗華――!帰ってきてくれーー!!」

 「麗華お姉さま!!帰ってきてください!!!」

 「すみません、この映像をすぐに麗華ちゃんに見ていただくわけではないので、今それをおっしゃっていただいても困ります。あ、もちろん、麗華ちゃんはお元気ですよ♪」


 「すまん、麗華、実はお前が超能力を使えることは『お前が小さいころから知っていたん』んだ!!ただ、あんまり一生懸命隠そうとするから、追求すると悪いかと思って、〇〇(音声チェックが入った)ちゃんと共謀して隠しておいたんだ!」


 「ごめんなさい、お姉さま!小さいことからずっと『お慕いしていた』お姉さまを結果的に傷つける発言をして、本当に、ごめんなさい!!

 私たちの前に出て、巨大蜘蛛を『カッコいい超能力』で粉砕して下さったお姉さまの後ろに『保護色で見えにくかった超巨大蜘蛛』がいたんです!それで思わず二人とも『化け物!!』と叫んでしまったのです。

 まさか、『私たちがお姉さまを化け物扱いした』とお姉さまが勘違いされるとは思わなかったんです!!」


 「麗華が走り去った後、お前が出した「カッコいい超能力」で致命傷を負っていた超巨大蜘蛛は時間差で倒れて、我々は命を救われたんだ!頼むから帰ってきてくれ!!」

 「愛するお姉さま!!戻ってきてください!そして、ぜひ結婚してください!!」


 映像はそこで切れた。


 「……あの、モザイクと音声が入っていたのは…」

 「うん、お二人が『ちょっとだけ変わっている』かな、と思ったもので。」

 遥が半ば呆然としながら聞くと、瀬利亜が涼しい顔で答えた。


 「でも、事実が分かったなら、すぐに麗華ちゃんにしらせないと!」

 バネッサが立ち上がって力説する。


 「それは私たちも考えたんだけど、現在麗華ちゃんは記憶をなくしているからね。遠からず記憶が戻ったらすぐに教えてあげようと思うの。『ちょっとだけ』変わっているとはいえ、大切な家族と友達だからね。」

 ((確かに『ちょっとだけ』変わっている大切な友達達はここにいてくれるね))

 瀬利亜やアルテア、光一を見ながらバネッサと遙は思った。



「…はーー…」

 部屋に戻ってから麗華は今日何十度目かのため息をついた。

 (連中はどうして、私にこんなに親切なんだろう…。黄金マント様も他の仲間もすごく親切なので、私には心が痛いんだが…)


 なかなか寝付けないこともあり、麗華は外へ出てぼんやりと月を眺めていた。


 「あら、そろそろ計画実行も近いことだし、しっかり寝ておかないとダメじゃない?」

 後ろから女性の声が聞こえるので、振り返ると、仮面を被った巫女姿の女性が基地の入口から出て来たのが麗華の目に入った。


 「…あなたとは出逢うのは初めてですね。」

 「…ふふ、そうね。忍者軍団が抜けてから、ここの人数も大きく減ったからね。最後の作戦用に私が基地に入ったのよ。」

 仮面をつけているので、表情はわからなかったが、声色はとても優しい感じがした。


 「でも、お姉さんはとても戦闘に向いている感じがしないんだけど。」

 「確かにあまり向いてはいないわね。それから、お姉さんと言ってもらえてうれしいな。あなたに近いくらい大きい娘がいるんだけどね。」

 「え?!お姉さんおいくつなんですか??」

 「あら、レディに年を聞くのは禁句ですよ♪」

 巫女風の女性はさも嬉しそうにくすくす笑う。


 「さて、夜更かしはお肌に毒ですよ。ベッドにお入りなさい。横になって目を閉じているだけで熟睡の八割は疲れが取れるのだそうよ♪」

 まるで、少女のように笑いながら巫女は麗華を寝室へ誘った。


 「お姉さん、私は麗華です。あなたのことはなんてお呼びしたらいいですか?」

 「『千里眼の巫女』…じゃあ、呼びにくいわね…『みっちゃん』でお願いね。」  




 (結局眠れなかった…。)

 麗華は目の下にクマを作りながら登校する羽目になった。

 (あの、「みっちゃん」のことも気になって、さらに目が冴えちゃったし…)


 「おはよう、麗ちゃん!どうしたの?なんだか疲れてそうよ?」

 「…いえいえなんでも……あなたこそ、何目の下にクマ作ってんの!」

 麗華に突っこまれながらも瀬利亜は涼しい顔をしたままだ。


 「ちょっと、夜遅くまで『作戦会議』をやってたもんで♪」

 「なに、バラしてるわけ?!そんなんで大丈夫なの?!」

 さらなるツッコミに瀬利亜はふっと笑った。


 「大丈夫、そっちの会議じゃないから。せっかく文化祭で告白したのに、あの二人、全然進展しないから、どうやったらいいか、夜通し話し合ったの♪」

 告白以前と変わらない雰囲気で話している清正とバネッサをそれとなく見ながら瀬利亜が澄ましている。

 「自慢げに言うことなの?!それから、本人たちの問題に他人が深入りしてもしょうがないじゃないの?」

 「ええ?!『野次馬的に』気になるじゃない♪

 でねえ、麗ちゃんにはなにか素敵なアイディアとかないかしら?」

 「他人を巻き込むな!!」


 「あらあ、いつも仲良さそうでいいわね♪」

 アルテアが少し早目の時間にニコニコしながら入ってきた。


 「…アルさん、一緒に会議してたのに、血色が全然いいよね。どうやったらそんな芸当ができるの?」

 「瀬利亜ちゃんとの会議に参加していたのは、『本物そっくり人形』の方でした♪本人は一〇時にはしっかりベッドに入ってました。」

 「うわ、道理でいつもと雰囲気が違うと思ったら!」

 「ちなみにお人形さんは今頃ベッドで熟睡中です♪」


  (…この二人の会話はどこからどこまで突っ込んだらいいんだろう…)

  麗華がアルテアと瀬利亜を呆然と見ていると、自分の席から千早が近づいてきた。


 「あれ、瀬利亜さんと麗華さん、寝不足なんですか?」

 「うん、麗華ちゃんは恋の悩みにはまっているようだし」

 「はまってないから!!」

 「私はアルさんと一晩中秘密会議をしていたはずなのに、いつの間にかアルさんだけ、人形を代役にして、一人で抜け駆けして眠ってしまったの。酷いと思わない?」

 「うーん…今度私も秘密会議に参加させてください♪」

 ニコニコしながらすり寄ってくる千早をなでなでしながら、瀬利亜は嬉しそうに口を開いた。

 「ちーちゃん、わかったわ。『バネちゃんとキヨマーの仲を進展させる秘密記会議』を近々開催するから、ぜひ、参加してね♪」

 「わーい、なんだか素敵な会議ですね♪」


 「……あのう、瀬利亜さん、私にきっちり聞こえるようにおっしゃるのはどういう意図なんでしょうか?」

 離れた席からバネッサが肩をすくめながら言う。


 「『秘密会議』を開催されたくなかったら、自力で仲を進展させることね!!」

 「いやいや、言ってることがおかしくない??」


 「なになに?なんか面白そうな話をされてるようやけど、わても混ぜてもらえる?」

 教室に入ってきた光一がさりげに会話に加わろうとする。


 「錦織せんせー、残念でーす。これは『乙女の秘密』なので、男性には教えることができません。」

 「担任の権限でもだめでっか?」

 「『秘密会議』に参加してくれたら、教えてあげます。」

 「秘密会議って魅惑的な響きやね♪ぜひぜひ参加お願いしまっせ。」



 「題名の山も動かず、キヨマーとバネちゃんの仲もなかなか動かないようです」

 (BY瀬利亜)


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