34 T計画始動!! その1
「大事な計画の前なのに、なんかすることがないんですね。」
満月を見ながら麗華が言った。
ここ一週間ずっと二人で月を見ながらの話が続いていた。
「そうね。ドクターに『起動してもらった後』、肝心な部分は三人いれば大丈夫だからね。」
『みっちゃん』は相変わらず仮面を被ったまま笑う。
「それからマント四天王も私しか残っていないんですが、どうしちゃったんでしょう。」
「私も細かいことはわからないわね。明日になれば、全貌も見えてくると思うわよ♪」
「黄金マント様も首領もそう言ってはぐらかしてばかりじゃないですか!」
「ごめんなさいね。私もわからないことが多すぎて、何とも言えないのよ…」
本当にすまなそうに謝るみっちゃんに麗華は肩をすくめた。
「さあ、明日は『今まで一番長い日』になるかもしれないから、そろそろおやすみなさい。夜更かしするとお肌に悪いわよ。」
「…あの、みっちゃん…」
「なに?」
「仮面を取ってもらっていいですか?」
みっちゃんは少し考えた後、仮面を外して微笑んだ。
真っ白い肌の面長の柔和な美人で、二〇代後半くらいに見えた。
「あらあら、そんなに見つめられると少し恥ずかしいな。」
(お母さんが生きていたら、こんな感じなんだろうか…お母さん?どうしてそんなことを思うんだろう…。)
麗華とみっちゃんはもうしばらく無言で月夜の中を過ごした。
「それでは、行ってまいります。」
麗華が基地から出ていくと、がらーんとした基地の中で
「首領」「黄金マント」「みっちゃん」「ドクター&助手ロボ」が残って最後の打ち合わせを始めた。
「ドクターは『例のもの』を遠隔操作してくれ。あとは打ち合わせ通りに」
黄金マントの言葉に残りの三人はうなずいた。
「麗ちゃんおはよう♪」
教室に入るとニコニコ顔の瀬利亜が出迎えた。
「…なんで、そこで待っているわけ」
「正義の直観で来るのがわかったから♪」
「あなた、なんにでも『正義の直観』て付けてるでしょう?!」
「ふ、当然だわ♪」
「……」
「麗華さん、おはようございます♪」
瀬利亜と麗華がじゃれ合っているのを見つけて、千早が嬉しそうに寄ってくる。
「…おはようございます…」
千早を見てあいさつしながら、麗華は違和感を覚えた。
(…すごい既視感が…、いえ、千早さんはいつも見ているのだけれど、誰かに似ているような…。)
「???麗華さん、どうかなさったんですか?」
いつもと違い、戸惑っている麗華に千早、そして瀬利亜も不思議そうな顔をする。
「なんでもない、なんでもないから!」
なんとかごまかしながら麗華は自分の席にたどり着いた。
「残念ながら今日は『美少女転校生』はおらへんけど、楽しく授業を受けまひょうで♪」
ニコニコしながら、光一とアルテアが教室に入ってきた。
「今日は珍しく、出席を取るで♪来てない人!………うん、返事なしやから、休みなしやね♪」
教室がどっと受けた。
「それでは、そろそろみなはん進路のこともきちんと考え出した方が…。」
ウーウーーーウーーー!!
光一が話を始めた時に急にサイレンが鳴り始めた。
『緊急警報です!!新宿御苑の地下から『大怪獣ゴメラ』が出現しました!!
繰り返します!新宿御苑の地下から『大怪獣ゴメラ』が出現しました!!
生徒、教員の皆様は安全のため、教室に待機してください!!」
以前もゴメラが出現した時には同じことが起こったので、教室は大きくざわめいた。
「みんな、静かにしてや!この学校は『安全対策』がしっかりしてるけん、ゴメラが来ても退治…もとい、みんなを守り切れるけんね!」
生徒達のざわめきが静まった時、瀬利亜がすっと右手を挙げた。
「錦織先生!頭痛と神経痛と生理痛がするんですが、保健室に行ってもいいですか?」
(((この人退治しに行く気満々だ!!!)))
クラスの半分くらいが、同時に瀬利亜の意図に気づいた。
「そうか、頭痛ならしゃあないなあ。気をつけて行ってらっしゃい。」
「ラジャー!」
瀬利亜は返事を聞く間も惜しむように風のように教室から出て行った。
「はい!私も頭痛がします!!」「私も!」「私も♪」「俺も!」
「はいはい、どうぞキヨマー以外の皆様行ってらっしゃい。」
千早、バネッサ、遥、清正が手を上げるのを見て、光一は鷹揚に手を振った。
「俺だけ、だめなんですか?!」
「はい、ダメです。」
清正が食い下がるも、光一は取りつく島もない。
「では、私がみなさんを送ってきますね♪」
最後にアルテアがみんなの後に着いていく。
「アルテアせんせ、たのんまっせ。」
光一の声にアルテアは嬉しそうに手を振った。
校門の外に出ると、巧の乗るリムジンが既に待機していた。
「巧さん、さすがですね。」
一行が素早くリムジンに乗り込むと、巧は新宿方向に車をスタートさせた。
「あら、早くも地球防衛軍のスーパーファルコンが現場に到着しそうだわ」
水晶球を操りながらアルテアが言った。
「それじゃあ、私たちが着く前にゴメラは倒されちゃうかもしれませんね。」
遥がちょっとだけ残念そうに言う。
「…相手が普通のゴメラなら、簡単に倒せるだろうけどね…」
瀬利亜が難しい顔をしている。
「どういうことなの?」
「ゴメラは基本『海棲怪獣』だから、普通は今回みたいに『地中から現れる』ことはないの。陸に上がったゴメラが逃げるために地面を掘る可能性はないわけではないけどね。」
「それじゃあ」
遥の再度の問いに瀬利亜が思案しながら答える
「スーパーモンスターズの連中が何らかの手段で、ゴメラを新宿御苑の地下に移動させたか、あるいは…」
瀬利亜が言葉を選びながらゆっくり話し出した。
(ゴメラが珍しいところかが出てきたが、今の俺の敵ではないぞ!)
スーパーファルコンに乗り、現場に到着した北壁誠也ことザップマンがひとりごちた。
「今回はとっとと変身だ!」
謎の変身ポーズ(笑)を取ると、誠也はスーパーファルコンと共にに金色の光に包まれた。光の消えた後、青と銀色を基調にしたスーツを着ているようなシルエットの巨大ヒーロー・ザップマンが現れた。
身長五七メートル、体重は五五〇〇トンのゴメラとほぼ同サイズである。
(こいつはどうやら、普通のゴメラみたいだな。覚悟!)
ザップマンは素早くゴメラの間合いに踏み込むと、右回し蹴りを浴びせようとした。
それに対し、ゴメラはふわっと、宙に舞いあがり、ザップマンの攻撃をかわした。
そして、体を右にひねって、尻尾を横殴りに叩きつけザップマンを吹っ飛ばした。
(ぐぬー!これは怪獣の動きではない、格闘家の動きだ!!)
ザップマンがなんとか立ち上がって、ファイティングポーズを取ると、なんと、ゴメラも同じくファイティングポーズを取った。
「はっはっはっは!ザップマン、びっくりしたようだな!」
ゴメラからスピーカーを通したような男性の声が聞こえてきた。
「これは、だだのゴメラではない、わしの作った力作『メカゴメラ』だ!」
男の声と同時にゴメラが金色に発光し、表面の皮が燃えていった。
皮が崩れ去ると同時に銀色のメタリックなゴメラ状のロボットは姿を現した。
「リニア新幹線より早く!力はキングヒドラよりも強く!スカイツリーもひとっ跳び!!あれはなんだ!ゴメラだ!キングヒドラだ!いや、メカゴメラだ!!科学の正義と真実を守るため、日夜闘い続けているのです!!
そしわしはドクターフランケン!!わしを追放した学会に目にもの見せてやるんだ!!」
ドクターフランケンの声を聞きながら、ザップマンは超強敵を前にして、呆然と立ちすくんでいた。




