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28 招かれざる来訪者 その1

今回登場人物が多いので、整理のために簡単な紹介を


◎石川 瀬利亜 「無敵の男前スーパーヒロイン」「風流院高校雪組」

◎久能 巧    石川家の「King of 執事」

◎綾ノ小路 遙 「なぜか被害者になるお嬢様」

◎神那岐 千早 「萌え剣士」「風流院高校雪組」

◎バネッサ・日下部・オブライエン 「勇者(笑)」

◎リディア アルテア サティスフィールド 「14代目大魔女 超美魔女」

◎安倍 清正  「魔王の息子」「風流院高校雪組」

◎錦織 光一 「電脳おたくヒーロー」「風流院高校・雪組の担任」

◎小早川 充 「天然イケメンヒーロー」「風流院高校・理事長」

◎羽生 麗華 「縦ロールのお嬢様」 「レディマント」

◎浅水 雫  「かわいい系吸血鬼」


 「ニューヨークへ行きたいかー!!」

 「おーー!!」

 瀬利亜が叫ぶと、クラスメートたちは一斉に応じた。


 「二日間の文化祭が終了したら、今回の売り上げで、『ステーキハウス・ニューヨーク』で打ち上げを行います!!皆さん、頑張って売り上げを上げましょう!!」

 「「「おおおーーーー!!!!」」」


 風流院高校の文化祭は2日間に渡って行われるのだが、規模の大きさと言い、多彩さと言い高校の文化祭のレベルを大きく上回っているため、他の学校や一般の人達も多く訪れるのだ。

 校庭にテントを張って作り上げた『各国民族衣装・飲茶』はオープンと同時にあっという間に満席になり、その後ろにも何十人もの行列ができた。

 そして、スマホでの情報拡散により、行列はどんどん長くなっていった。


 ピンクの「破裂しそうな」チャイナドレスのアルテア。

 やや大人し目になったものの、インド風のへそ出し衣装の瀬利亜。

 ベトナム風のアオザイを着て、スレンダーさの際立つバネッサ。

 和服を着こなし、日本人形のような清楚な感じの千早。

 「オランダ風のお嬢様」遥

 スペインのフラメンコ風の麗華。

 アイヌのコロボックル風でちまちまかわいい浅水雫

 そして、ドイツの民族衣装と、スイスの民族衣装を着た女生徒たちの写真があっという間にLINEやSNSを通じて、広まっていったのだ。



 「人数が多すぎて、ぜんぜん回らへん!!」

 基本、手際がいい光一が殺到する注文に悲鳴を上げだした。

 「明日の分の食材も今日使っちゃいましょう。そして、なくなったら、残念ながらドリンクだけにしましょう。あ、明日の分の素材はさっき発注したから大丈夫」

 そして、瀬利亜はインドの踊子衣装の上からエプロンを羽織った。

 「光ちゃん、選手交代で。『モード変更』して、全力でかかるから!サポートをお願いします!!」

 (!!瀬利亜はんが、シードラゴンモードに変わってはる!!!)

 瀬利亜の全身からスーパーヒロインオーラが全開になっていた。味付けは神業レベルとはいかないまでも、動きの素早さや手際の良さは「人間の領域」を越えつつあった。

 大量のお客様を捌くための「シードラゴンモード」がさらにお客様を引き寄せることになったのはある意味皮肉であった。


 「残念ながらお料理が品切れになりましたので、あとはお飲物だけになります♪」

 14時を回って、アルテアがにっこりしながら告げても、「ウェイトレス目当て」で、客足は一向に衰えなかった。


 「遥さん、麗華さん、そろそろ交代でお休みに入られたら?」

 「…ちょっと疲れてますけど、まだ、大丈夫です。もうすぐ待ち人も来てくれますし。」

 「……わ…私も全然大丈夫だから、は、ははは…」

 「はい、では麗華さんは休憩にはいってください♪いざとなったら瀬利亜ちゃんが復活してくれますから♪」

 アルテアが麗華を休憩室に手招きする。

 「いえいえ、瀬利亜さんは人間離れした動きを続けられて、錦織先生ともども完全にノックアウトされてるじゃないですか。私はもう少し頑張れますから、休ませてあげてください。」

 「まあ、麗華さん、優しいのね。シードラゴンモードは消耗が激しいから、長時間継続した場合は 終了後しばらく『行動不能になって回復』させる必要がでてくるの。

 前回「48時間連続戦闘」したときは『48時間起きてこなかった』わね。でも、『緊急事態』になったら、『熱く燃える正義の心』が復活して瀬利亜ちゃんまた活動が再開できるのよね。必ず  『シードラゴンモード』になるという欠点があるけど♪」

 「「それで接客させちゃ、ダメでしょ!!」」

 「そうかあ…それじゃあ他の娘にお願いしましょう♪麗華さんは高梨さんに変わってもらって、休憩に入ってね♪」


 麗華がしぶしぶ休憩に入った後、遥は行列の中に「待ち人」が来ているのを見つけて微笑んだ。

 「遥、よく似合ってるじゃないか。」

 遥の父、綾小路健吾が嬉しそうに席に着いた。

 「お父様、お忙しい中をありがとうございます。ご注文は何になさいますか?」

 「せっかくだからジャスミン茶とお菓子をいただこうか。」

 親子がしばらく談笑する中、五〇代の温厚な紳士である遥の父、綾小路健吾に気づいたアルテアがテーブルに近づいてきた。

 「お久しぶりです、綾小路大使。いつも遥さんにはお世話になっております。」

 「いえ、こちらこそ、娘がお世話になってます。」

 にっこりほほ笑むチャイナドレスの美女に健吾は戸惑いながら「お久しぶり」という言葉に一生懸命記憶の糸を手繰り寄せようとした。

 「お父さん、学級の副担任のアルテア先生なの。でも、どうして、アルテア先生は父が元大使だとご存じなんですか?」

 「五年前と一〇年前にイギリスで会談をしたの。一〇年前の時はまだ公使でいらしたわね。それと、七年前に極秘来日した際もいろいろお世話になったわね。その折は本当に良くしていただいて助かったのよ。」

 (五年前と一〇年前にイギリスでお会いして…そして七年前には極秘来日…。そんな状況でこれほどの美女に会っていれば覚えがないはずはないのだが…。)

 助けを求めるように健吾が遥をちらちら見るので、遥が何とかこっそり答えようとする。

 それを見て、アルテアは健吾が自分に気づいていないことを察した。

 「装いが今と違うからわかりにくかったのですね。アルテア・リディア・サティスフィールドです。これからもよろしくお願いします。」

 (アルテア・リディア……!!!!!!)

 理解した瞬間、健吾の顔が真っ青になった。

 (あの「大魔女」リディアさん?!もしかして、『護衛の人形に入って』来られている?)

 口をパクパクさせている健吾に後ろから「助けの声」が聞こえてきた。


 「おじ様、お久しぶりです♪」

 サリーを纏って、ニコニコ笑いながら現れた瀬利亜は目の下にクマを作っていた。

 明らかに回復途上だった。

 「おじ様に遥ちゃんのこととかでご相談したいことがあるので、ちょっとだけこちらにお越しいただけますか?」

 「…わ、わかりました。」

 『娘の命の恩人』の言葉に従い、連れだって会場を出て行った健吾は瀬利亜と共に五分後に戻ってきた。冷や汗をかきながらもニコニコしながら帰ってきた健吾を見て、遥は安どのため息をついた。


 「アルテア先生!娘をよろしくお願いします!!」

 ガチガチに緊張しながら深々と頭を下げる健吾にアルテアは花のような笑顔を向けていた。



 「ふっふっふ、ここが『あの』風流院高校か。」

 サングラスをかけた金髪のイケメンは校門の前でにやりと笑った。

 (彼らとの再会が楽しみだ。)

 歯をキラッと光らせながら男は校門をくぐった。


 「すみません、二年雪組はどちらでしょうか?」

 サングラスを半分ずらしながら女生徒に男はきれいな日本語で話しかけた。


 「え、えっと、アイキャント スピーク イングリッシュ…」

 美形な外人に話しかけられたことで、女生徒は頭の中が真っ白になっていた。

 「いえいえ、私には日本語で話をしていただいて大丈夫ですよ♪

 雪組担任の錦織先生に用事がありまして。」

 男は優しく微笑みながら歯をキラッと光らせた。


 「…あ、あの、雪組なら、錦織先生なら校庭の飲茶コーナーにおられるはずです。」

 「それはどうもありがとう。素敵な御嬢さん♪」

 天使のような微笑みを残し、男は歩きだした。

 女生徒は男の後ろ姿をしばらく見据えたままだった。



 「御嬢さん、錦織先生はおられませんか?」

 女生徒たちが呆然と男を見る中で、聞かれた本人の遥は冷静に男を見ていた。

 (この人…どこかで見たことがあるのよね…。)

 「申し訳ございません。ただ今席を外しておりまして。遠方からお越しでしたら、およびいたしましょうか?」

 「いえいえ、私がわがままで来ただけだからご心配なく。ここで待たせていただいてよろしいかな?」

 ファッションも含めてあざといくらいに『見せる所作』に長けた男に対して、遥は微妙なものを感じていた。

 (悪人オーラは感じないんだけど、なんだか変な人だわね。こっそり錦織先生に知らせた方がいいかもしれないわね。)


 「先生!錦織先生にお客様が逢いに来ておられます!」

 女生徒の一人がうっとりとした視線で戻ってきた光一に声を掛けた。

 「へー、わてにお客さんでっか?どなたでっしゃろ?アルテア先生も休憩に入っておられることやし、わてが相手せんとな。」


 男は光一を見ると嬉しそうに手を振った。

 「光一、久しぶり!また会えてうれしいよ♪」

 「…えーと、どなたでしたっけ?」

 光一が一生懸命思い出そうとしていると男が口を開いた。

 「ほら、二年前に会った、カイザスだよ♪」

 男がにっこり笑うと、光一の頭に「あの記憶」がよみがえった。


 「か、カイザスか?!なんで、日本に来とんねん?!」

 光一の顔が引きつり、二歩ほど後ろざっと下がった。

 「どうしたんだい、光一。せっかくの再会なのにつれないねえ。」

 カイザスは心底残念そうだ。


 (カイザス…て、!!!そうだ、少し前に立体映像で!!)

 遥が名前と画像のことをおもいだしたその時!

 「カイザス、お久しぶりね。来るなら言ってくれればいいのに…。」

 瀬利亜らしからぬ微妙な表情をして、光一の隣に歩み寄った。


 「瀬利亜ちゃん、久しぶりだね!二年前もかわいかったけれど、今は本当にきれいになったね♪お嫁さんにしたいくらいだよ♪」

 「それはどうも。ところで、どういったご用件で?」

 瀬利亜はあまり気乗りしない様子で話をしている。そして、光一は…瀬利亜を盾にするように瀬利亜の後ろに隠れている。

 (何??これは一体何が起こっているの????)

 光一と瀬利亜のあまりにも「らしからぬ行動」に遥はパニックになっていた。


 「…光ちゃん、気持ちはわからないでもないけど、『錦織先生』が生徒を盾にするのはやばくないですか?」

 瀬利亜の囁きに光一ははっと我に返った。一瞬深呼吸をして、何とか瀬利亜の隣に並んで立つことが出来た。

 「なあに、ただの観光旅行ですよ♪」

 にっこり笑う、カイザスに瀬利亜は眉をしかめてため息をついた。

 「お仕事がひと段落つかれた記念の観光旅行なわけですね。カイザス・ド・メロービング殿」

 「ええ、そんなところです。新しい『恋人探し』も兼ねて旅に出たところです♪」

 涼しい顔のカイザスのセリフに瀬利亜の顔が一瞬明らかに嫌そうな顔になった後、何とか普通の顔に戻した。そして光一は……瀬利亜の後ろにもう一度隠れそうになって、あわてて踏みとどまった。



 「どうしたんだ、瀬利亜、何があったんだ?」

 バネッサ、清正、麗華の三人が『飲茶』に入ってきたが、瀬利亜の異常な様子にバネッサが反応した。


 「こ、これは?!」

 三人の姿を見るなり、カイザスは驚愕に顔色を変えた。

 そして、懐から大輪の花束を取り出して、カイザスは三人の前にすっと歩み寄った。

 「あなたにひとめぼれしました!結婚してください!!」


 花束を渡された『清正』はもちろん、瀬利亜と光一以外の全員がその場に凍りついた。



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