24 昔々その昔
「恐ろしい、変身しなくてもあんなに強くなるとは、なんてとんでもないのかしら…」
瀬利亜が豹変するのを見て、ドクターフランケン達三人組は速攻逃げ出していた。
「今回の件でわかったが、服を変えるのは『防御力を少し上げる』ことと、『正体を隠す』からみたいだな。だから、奇襲をかけたらどうにかなるというものではないわけだ。」
ドクターが情報を分析しながらため息をついた。
「では、レディマント。引き続き、情報収集を頼む。」
「……わかったわ…。」
翌朝、レディマントこと羽生麗華は戦々恐々としながら、教室に入っていった。いくら校内とは言え、昨日の情景を見て、なにか仕掛けてくるかもしれないと思ったからだ。
だが、教室に麗華が入ってくるのを見ても瀬利亜たちは特に反応を示さなかった。特に瀬利亜は何かを考え込んでいるようだ。
バネッサは酷く落ち込んでいるようで、机に突っ伏している。そして、千早は…瀬利亜の背中に嬉しそうにべったりと貼りついていた。
「…明らかに昨日なにかあったわよね…」
席を立ちざま、遥が小声で清正に話しかけ、清正もうなずいた。
「おはようございます♪早起きしたので、早めに教室に来ちゃいました♪」
ホームルームには少し早い時間にニコニコしながら、アルテアが教室に入ってきた。
「あら、瀬利亜ちゃんと千早ちゃんはいつも通り仲がいいのね♪」
千早が瀬利亜にくっついているのを見やるとアルテアは嬉しそうに声をあげた。
((((いやいや!!ぜんぜんいつも通りじゃないでしょ!!))))
生徒達の大半が心の中でツッコミを入れた。
「本当に仲が良くって微笑ましいわよね♪前世が仲良し夫婦だったから、そうなっちゃうんでしょうね♪」
アルテアのセリフにクラスが一瞬しんとなり、そして、どっと沸いた。
そして、瀬利亜は椅子から落ちてひっくり返った。
「サティスフィールド先生!!」
瀬利亜ががばっと立ち上がると、つかつかと教壇に歩いて行った。
「先生、頭痛と生理痛と神経痛がすごいので、ちょっと保健室までつきあっていただけますか?」
瀬利亜がアルテアをひょいと持ち上げると、教室から出て行った。
「アルさん、なにをとんでもない情報をばらしてるわけ!」
瀬利亜はアルテアを空いている教室に連れ込んで、荒い息をついた。
「あら、ちゃんとそのことを『思いだした』のね♪」
アルテアは嬉しそうに笑っている。
ニコニコしているアルテアを見て、肩を落として瀬利亜は言った。
「アルさんがその気になればその人の前世とか透視できるのはいいんだけど、そういう話はおもてではしないでちょうだい。」
「了解しました♪」
アルテアは相変わらずニコニコしながらうなずいた。
「瀬利亜ちゃんならともかく、ちーちゃんには『二人が何度もラブラブ夫婦だった』ことはばらさないようがよさそうね。恋愛の方に影響が出そうだし。」
「…ちょっと待って!そんなこと簡単にわかるわけ?」
「『大魔女リディア』は代々『適切な知識を扱う』ことが本分だからね。『なんで、二人はこんなに仲がいいのかな?』とか思うと、ほぼ自動的に『答えになるビジョン』が見えて、瀬利亜ちゃんとちーちゃんは何度も夫婦をやってきたんだとわかるわけ。」
「…念のために聞くけど、その時の私の性別は毎回男だよね?」
「もちろん、そうです♪」
瀬利亜は大きくうなだれた。
「ちーちゃんや私は女性として生まれることが多いけど、瀬利亜ちゃんは半々ぐらいみたいだよ。そうそう、私とも何回か夫婦をやってます♪いつも優しくて男らしかったんだから♪きゃっ♡」
「…そこで赤くなられると、反応に困るんですけど…。」
「もちろん、今は恋愛対象外だから、安心してね♪
ちなみにちーちゃんや私と同性の時は仲のいい姉妹だったり、親友だったりするのね。
…そうそう、光一君と瀬利亜ちゃんは同性の時何度も親友だったりしたから、今のその時のノリが続いているみたいよ。」
それで光一とはいつも掛け合い漫才みたいなことをしているのかと瀬利亜は思った。
「でも、瀬利亜ちゃんが女の時は光一君と夫婦だったこともあるのね。今のような友達夫婦みたいなノリで。」
「いやいや、友達夫婦じゃありませんて。」
「二人とも、もうすぐホームルームやねんけんど、こんなところでなにしてはるん?」
絶好のタイミングで光一から声を掛けられ、瀬利亜は心臓が跳ね上がった。
「ちょっと、『前世談義』で盛り上がっていたの♪」
「へえ、それは珍しい話題でんね。たとえばどんな話でっか?」
「光一君と、瀬利亜ちゃんが夫婦だった時もあるっていう話とか?」
「へっ!?それ、まじでっか??!!」
「夫婦というより、親友の延長みたいな感じね。まあ、同性で親友だったことがずっと多いから、そうなるんだろうけど。」
「じゃあ、今世でも親友のままでいる可能性の方が現状を見ると高そうな気がするんですけんど?」
「確かに、そんなことも何度もあったみたいね。ちなみに、瀬利亜ちゃんが夫婦になった回数が圧倒的に多いのはちーちゃんみたいなの。その時は絶世の美男子で♪」
「うわ、ほんまでっか。」
「でね、今の瀬利亜ちゃんのちーちゃんへの対応を見ていれば想像がつくと思うけど、『かわいくてかわいくてしかたない』から、ベタベタに甘やかすんだけど、さすがの私も『このバカップルは他の人といるときくらいはもう少し空気を読めよ!』くらいに思ったこともあるわね。」
「……アルさん、なんだか、私への罰ゲームみたいになってます…」
さすがの瀬利亜が半分泣きそうな顔になってしまっていた。
「あら、ごめんね。ついつい夢中になってしまって。そうだ、映像で見てみない?」
「いえ、もうそろそろ…」
瀬利亜の制止の言葉も入らないくらいウキウキしながら、アルテアは水晶球を懐から取り出した。
長身でスレンダーなきりっとした大正風の美女の姿が空中に浮かんだ。
千早がもう少し大きくなったらこんな感じという姿だ。
「これは、ちーちゃん!もう少ししたらこんな美女になるわけね!」
「上から七八、五五、八〇。身長が一六五センチか…。スレンダー美人も得点が高いでんね。」
「…あっという間にスリーサイズを見抜くとは、光ちゃんさすが過ぎるわ。」
「で、今度は瀬利亜ちゃんね。」
銀髪の長身の青年の姿が出てきたとき、全員言葉を失った。
宝塚の美女がそのまま男役をやってもここまでの美形にはならないのではないだろうか。
「まあ、相変わらずのいい男だわ♪」
「こんな男をこの世に存在させたら、あかん!世のいい女性を独り占めにしかねへん!!」
「………」
瀬利亜は半ば呆然として「過去の自分の姿」を見ている。
「その、超絶にもてるのに『ちーちゃん一筋』なところがさらにいいのよね♪
ちなみにこの時は私は男性でした♪」
((見てみたいような、見てみたくないような…))
ニコニコしているアルテアを見ながら二人は思った。
「この時は二人は『冒険家』で世界中の秘境を旅してまわっていたのよね♪
そうそう、瀬利亜ちゃんの日本人男性バージョンを見てみたくない?」
「ぜひぜひ、お願いします♪」
光一は完全に夢中になっている。
アルテアが水晶球に念じると、平安貴族風の男性の姿が宙に浮かんだ。
繊細そうな長身の美青年だが、やはり瀬利亜の面影がある。
容貌だけで言うなら理事長の小早川充とどっこいどっこいだが、きりっとした雰囲気は明らかに瀬利亜に軍配が上がった。
「すげー!確かに瀬利亜はんだわ。」
「この時は平安の貴族で、光一くんは同じく親友の貴族。
ちーちゃんと私と遥さんを奥さんにしていたのよね。」
貴族風の光一と、十二単を着た千早、アルテア(和風美女)、遥の姿が浮かび上がった。
「わてもかっこいいし!そして、七七、五四、七八! 九二、六〇、九〇! 八一、五九、八二! アルテアはんも日本人になるとサイズは日本人並みになりはるんやね。
ちなみに、こんな反則な環境にいる瀬利亜はんがうらやましすぎや!!」
「あら、瀬利亜ちゃんは貴族にしては奥様をあまり囲わなかった方みたいよ。
かたや光一くんは一〇人くらい奥様がおられたし。」
「………」
瀬利亜にジト目で見られて、光一は言葉に窮した。
「あ、これはスゴイかも!戦国時代の時ね。瀬利亜ちゃんが武将で、光一くんが家来、私が奥さんの時です。」
戦国風の瀬利亜、光一、アルテアが浮かんだ来た。服装以外は大きな変化はなかった。
「…服装が違う以外は大きな変化はないように見えるけど、どこがスゴイの?」
光一も同じ疑問を持ったらしく、アルテアに不思議そうな視線を向ける。
「ほらあ、この時代って、武将同士が『そういう関係』になることって、よくあったじゃない?お二人もそうだったのよね♪」
『衝撃の告白』に瀬利亜と光一はその場に崩れ落ちた。
『しばらく再起不能になった、光一と瀬利亜』を保健室に置いて来て、アルテアはホームルームを何とか始めた。
『何があったかの詮索』がクラス中の話題になったが、「三人とも」口を割らなかった。
『黒歴史』のことは三人だけの固い固い秘密になったのであった。




