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第一章


 陸続きの大陸に位置する古代から続くある国では、他国とのいざこざによって 戦いを引き起こしてしまった。


始まりは、些細(ささい)な出来事だ。


何も知らない子供が、隣国からお忍びで訪れていた王族の所有していた馬に触れた。


ちょっとした 好奇心だったのだろう。


けれど 相手が悪かったのかもしれない。


馬の持ち主は、自国での有名な傲慢な性格の持ち主である王太子だったのだから。


子供は、無残な姿で(さら)し首にされ その親族までもが犠牲に………。


しかも それだけでは終わらずに、無関係な者達も 無断に家を踏み荒らされ 男は、負傷させられ 女は、男達の欲望の捌け口に。


さすがに 罪のない者までもが命を奪われたのだから、黙ってはいられない。


その結果………互いに軍を率いて、国境付近で睨み合いが始まった。


最初に問題を起こした王太子は、自分の仕出かした事など棚に上げてしまい 相手国の討伐(とうばつ)に名乗りを挙げるように国中に呼びかける。


けれど 誰もが、自らの意思で立ち上がろうとはしなかった。


昔は、国の為に戦うべく立ち上がる者もいたにも(かかわ)らず 今回の戦争は、誰の目にも向こうに非がないことは明らかなのだから。


この事態に対して 王太子は、(しび)れを切らせた。


そして 単身で敵の下へと乗り込み、呆気なく死んだ。


この結果 ずっと王宮の奥で隠されるように育っていた第二王子が、新たな王太子となる。


そして 更に時は、過ぎていった。


些細(ささい)な出来事から始まった戦争は、その後 数年にも及ぶ 他の国々をも巻き込む大きな戦争へと発展してしまう。


これによって犠牲となる命は、数え切れない。


再び 血の海で世界が混沌(こんとん)の中で絶望に引き込まれていく。


































※~※~※~※~


 ある国境に近い村では、長きに続く戦争で食料が不足がちになりながらも 懸命に生き延びようとしていた。

そこへ 旅の途中だと言う少女がやって来る。

「こんな物騒な中で1人で旅をしているだなんて アンタ………無茶だよ」

村で一番の世話好きだと自称する未亡人のマチルダは、か細い少女の姿を目にして 溜息をつく。

その反応に 少女は、思わず肩を竦めた。

「最初の頃は、自炊(じすい)するのに手間取ったりしたんですけど 最近では、野宿にも慣れてきたところなんですよ?

それに この旅には、話せませんけど 理由があるんですから」

少女は、ニッコリと微笑んで 被っていたフードを脱ぐ。

「だけど 不思議だねぇ~?

アンタ………まるで 子供の頃に噂で聞いた 物語の中のお姫様に似通った<旅をする少女>じゃないかい?

だとしたら 理由を失ったにも(かかわ)らず、戦争を続けている連中の心を入れ替えさせて欲しいんだけどね?」

マチルダの言葉に 少女は、クスクスと笑った。

「何を言っているんです?

こんな容姿の私が、どうしてお姫様になるんでしょう?

髪の色だって 元の色が、旅をしている中で魔術と魔術のぶつかり合いで巻き起こされた瘴気(しょうき)でこんな色になっちゃっただけなんですよ?」

呆気ない答えを聞いて マチルダは、残念だというようなリアクションを見せる。

「だけど 気を付けないといけないよ?

今は、髪の色が変化するだけで済んでいるかもしれないけど 異形(いぎょう)に変わり果ててしまうかもしれないんだからね?

この村では、まだ出ちゃいないけど 隣村では、昨日 3人目が出たらしいんだから………」

「ったく………国王陛下は、何を考えておられるんだかッ!

俺達が、血の涙を流しながら働いているっていうのに 自分達は、高みの見物だ。

元々 戦争の発端(ほったん)になる理由を作ったのは、あの傲慢(ごうまん)()・王太子サマだっていうのにな?!」

その声に振り返ってみると マチルダに容姿の似た青年が、悪態をつきながら、家の中に入ってきた。

傍らには、心配そうな顔をしている女性と幼い男の子を連れている。

「あまり 大きな声では、言わない方がいいわ?

どの国でも 国民は、王族や貴族の盾という認識しか持たれていないんだから。

しかも 最初の軍の募集の時に、誰も名乗りを上げなかったことで その王太子サマが単身で敵軍に突っ込んで、死んでしまったんでしょう?

その経緯もあって 特に息子を失った陛下は、国民を恨んでいるって話よ?」

「こらこら お客さんの前で、喧嘩するんじゃないよ?」

マチルダは、呆れたように 苦笑した。

「お義母さん………お客さんって、こんな戦争中に見ず知らずの外から人を家の中に入れちゃったんですか?」

幼子を抱き上げて 女性が、首を傾げる。

青年も、どこか疑いの目を向けてきているらしい。

「私が、大丈夫だと判断したんだよ。

2人とも、失礼だろ?

お譲ちゃん………こっちの娘さんは、上の息子の奥さんのチェルシーとその息子のテリー。

上の息子のディックは、軍の年齢基準に入っちまって………今年から戦争に駆り出されてしまっているんだ。

で こっちの難しい顔をしているのが、下の息子のヴィクターだよ。

図体だけは、大きくなっているけど まだ12歳なんだ」

マチルダに説明されて 少女は、深々と頭を下げた。

「初めまして、色々な地域を旅して回っているもので。

ティナといいます」

優雅な仕草に 一同は、一瞬 戸惑っていたが 我に返ったように、同じような礼を取る。


 

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