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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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第23話 もう一人の俺

『我が半身』


その言葉が。


頭の中から離れなかった。


「……俺の中から?」


目の前にいる怪物。


黒い身体。


赤い瞳。


そして。


俺と同じ魔力。


違う。


正確には。


俺の中にあるものと。


同じだった。


「レオン!」


セレナの声で。


我に返る。


「下がってください!」


セレナが。


俺の前へ出る。


「私が――」


「待って」


俺は。


セレナの肩を掴んだ。


「……レオン?」


「こいつは」


俺は。


怪物を見る。


「俺を狙ってる」


「だったらなおさら――」


「いや」


俺は首を横に振る。


「俺がやる」


母さんが。


驚いた顔をした。


「駄目!」


「母さん」


「その存在は!」


母さんが叫ぶ。


「あなたが生まれた瞬間から」


「ずっとあなたの魂を喰らい続けている!」


「……!」


「戦えば」


「あなた自身が傷つく!」


俺は。


右手を見る。


黒い紋様。


確かに。


今まで感じたことのないほど。


強い魔力が流れている。


「だったら」


俺は。


剣を構える。


「俺がこいつを倒せばいい」


「違う!」


母さんが叫ぶ。


「倒せないの!」


「どうして?」


「あなた自身だから!」


「……」


その言葉が。


胸に刺さる。


怪物が。


ゆっくり立ち上がる。


『我を殺すことはできぬ』


『我はお前』


『お前は我』


『どちらかが消えれば――』


怪物が。


笑う。


『もう一方も消える』


「……」


「レオン」


母さんが。


震える声で言う。


「逃げて」


「お願いだから」


「もう一度」


「あなたを失うところを見たくない」


「……母さん」


「私は」


母さんの目から。


涙が落ちる。


「一度」


「あなたを殺しかけた」


「……え?」


「二十年前」


「あなたを産んだ直後」


母さんは。


胸元を押さえた。


「終焉石が」


「あなたの身体に入った」


「そして」


「もう一つの魂も」


「一緒に入り込んだ」


「私は」


「それを封じるために」


「あなたを――」


母さんの声が。


震える。


「一度、心臓を止めた」


「……」


「あなたを殺して」


「中の存在だけを消そうとした」


「でも」


母さんは。


首を横に振る。


「できなかった」


「あなたは」


「死ななかった」


「……」


「そのとき」


母さんは。


小さく笑った。


「この子は」


「あなたを守ったの」


「……こいつが?」


怪物を見る。


『……』


怪物は。


何も言わない。


「終焉の力は」


母さんが続ける。


「あなたの命を奪おうとするものを」


「すべて消した」


「だから」


「あなたは生き残った」


俺は。


言葉を失った。


敵だと思っていた。


俺の中にいる怪物。


でも。


こいつは。


俺を生かした?


『勘違いするな』


怪物が。


低い声で言う。


『我はお前を守ったのではない』


『我が消えたくなかっただけだ』


「……」


『お前が死ねば』


『我も死ぬ』


『だから生かした』


「……そうか」


俺は。


剣を下ろした。


「じゃあ」


俺は。


怪物を見る。


「俺たちは」


「共存できるのか?」


怪物が。


初めて黙った。


そして。


『……分からぬ』


その答えが。


妙に人間らしく聞こえた。


---


「話を聞かせて」


セレナが。


母さんへ向き直る。


「二十年前に」


「何があったのですか?」


母さんは。


目を伏せる。


「……アルベルトは」


その名前が出た瞬間。


俺の胸が痛んだ。


「父さんは?」


「生きている」


「……!」


「でも」


母さんは。


苦しそうに続ける。


「あなたとは」


「会えない」


「なぜ?」


「アルベルトは」


「あなたを守るために」


「自分自身を封印したから」


「……自分を?」


「はい」


母さんは。


頷く。


「あなたの中に終焉の力を封じたことで」


「アルベルトの身体には」


「創造の力だけが残った」


「そして」


「創造と終焉」


「二つの力が世界に存在する状態を」


「教団は恐れた」


「だから父さんは?」


「自分自身を」


「世界樹の根に封印した」


「……」


俺は。


拳を握る。


父さん。


生きている。


でも。


世界樹の根にいる。


そして。


俺の中には。


終焉の力。


「じゃあ」


俺は聞く。


「第三封印って」


母さんが。


顔を上げた。


「第三封印は」


「アルベルトを封じている封印」


「……!」


「そして」


母さんが。


俺を見る。


「あなたを封じるためのものでもある」


「俺を?」


「あなたが終焉の力に飲み込まれたとき」


「第三封印が」


「あなたを世界から切り離す」


「つまり」


「俺は」


「第三封印を開けたら――」


「あなたのお父様が解放される」


セレナが。


息を呑む。


「同時に」


母さんが。


続けた。


「あなたの中の終焉も」


「完全に目覚める」


「……」


俺は。


しばらく何も言えなかった。


第三封印。


父さんを助けるためには。


開けなければならない。


でも。


開ければ。


俺の中の存在も。


完全に目覚める。


「それでも」


俺は。


母さんを見る。


「行く」


「レオン!」


「父さんを助ける」


「でも」


母さんが。


俺の腕を掴む。


「あなたは死ぬかもしれない」


「……」


「終焉の力が完全に目覚めたら」


「あなたの身体は耐えられない」


「なら」


俺は。


笑った。


「耐えられる身体を作ればいい」


「……え?」


「創造の力があるんだろ?」


俺の右手に。


白い光が灯る。


「だったら」


左手には。


黒い光。


「終焉も」


「俺の力にする」


母さんは。


目を見開いた。


「そんなこと……」


「できるかどうかは」


俺は。


剣を握る。


「やってみないと分からない」


---


その瞬間。


研究施設全体が。


大きく揺れた。


「――何!?」


エリスが。


剣を抜く。


「敵襲!」


遠くから。


爆発音。


ドォン!


ドォォン!


次々と。


研究施設の壁が崩れていく。


「黒冠教団です!」


エリスが叫ぶ。


「侵入してきた!」


母さんの顔が。


青ざめる。


「……もう来たのね」


「知ってたの?」


「ええ」


「帝国の中にも」


「教団の協力者がいる」


「じゃあ」


俺は。


剣を構える。


「母さんを守る」


「レオン」


セレナも。


杖を構えた。


「私も戦います」


「リナも!」


「リナは――」


「戦う!」


リナが。


両手を握る。


「私だって」


「みんなを守りたい!」


「……分かった」


俺は。


頷いた。


「でも無理はするな」


「うん!」


そのとき。


研究室の扉が。


吹き飛んだ。


「――!」


黒いローブ。


十人。


二十人。


いや。


もっといる。


その中央から。


一人の男が歩いてくる。


「お久しぶりです」


男は。


母さんを見る。


「ミレイア様」


母さんの顔が。


強張った。


「……ヴァルガス」


「覚えていてくださったのですね」


男は。


笑う。


「光栄です」


俺は。


男を見る。


「誰だ?」


「あなたのお母様の」


男は。


俺を見る。


「元同僚ですよ」


「……」


「そして」


男の目が。


赤く光る。


「あなたの誕生にも」


「立ち会った」


「……!」


俺の身体に。


黒い紋様が走る。


『こいつを知っている』


頭の中で。


怪物が呟いた。


「お前が?」


俺は。


驚く。


『ああ』


『こいつが』


『我を作った』


「……何?」


男が。


笑った。


「ようやく」


「目覚めましたか」


「終焉の器」


「あなたの中にいる」


「もう一人の私の作品が」


「……」


俺は。


剣を握る手に。


力を込めた。


「お前が」


「こいつを作ったのか?」


「正確には」


ヴァルガスが。


指を鳴らす。


「私たちが」


「二十年前」


「始祖の魂から」


「新しい生命を作ろうとした」


「……!」


「その実験体が」


ヴァルガスは。


俺を見る。


「あなたです」


「レオン」


母さんが。


叫ぶ。


「聞かないで!」


だが。


もう遅かった。


「あなたは」


ヴァルガスが。


笑う。


「アルベルトとミレイアの息子ではない」


「……」


「始祖の魂を宿すために」


「人工的に作られた器」


「それが」


「レオン・アストリア」


「――嘘だ」


俺は。


呟いた。


「そんなの」


「嘘だ!」


ヴァルガスは。


首を横に振る。


「ならば」


「お母様に聞いてみればいい」


俺は。


母さんを見る。


「……母さん」


母さんは。


答えない。


「母さん?」


涙が。


頬を伝っている。


「……ごめんなさい」


その一言だけで。


全てが。


分かってしまった。


俺は。


膝をついた。


「俺は……」


「人間じゃないのか?」


母さんは。


俺の前にしゃがみ込む。


「違う」


「あなたは」


母さんが。


俺の頬に触れる。


「私の息子よ」


「どんな生まれ方をしていても」


「あなたを産んだのは私」


「あなたを愛したのも私」


「だから」


「お願い」


「自分を否定しないで」


俺は。


唇を噛んだ。


そのとき。


頭の中から。


声が聞こえた。


『……くだらぬ』


「……え?」


『人間かどうかなど』


『どうでもいい』


怪物の声。


『お前が何者であろうと』


『我はお前だ』


『お前は我だ』


『ならば』


『共に生きればいい』


「……」


俺は。


ゆっくり立ち上がった。


右手に。


白い光。


左手に。


黒い光。


「……そうだな」


ヴァルガスが。


初めて笑顔を消した。


「まさか」


「まさか融合したのか……?」


「違う」


俺は。


剣を構える。


「俺たちは」


黒い光と白い光が。


一本の剣に集まっていく。


「最初から」


「一人だったんだ」


剣が。


巨大な光を放つ。


「来い」


俺は。


ヴァルガスを睨む。


「母さんには」


「指一本触れさせない」


ヴァルガスが。


魔力を解放する。


「面白い……!」


研究施設の地下で。


二十年前に始まった因縁が。


今。


再び動き始めた。

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