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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
11 変わらない無力感
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変わらない無力感 4

 白希が帰った後、猩花は彼が出ていった扉の方を見つめていた。その表情にはありありと寂しいという感情が出ている。姉妹たちは彼女のそう言った表情は珍しいと思った。猩花はあまり外に感情を出さないというか、我慢したがると言うか。とにかく、我慢してしまって感情を外に出さないことが多いのだ。それは、彼女からすれば、姉たちは大人で尊敬できる人で自分のわがままで手を煩わせたくないと思っているからだ。それに、思ったことを我慢することで、姉たちのような立派な人に慣れると考えているところもある。姉たちはそれをある程度は理解しているのだが、それを止めさせることは難しかった。自分たちも間違えるし、彼女に我慢させたくはないと思っているのだが、その方法がわからない。猩花は我慢強いせいか、頑固な部分もある。姉たちが自分たちのことを猩花とあまり変わらないという話をしても、彼女は自分をあやすための嘘だと思ってしまうのだ。


 実際に、菜乃花は姉妹以外の誰かが居ればしゃっきりしているが、姉妹以外の人がいないときは、ベッドに寝転がりながら着替えをするようなだらけた人でもある。竜花は片付けが出来ず、自分のスペースも人が来なければ散らかりっぱなしだ。蓮花も品行方正と言う外面だが、実際には竜花と剣かもするし、意外と抜けているところがあり、菜乃花や竜花に言われて忘れていたことや物を思い出すことが多い。三人とも、もちろん尊敬できるところもあるが、反対に駄目な部分もあるのだ。猩花だけではなく、誰かに崇められるような完璧さなど持ち合わせていない。


 いつもなら、猩花の様子を見ても、特に細かく口を出すことはない。だが、今日は別だった。菜乃花が猩花の前に膝を折って座った。


「猩花、何か言いたいことがあったの?」


 猩花は寂しそうな顔をパッとやめて、ニコリと笑う。そして、彼女は首を振って、なんでもないと示す。だが、今日はそれで話は終わりと言うわけにはいかなかった。菜乃花は、きっと今日が彼女に我慢の使い方を教えるタイミングなのだと思ったのだ。なんでもかんでも我慢すれば、立派になれるわけではないと伝えたい。


「猩花、話しをしましょう。今日は我慢しないで」


「え、えっと、えと、我慢なんて、してないよ」


 猩花がそう言うだろうということは彼女も予想していたことだ。菜乃花は優しい人だ。それが嘘だとわかっていても、どうしてもそれ以上の言葉の続け方がわからない。妹を傷つけないようにしながら、話を進めたいが、彼女の今の信念ともいえる姉のような立派な人になるという目標に反することになるだろう。それを強要してもいいものか、どこまで話をしてもいいのか、その線引きが菜乃花にはできない。


「猩花、今江さんはきっと怒らないと思います。もし、今度何かお願いがあるなら伝えましょう?」


「そ、れは、でも、嫌われる。きっと、嫌われる。お姉ちゃんたちみたいになれなくなっちゃう。迷惑かけるのはダメだよ」


「迷惑だなんて、思いませんよ。かわいいわがままだって思ってくれるはずです」


 それは確信していた。戦闘の時も熊や猫、犬のぬいぐるみを回収して、竜花の言葉を受け入れて、猩花の手も振り解かなかった。それから、ここにいる時も猩花の言葉と心をしっかり見ていたように感じる。猩花のわがままなら聞いてくれる確信している。それでも、猩花はそこまでわからない。頭は良いが、細かい人の心の機微や

行動の意味を理解するには幼いのだ。


「……いや。やっぱり、ダメだよ」


 猩花が俯いてしまうと、菜乃花はそれ以上は何も言えなくなる。我慢をさせないために、我慢させるというのは意味がないだろう。ただ、やはり、このまま我慢させ続けるというのは駄目だということはわかっている。だが、今日はそれ以上話すことは出来なかった。




「今日は大変でしたね、シラキさん」


「そうだね。この世界でもああいったことはある。そう言う根本的なことはプロイアたちの世界と変わらないかもね」


 彼は帰路に着いて、暗い夜道を歩いていた。あの部室棟から離れる時には、幻の魔法をかけて、一般人には外からは見えないようにしている。外から見れば、彼は一人で気ままに歩く美少女男子にしか見えないだろう。それはそれで、目立つが妖精がいるなんてことはばれる心配はない。


「明日もあそこに行くんだよね」


「そう約束しちゃったからねぇ」


「し、シラキは子供に弱い……」


「そうよっ。向こうの世界でも、子供には甘かったもの」


 妖精たちは、彼の今日の猩花への態度で、向こうの世界、異世界のことを思いだしているようだった。彼はやはり、寂しいものかと思ったが、そう言うわけではないらしい。単純に思い出話と言うだけで、異世界に戻りたいと思っているわけではないと、ファスがわざわざ言葉にしてくれた。彼は妖精たちの言葉を疑わないが、妖精たちも彼に嘘を吐くことはない。


 彼が家に着くころには、彼の落ち込みもなくなり、普段通り妖精たちと楽しそうに会話していた。

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