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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
11 変わらない無力感
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変わらない無力感 3

 猩花は自分の空間にあるぬいぐるみを一体一体紹介していく。彼女にとってはそのぬいぐるみたちは友達同然の存在だ。ただのぬいぐるみではなく、彼女が超能力を使えば、そのぬいぐるみたちも生物となり、彼女と共に戦ってくれるのだから。だが、その感覚は彼女にしかわからない。そもそも、超能力者でもなければ、ぬいぐるみが友達だというような歳ではない。周りはぬいぐるみが友達になれないことと言う常識が既にある。それどころか、常にデフォルメされた熊のぬぐるみを抱いている彼女は周りからも少し幼く見られていた。だが、そのお陰か、同級生でも彼女の姉のような立ち位置にいるつもりなのか、彼女は虐められるなんてことは起きなかった。男子たちも彼女をいじめる対象にはしなかった。いくら男子小学生と言えど、幼く見える少女に手を出すことはなかった。


 猩花の全てのぬいぐるみの紹介が終わった。猩花は多少息を切らせている。彼女は終始興奮した様子だった。それも当然で、彼がぬいぐるみたちを生きている人を相手にするのと同じような態度だったからだ。


「あ、チャイルが落ちるぞ」


 白希に言われて、机の上に置いた小さな緑の鳥のぬぐるみが落ちそうになっているのに猩花が気が付いて、落ちる前に手に取った。彼女は口にはしないが、彼がちゃんとぬいぐるみたちの名前を憶えていてくれたのがとても嬉しかった。


「ありがと」


「ああ、それくらい気にするな」


「そう、そうじゃなくて、助けてくれたこと。さっきのあの戦いで私を、助けてくれたこと」


 彼女は勇気を振り絞って、そう言った。その言葉に勇気が必要だったのは、助けられるまで、彼を悪人寄りの人だと思っていて、そのせいで嫌っていたのだ。だから、既に自分は嫌われていると思っていて、お礼を言っても受け入れてもらえないと思ったのだ。だが、助けられたことだけではなく、こうして話していると、姉たちよりも自分のことを理解してくれているように感じる。いや、姉たちに向ける心とは違う方向のものかもしれない。彼は、猩花にとって特別な人なのだ。姉たちに向ける憧れとは違う方向性ではあるが、彼女はそれを憧れだと考えた。


「ああ、君が無事でよかったよ。あんまり無理するな」


 そう言って、彼はそう言って猩花の頭に手を置いた。そして、彼女が抱く熊のぬぐるみの頭にも手を置いていた。


「お前もありがとな」


 もはや、猩花はもはや彼のことを嫌えない。嫌えないどころか、彼に会えないと思うと寂しさを感じる。今日このまま、ずっと一緒にいられる方法を既に考えてしまっている。だが、猩花はそう言うわがままを言うのを自ら抑えている。彼に迷惑をかけて嫌われて、二度と会えなくなる方が嫌だった。それでも、胸に感じる彼の暖かな言葉と手がその理性を溶かしてしまう。


「おにいちゃん」


 彼女は彼を呼んだところで、わがままが喉元まで出かかっているを自覚して、何とかその言葉を食い止めた。だが、彼は彼女の様子が変であることに気が付いて、彼女の顔を覗き込む。猩花はその視線を受け止めることができなかった。彼に今見つめられてしまうと、きっとわがままを素直に口に出してしまう。嫌われたくはない。だから、彼女は視線を逸らしていた。彼女はそれ以上は何も言えなかった。


 彼はある程度は、彼女の言いたいことをわかっているつもりだった。だが、そこまで彼女を甘やかしてもいいのか、わからなかった。異世界でも、子供たちが困っているとすぐに手を貸してしまい、そのせいで子供たちが何もやらなくなった時期があった。そのせいで、彼は子供のことを理解できても、すぐに手を差し伸べることはしなくなってしまったのだ。


 しばらく二人の間に沈黙が下りる。その様子を菜乃花が見ていた。竜花と蓮花は既に、自分のスペースでそれぞれ好きなことをしている。彼らの様子を気にも留めていないようだ。菜乃花は立ち上がり、二人に近づいていく。彼女は猩花の後ろに立って、彼女の頭の上に手を置いた。


「今江さん。明日もここに来てくれませんか。今日のように戦わなくてもいいですから。竜花も猩花も貴方に懐いているみたいですし、お願いします」


 彼もそう言われると来ないとは言いにくい。妖精たちも何も言わないところを見ると、ここに来ることに反対するわけではないようだ。


「ああ、わかった。明日もここに来ることにする」


「ありがとうございますっ。扉をノックすれば、誰からが出てくれますから、次からはそうしてください」


「ああ」


 外の様子は見えないが、あの戦いを経て既に夕方だったことを考えると、そろそろ夜になろうとしているだろうと彼は考えて、話しの区切りも良いため、そろそろ帰ることにした。それを菜乃花に言って、外に出してもらう。他の姉妹たちも彼が帰ると知ると、見送りをしてくれた。猩花は彼がドアを出ていくのを寂しそうな顔をしていた。

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