怪奇怪異全書
初老の男を倒して、白希が見ていた景色すら相手の超能力で作られたもので、塵になってい消えていく。気が付けば、彼は学校内の敷地にある建物の中にいたようだ。全く人気のない使われていない教室のようだ。見覚えがあるといえば、その通りなのだが、教室自体の作りは机があるかないかの違いだけだ。見たことがあるといえば、蓮花が家出したときに隠れていた教室だと思える。彼は教室を出ようとして、足で何かを蹴飛ばした。彼はそれに気が付いて、それを拾い上げた。それは四つにおられた紙だ。それを広げると、少し崩れた字で短い文章が書かれていた。
君に見せたものと同じ景色の建物が森の中にある。
そこに一冊の本が開いておいてある。
それを閉じて、本当の終わりにしてくれ。
「……これは。最後まで面倒をかけてくれるね」
彼はそう言いながらも、その建物を探すことにした。森といえば、エイリアンがいた場所の近くだろうか。オカルトといえば、あの宇宙人たちもそれに当てはまるとすれば、エイリアンと最後に戦った場所に周辺を探せばいいのだろう。それに、彼はその建物の景色を知っている。わざわざその中で戦わされたのだから、
記憶には残っている。しばらくすれば、背景だったその景色のことなど忘れてしまうだろうが、今なら覚えているし、その手紙のせいですぐには忘れられないだろう。
とにかく、彼は教室を出て、人気のない一つ飛ばしで点いているいる蛍光灯の廊下を歩いて、学校を出た。学校からもこの町の森が見える。彼は学校から直接森の中に入った。森の中には特に変化はなく、いつものように自然ばかりがそこにあるだけだった。
しばらく歩いていると、森の木々がなくなっている広場についた。そこはエイリアンたちと戦ったところでもある。その時よりも広場の状態がひどくなっているような気がしたが、そこには誰もいない。
そして、彼はその広場の周辺に建物がないか探す。ファスとプロイアもそれに協力して、木々がないところを魔気を通じて探してもらった。魔気を使えば、すぐに建物を見つけることができた。場所はファスとプロイアに案内してもらい、ついに、その半壊した倉庫らしき場所にたどりついた。心霊スポットのような、不気味な佇まいでそこにある倉庫に彼は多少警戒しながら、建物の入り口らしき場所から顔だけ入れて、中をみる。特に人や動物の気配はしない。警戒しながら彼は建物の中に入っていく。中は廃墟同然で、天井は崩れているし、床には崩れたものがそのまま残っているようだった。隠れ家というならなかなかばれにくい場所だろう。それにしても、このオカルト騒動の原因たちがこんな近くにいたとは思わなかった。
静けさだけが残る中、彼は倉庫の中を探索する。倉庫というだけあって、一番広い部屋は体育館並みの広さをしている。その部屋以外にもいくつか部屋が分かれていて、何より多少小部屋があり、探索する必要があった。さらに敵のいうことだ。どこかに罠がないとも限らない。初老の男の意図とは別に、罠を仕掛けている敵がいないとも限らない。それにあの男を倒したからと言って、彼の仲間がこの建物の中にいる可能性もある。警戒しながらの探索のため、進む速度は速くはない。それでもファスとプロイアが生物がいないことは確認しているため、出てくるとすればオカルトに近い何かということになるだろう。
さらに進んでいくと、一つの廊下だけ、他の廊下に比べて、人が入った形跡のある道があった。彼はその廊下に入り、さらに奥へと進んでいく。廊下を進んで一番奥の部屋の扉だけはしっかりと閉じられていて、その部屋の周囲だけは綺麗だった。そこだけ瓦礫がないのだ。
「当たりかな」
彼はそう呟いて、扉に手を当てる。その瞬間に、中にとてつもないものが置いてあるということだけはわかった。雰囲気というか、そういうオカルトの気配がするのだ。彼は扉を慎重に開けようとしたのだが、少し扉を開くと同時に、扉が勝手に開いてしまった。彼は扉から手を放して、部屋の入口の正面を警戒して、その位置から移動する。扉の正面からではなく、入口の横から顔を覗かせて中を確認する。
その部屋だけは崩れたところもなく、中も綺麗な部屋だ。そして、部屋の中央には丸いテーブルが置いてあり、そこに厚い本が一冊、中間のページを開いた状態で置いてあった。その本が男に言っていた本だとわかるほどに禍々しいオーラを放っていた。白希はゆっくりとその本に近づいて、部屋の中を警戒しながら、本に触れる。本自体は一般的な本と同質だった。彼がその本を閉じると、禍々しいオーラもなくなり、部屋に充満していた嫌な雰囲気も消失した。
「怪奇怪異全書……」
表紙にはそう書かれていた。