僕は夢を見た(31) 街に皇女がやって来た
いつもと同じ街の城門前に立つ僕。
いったい今日はどんな事件が起きるのやら。
楽しみ半分、不安半分。
騎士宿舎へと向かい歩き始める。
途中、リズの親父さんの八百屋で挨拶をする。
よしひろう:「うぃーっす。」
リズの親父さん:「おう!おはよう!」
いつもと同じ、元気な返事が返ってきた。
リズの親父さんの八百屋を通りすぎようとした時、広場の方からセナがこちらに向かって来ているのが見えた。
よしひろう:「どうしたんだろう?」
リズの親父さん:「ん?あの騎士さん、兄ちゃんに用事でもあるんじゃねえか?」
などと話しているうちに目の前までやってきた。
セナ:「リズさんの父上殿、リズさんに用があって来ました。」
リズの親父さん:「へ?うちのリズにか?」
リズの親父さんが店の奥へと歩いて行く。
リズを呼びに行ったのだ。
店の奥から慌てて飛び出して来るリズ。
リズ:「ウチ、何か悪いことしたんかな?」
首を横に振るセナ。
セナ:「エリザベート様がリズさんと話があるそうなのだ。」
セナ:「よしひろうも呼ばれている。」
セナ:「私と一緒に来てくれ。」
よしひろう:「わかりました。」
セナの後ろをリズと並んで歩く僕。
よしひろう:「リズ、おまえ何かやったんだろ?(笑)」
リズ:「兄ちゃんこそ、死刑かもな?(笑)」
他愛もないことを言い合いながら歩く僕たち。
宿屋の前に着くと、馬車が2台止まっており、その前後を馬に乗った騎士達が並んで待機していた。
「え?」となる僕とリズ。
姫様の滞在は今日までだったのだ。
前側の馬車の入り口から宿屋の入り口内には赤い絨毯が敷かれている。
セナ:「絨毯を踏むなよ。」
その言葉に頷く二人。
セナと共に宿屋の中へ入る僕とリズ。
敷かれた絨毯の先には椅子に座る姫様。
両脇には各2名ずつのメイドが控えていた。
そのメイドの横で片足を付いて跪くアスター隊長の姿があった。
セナもその横に同じように片足を付いて跪く。
僕とリズもそれを真似て跪いた。
エリザベートが話を始めた。
エリザベート:「この度の外遊では大変お世話になりました。」
エリザベート:「私からせめてもの贈り物をさせてください。」
そういうと椅子から立ち、アスター隊長の前に立つ。
メイドが恭しく四角い黒盆に乗せた勲章を姫様に差し出す。
勲章を手に取りアスター隊長の首に掛ける姫様。
アスター隊長:「ありがたき幸せ。光栄に存じます。」
次にセナの前に立つ姫様。
エリザベート:「あなたにもお世話になりました。」
エリザベート:「いつも私を守っていてくださいましたね。」
エリザベート:「ありがとうございました。」
次のメイドが恭しく黒盆を姫様に差し出す。
その盆の上にはロイヤルブルーの美しい胸当てがあった。
それをセナに手渡しする姫様。
エリザベート:「近々、騎士昇格試験を受験なさると聞き及んでいます。」
セナ:「はい。僭越ながら受けさせていただきたいと考えております。」
エリザベート:「私からも父王様に推挙させていただきますね。」
セナ:「もったいないお言葉、ありがとうございます。」
姫様が僕の前に来た。
次のメイドが黒盆を姫様に差し出す。
その黒盆から剣を一振り手に取り僕に差し出す姫様。
エリザベート:「これをよしひろう様に。」
そう言って差し出された剣はとても美しかった。
青色に金の縁取りの鞘、青色の柄にも金色の細工が施してあった。
僕は手を伸ばし、それを受け取ろうとした時に姫様が言葉を付け加えた。
エリザベート:「この剣をもってどうか私の騎士となってください。」
僕は受け取ろうとした手を止めた。
常には姫様を守れない自分。
そう、夢の中でしか姫様に会えないのだ。
それに…
空を飛ぶことしか出来ない自分。
自分の身すら守れないでいる自分。
こんな情けない自分に騎士など務まるハズが無かった。
僕は首を横に振って答えた。
よしひろう:「この剣をお受けする事はできません。」
よしひろう:「私は旅人です。常に姫様の傍に居られるわけではございません。」
そう言って姫様を見ると悲しそうな顔になっていくのが分かった。
エリザベート:「ならば相談役に…」
首を横に振る僕。
今にも泣きそうな顔になる姫様。
エリザベート:「せめて…友達に…なってくれませんか?」
よしひろう:「はい!友達ならば!」
僕がそう答えると姫様の顔がみるみる笑顔に変わる。
エリザベート:「友達として、この剣をあなたに託します。」
よしひろう:「はい!」
とその剣を両手で受けとる僕。
エリザベート:「友達になるのですから、今後は私の事はエリーと呼んでください。」
エリー:「姉様方からもそう呼ばれていますわ。」
エリー:「よしひろうももっとこう短くできないものでしょうか?」
よしひろう:「どうでしょうか?(笑)」
エリー:「よしろー…」
エリー:「よっしー…」
よしひろう:「(そんなどこぞのハ虫類キャラみたいな名前だけは嫌だ)」
エリー:「ヒロ!ヒロと呼ぶことにいたしましょう。」
と両手を合わせ嬉しそうに言う姫様。
エリー:「それともう一つ。」
何やら書状のような物を手渡してきた。
エリー:「お城での通行許可証よ。これが有れば、私の寝室にだって入って来れるわ。」
エリー:「大事な物だから失くさないでね。」
よしひろう:「はい(ゴクリと生唾を飲む)」
エリー:「ヒロ、これからもよろしくね。」
よしひろう:「はい!」
次にリズの前へと行く姫様。
エリー:「リズさん、エクスカリバーを見つけてくださりありがとうございます。」
エリー:「それと、あなたも私のお友逹になってくださいませんか?」
リズ:「ウチみたいなのでもよければ。」
と笑顔で返答するリズ。
次のメイドが黒盆を姫様に差し出す。
黒盆からレターセットを受け取りそれをリズに渡す姫様。
エリー:「リズも私の事はエリーと呼んでください。」
リズ:「はい、エリー。」
と頷いてそのレターセットを受けとるリズ。
エリー:「この手紙を騎士に預ければ私の所に必ず届きます。」
エリー:「私と文通いたしましょう。」
エリー:「些細なことでもかまいません。私もリズに手紙をだしますわ。」
エリー:「さて、こんなところかしら?」
素に戻る姫様。
突然、僕の横に来ると前屈みになって頬っぺたにキスをしてきた。
エリー:「(チュッ)」
頬っぺたにキスされた衝撃と発達途中の胸の谷間を再び見られた喜びでその場に固まる僕。
エリー:「じゃあねっ。ヒロ!」
と言い手を振って馬車に乗り込む姫様。
その後に続くメイド達。
騎士達に先導され、馬車が出発した。
それを宿屋の外で手を振って見送る僕たち4人と街の住民達。
そう、姫様は皆から愛されていたのだ。
僕たちはその場で解散し、思い思いの方角へと散っていった。
僕はというと姫様一行の後について城門前まで来ていた。
いつも腰かける石に腰掛け、小さくなっていく姫様一行を見送り続ける。
手には美しい一振りの剣。
時間はまだ午前中といったところか。
男:「よしひろう殿」
背後から突然声がした。
ビクッとする僕。
振り替えるとレンジャーが居た。
レンジャー:「今回も世話になった。」
と笑みを溢すレンジャー。
レンジャー:「またお会いできる日を楽しみにしております。」
そう言うと姫様を追いかけて馬を駆け出すレンジャー。
いつもながらビックリさせられる…
爽やかな風が吹いている。
意識が薄らいできた。
目が覚めた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。
すかさずそのアラームを止める僕。
今日はいいことがありそうだ。
仕事に行く支度を始める。




