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夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
街に皇女がやって来た
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31/58

僕は夢を見た(30) 街に皇女がやって来た

今日も街の城門の前に立っている僕。

姫様が来てからは何かと気忙しい日が続いていた。

今日はいったい何が起きるのだろう?

などと考えながら騎士宿舎へと向かう。

途中、リズの親父さんにいつもの挨拶。


よしひろう:「おはよーっす。」

リズの親父さん:「おう!おはよう!」


八百屋を通り過ぎ、街の中央の広場にある求人板の前に来る。

昨日とは違って今日は静かだ。


よしひろう:「昨日はエクスカリバーのおかげで大騒ぎだったからなぁ(苦笑)」


と呟いていると、宿屋からセナがこちらに向かって歩いて来る。


よしひろう:「(セナは今日も綺麗だな…)」


心の中で呟く僕。

というか、朝からセナが僕に用事って嫌な予感しかしない。

セナが僕の前まで来て笑顔で話し始めた。


セナ:「おはよう。」

セナ:「今日、姫様がお忍びで街を見物するそうだ。」

セナ:「よしひろうも同席するようにと直々にお言葉があった。」

セナ:「申し訳ないが、一緒に廻ってやってくれ。」


予感的中。ただ、そう悪くはない話だ。

僕は姫様に好感を抱いていたのだ。


よしひろう:「お忍びでですか…」

よしひろう:「何か起きた時には守ってくださいよ?(苦笑)」

セナ:「それは任せておけ。」


宿屋へと向かう僕とセナ。

宿屋では既に準備を済ませた姫様付きのメイド2人と騎士3人が待機していた。

その騎士の中にはアスター隊長とウォレス副隊長も含まれていた。

待っていると上から姫様が降りて来た。

今日は水色のドレスを来ている。


よしひろう:「(可愛いし綺麗だし、これは将来が楽しみだ)」


姫様が集団に加わると姫様付きのメイドが口を開いた。


メイド:「今日は姫様のたっての希望でこの街を見学いたします。」

メイド:「事件事故に巻き込まれぬよう細心の注意を払うようお願いいたします。」

エリザベート:「よろしくお願いします。」


とスカートを両手で軽く持ち上げて挨拶をする姫様。


エリザベート:「出発する前に…」

エリザベート:「何故昨日は来なかったのじゃ?ずっと待っていたのじゃぞ!!」


と怒られる僕。


よしひろう:「エクスカリバーの件があったので姫様がお疲れかと…」

エリザベート:「言い訳は聞きとうない!」


たいそうご立腹なご様子。

ただ、それもすぐに収まり姫様の社会見学が始まった。

まずは市場を訪れた。

そこでは野菜市場、魚市場、果物市場、家畜市場と様々な物が売られていた。

これには僕も驚かされた。

こんな場所があるとは僕も知らなかったのだ。

場所を移動する度に


エリザベート:「これは何なのじゃ?」

エリザベート:「これは食べ物か?」


と配下のメイドを質問攻めにする姫様。

目を輝かせて質問する姿は正に天使だ。

次に騎士宿舎へと行く。

この街の騎士達の生活する様子を見学した。

そして尖塔の一番上まで上り街全体を眺める。


エリザベート:「高いわー。」


目の前をハトの群れが飛んでいった。

それをジッと見つめる姫様。


よしひろう:「姫様?どうかしたの?」

エリザベート:「ううん。なんでもない。」


そういうと姫様は階段を下りていった。

次は道具屋。

様々な商品を前にまたもや姫様の質問攻めが始まった。


エリザベート:「これは何じゃ?」

エリザベート:「何に使うのじゃ?」


その質問一つ一つに丁寧に答えるメイド。


よしひろう:「(姫様が"のじゃ"っ子だったとは知らなかった(笑))」


一応、お忍びでの街の視察という事だったのだが、そんなに大きくない街で、しかも姫様が来ている事は公然の事実として広まっていたため一目で姫様一行だという事がバレてしまっていた。

世間話好きの道具屋の店主が畏まってピクリとも動かない。

まるで台風が通り過ぎるのを待っているかのようで、見てて笑いが込み上げてくる。

その次は武器防具屋に入る。


エリザベート:「へえ~」


と物珍しそうに並べられた商品を見ている。

店主も姫様だと勘づいているようで、「一元さんお断りだ」とは言わなかった。

街を一通り廻ったので僕が姫様に提案した。


よしひろう:「リズの八百屋に行ってみませんか?」

エリザベート:「行く!」


ということでリズの親父さんの八百屋まで来た。


よしひろう:「ちわーっす。」

リズの親父さん「らっしゃーい!」

リズの親父さん「こりゃまた団体さんで何事か?」

よしひろう:「八百屋見物に来ました。」

リズの親父さん:「野菜しかないが好きなだけ見ていってくれ!がはは」


と笑い飛ばすリズの親父。


よしひろう:「リズはいます?」

リズの親父さん:「ああ、奥にいるぜ?」

リズの親父さん:「リズー、兄ちゃんが呼んでるぜ!!」


奥からリズの声がする。


リズ:「はーい。」


奥から小走りでこちらに来るリズ。


リズ:「何だ?兄ちゃん。」


僕の傍らに姫様がいるのが分かると急に畏まる。


リズ:「な、な、何でご、ございましょうか?」

エリザベート:「今日はお忍びで来たのじゃ。」

エリザベート:「敬語は抜きで構わんぞ(笑)」

リズ:「そ、そう急に言われてもねぇ…」


と僕に目配せをするリズ。

僕にどうしろっていうんだ?


エリザベート:「そうだ、今日は私が皆をもてなそう。」

エリザベート:「リンゴを9個いただくわ。」


そういうと自身の肩から下げたポーチから大きめの金貨を取り出した。

リズの親父さんにリンゴを受け取り、その金貨を渡す。

リズの親父さんが慌て始めた。


リズの親父さん:「お嬢さん、こいつはダメですぜ。」


どうやらお釣りが渡せないらしい。

金貨を見せてもらうと1000000Gと刻印されていた。


よしひろう:「100万かよ!」


金貨を姫様に返すリズの親父さん。


リズの親父さん:「今日は俺の奢りってことでいいですぜ!がはは」


皆から少し離れた場所でリンゴを噛りながら女の子同士の話をする姫様とリズ。

会話の内容は分からないが、なんだか楽しそうだった。

そろそろ夕刻が近づいて来た頃。

社会見学も一通り終わったらしく、メイドが姫様に話を切り出した。


メイド:「そろそろ宿屋にお戻りになりませんか?」

エリザベート:「まだじゃ!」

メイド:「?」

エリザベート:「………たい。」


もじもじとしながら小さな声で呟く姫様。


メイド:「何と仰いましたか?」

エリザベート: 「…を…たい。」


意を決したように大きな声を出す姫様。


エリザベート「空を飛びたいのじゃ!」


そういうと僕をジッと見つめる姫様。

「え?」となるその場の一同。

僕がメイドを見ると顔を横に降る仕草をしてきた。

姫様付きのメイドとしては、姫様の安全が一番の重要事項だったからだ。

空を飛ぶなどもっての他だった。


メイド:「それは無理でございます。」

メイド:「看過できません。どうかご辛抱ください。」

エリザベート:「嫌じゃ!嫌じゃ!空を飛びたいのじゃ!」


と頑なに言い張る姫様に困り果てるメイド達。

僕は思わず口をはさんだ。


よしひろう:「僕を信用してください。」

よしひろう:「僕に姫様をお預けください。」


アスター隊長も同調してくれた。


アスター隊長:「よしひろう君なら大丈夫です。私が保証します。」


しぶしぶ飛ぶ事を承諾するメイド達。

姫様を連れて飛ぶ事になった。


よしひろう:「姫様、僕の前に立ってください。」


僕の前に立つ姫様。


よしひろう:「両手を横に広げてください。」


両手を広げる姫様。


よしひろう:「御身に触れる事をお許しください。」


そう言うと僕は姫様の脇腹を掴んだ。


エリザベート:「あひゃひゃひゃひゃ!」


急に笑い出すエリザベート。


エリザベート:「くすぐったいではないか!馬鹿者!!」


と言うや否や僕のお腹に姫様の拳がめり込んでいた。


その場で悶絶する僕。


エリザベート:「違うであろう。もっとこう…」


と僕の腕を胸の上に手繰り寄せ抱き締めるような格好をとらせる姫様。

腕に仄かに感じる胸の膨らみにちょっと反応し始める僕の息子。

しばらくその柔らかな感触を堪能していると…


エリザベート:「何をしているのじゃ?」

エリザベート:「飛ばんのか?」( ˘•ω•˘ )


と怪訝そうな顔をする姫様。

ハッと我に返る僕。

姫様を抱き締め、ゆっくりと上昇を始める。


エリザベート:「浮いておる!」


ある程度上昇すると、姫様があっちに行きたいと指差してきた。

その方向へ向かい飛翔する。

スピードは時速20kmくらい。

両手を広げ風を一身に受ける姫様。

街の上空を一周し、次にエアリスの森へと進む僕と姫様。

横を見ると巣へと戻る鳥の一群が羽ばたいていた。


エリザベート:「もっと高く飛んで!」


言われるまま高度を上げる。

目の前には沈み行く太陽と夕焼け。


よしひろう:「綺麗だ。」


と呟くと、姫様もうんと頷いた。

姫様の横顔を見ると、涙を浮かべていた。

空を飛ぶ事の楽しさと自由さを知ったからだろう。

そう、正にこれなのだ。空を自由に飛べるということの醍醐味は。

僕自信もそれを忘れかけていた。

姫様に問いかけた。


よしひろう:「楽しいですか?」

エリザベート:「うん。」

よしひろう:「満足できた?」

エリザベート:「うん。」


ゆっくりと出発地点に舞い降りる僕と姫様。

降り立った瞬間、姫様が僕を抱き締めてきた。

姫様は僕の胸の中で泣いていた。

姫様から、今夜は来なくてもよいと言われ、その場で解散となった。

宿屋へと帰っていく姫様一行を手を振って見送る僕。

いつもの城門前の石に座り、夕焼け空を眺める。

一番星はまだ見えない。

意識が遠くなってきた。


目が覚めた。

横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。

慌ててそれを止める僕。

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