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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
75/160

同期の絆

香月よう子side

 紅羽は、学内のカフェテリア「サティア」で、ぼんやりと考え事をしていた。

 今度の秋の学祭「鳴治祭(めいじさい)」で、紅羽の所属する文芸サークル「鳴治館大学文士会」では、臨時の機関誌「清流(せいりゆう)特別号」を発刊し、一冊500円で販売する。

 その為に、新たに原稿を書き下ろさなければならないのだが、それがうまくはかどらない。

それで、レポート用紙を前に、ミルクティーを頂きながら、構想を練っているところだった。


 その時。

「紅羽ちゃん!」

 紅羽を呼ぶ声がした。


 はっと顔をあげると、

「心乃ちゃん……」

「文士会」同期で文学部一年の長谷川(はせがわ)(ここ)()が、紅羽の席の前に立っていた。


「なんだか難しい顔をしているわね」

「うん……。今度の「清流特別号」の原稿がね……」

「うまくいってないの?」

「うん……」

 紅羽は素直に言った。

「私で良ければ、相談に乗るわよ」

「え? いいの? 心乃ちゃん?!」

「同じ同期の仲間じゃない。ここの席、同席してもいいかしら?」

「勿論!」

 そうして、心乃は紅羽の前の席に座った。


「あら。でも、プロットのようなもの立てているし、少しは書けているみたいじゃない?」

心乃は、レポート用紙を見て言った。

「うん……。紘子(こうこ)先輩が、お題を出していてくれて」

「ふうん」


 それは、童話だった。

 十二歳の伯爵令嬢ルフィが、病弱だった母・ルイーザの死に際し、ルフィ七歳の時にルイーザから贈られた誕生日プレゼントであるオルゴールを、ルフィの隠れ家である屋敷の屋根裏部屋で、悲嘆に暮れながら一人聴いている……

そういった内容だった。


「なかなか良く書けていると思うわよ」

「でも、ラストをどういう風に持っていけばいいかわからなくて……」

「そうねえ……。私なら……」

 心乃はひととき考え、それから紅羽にアドバイスをした。

 それは、紅羽の元の原稿を尊重した上で、しかも実に的を射たものだった。


「心乃ちゃん! すごい!!」

 紅羽は興奮したように、心乃のその的確なアドバイスに感嘆した。

「童話は、私の一番好きで得意分野だから」

 心乃は、少し照れたように言った。

「でも、これなら私、このお話、最後までちゃんと書けそう!」


「そうね。紅羽ちゃんならきっとこれ、良い作品に仕上げられると思うわよ。何しろ処女作であの「都会の雨」を書いたんだもの。才能あると思うわ」

「そ、そんな……才能なんて……。高校時代も文芸部に入っていたのに、読むだけで何にも書けなくて……」

紅羽は俯いて言った。

「全て紘子先輩のお陰、てわけね。貴女の才能を引き出して、導いてくれたこと」

「うん……。紘子先輩のことは、心から尊敬しているし、感謝してもしきれない」

紅羽はしみじみと呟いた。

「でも、やっぱり、紅羽ちゃんの努力と才能あってのことよ。自信を持って!」

 心乃は一言、明るく、紅羽を励ますように言った。


心乃ちゃんのようなサークル仲間がいて本当に良かった……


「文士会」に入部し、紘子先輩の存在があって、そしてまた心乃という仲間に恵まれたことを、紅羽は心から感謝した。


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