↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
67/160

お佳の特技

香月よう子side

 お昼休み中。

「学食」で食事を済ませ、喋っているいつもの四人。

 

 しかし、

「あ、もう後十分で「アセンブリー」の時間ね。私、「文士会」行かなきゃ!」

「俺も硬式テニス」

「俺は、いつも通り、「LL教室」で映画でも観るか」


 そして、

「お佳は「サティア」にお茶しに行くんだろ?」

とのうのっちの言葉に、すぐには答えなかったお佳。


「お佳?」

「あ…、私は。「音楽鑑賞室」」

「はあ?」

「遥人先輩から誘われたの。「ピアノ部」に入らないか、て」

「はあ? 「ピアノ部」?! 何するとこだよ?」

「グランドピアノを部員かわるがわる好きに弾きながら、音楽の話をするクラブ……みたい。私も今日が初めてだから、よくわからないの」


 顔を見合わせるその他三人。

「ま、まあ。楽しんで来れればいいわね。どういう感じだったか、また聞かせてね!」

と、場を取りなす紅羽。

「ええ」

 お佳は、曖昧に笑った。




「音楽鑑賞室」の前に立っているお佳。


(どうしよう…… 遥人先輩は「気軽においで」て言ったけど……)


 その時。

「やあ、岡田さん!」

 振り返ると、遥人先輩が近づいてくる。

「よく来てくれたね。さ、入って」

 そうして、お佳は遥人と一緒に「音楽鑑賞室」の中に入った。


「部長! おそーい!」

 中には、男女合わせて7、8名ほどの部員がいた。

「音楽鑑賞室」の室内はかなり広く、防音設備が施してある。

 一番奥に、「YAMAHA」のグランドピアノがあり、その前に長テーブルと折り畳み椅子がいくつか置かれている。

 部員は、ピアノにもたれかかったり、テーブルの前の椅子に座っている。

 テーブルの上には、1.5リットルの「午後の紅茶」や、軽いスナック菓子、クッキーなどのお菓子が置いてあった。


「…て、あれ? 彼女……」

 男子部員の一人が呟いた。

「そう。今年のミス・キャンの誉れ高い「岡田佳」さんだよ」

「せ、先輩……!」

 お佳は、さすがに委縮した。


 しかし、

「岡田さん。初めまして! ようこそ我が「鳴治館大学ピアノ部」へ!」

「岡田さん、どのくらい弾けるの?」

「何でもいいから、一曲弾いてみてよ」

 先輩なのか、同じ新入生なのかわからないが、皆が口々に好き勝手を言う。

 その雰囲気からすれば、およそ「ピアノ部」という名称から連想される堅苦しさのようなものはまるでない。


「私、下手ですよ」

 ようやく、お佳が自分らしさを取り戻して言った。

「ピアノの経験はあるの?」

「まあ…。3歳の頃から習ってましたけど」

「いつまで?」

「ついこの前まで……高校卒業までです」

「それなら、かなり弾けるね。お得意を一曲是非!」

 押しの強いピアノ部員。

 お佳は覚悟を決めて、グランドピアノの前に座った。


 一息、深呼吸をする。

 そして。

 おもむろに奏で始めた。


「これは……」

「ああ」


 部員が皆、真剣にお佳の演奏に聴き惚れる。

  

 最後の一音を弾き終え、束の間の静寂。

お佳がピアノから離れ、一礼する。

 そして、部員たちから盛大な拍手が沸き起こった。


「すごかったね! 今の「テンペスト」第三楽章!」

「ああ。これぞまさにベトソナ(ベートーヴェンのピアノソナタ)だな」

 全部員が感動して、お佳のピアノを褒め称えた。


「岡田さん、やっぱり弾けるじゃないか。自分は全く、みたいなこと言ってたけど」

遥人が苦笑交じりにそう言った。

「でも……音大に行かれるような方々と比べれば、全然です」

「それは、そもそも比較対象が違うよ」


「ねえ、岡田さん。他に何が得意なの?」

「好きな曲、作曲家は?」

 部員がお佳を囲む。


「好きなのは、ショパン、ドビュッシー、ラヴェル、バッハ、モーツアルト、ベートーヴェンです」

「おお! さすが懐深いね」

「ねえ、他にももっと弾いてよ!」


 すっかり、ピアノ部員の関心を集めたお佳。


 その後も結局、ドビュッシーの「月の光」、イ短調のモーツアルトのソナタ、ショパンの「別れの曲」、リストの「愛の夢」を披露し、すっかりピアノ部員の心を掴んだ。


 そして何よりピアノ部部長の遥人の推しで、お佳は結局、「鳴治館大学ピアノ部」に入部することになった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。