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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
59/160

偶然なのか?必然か……

香月よう子side

 そうして、一夜が明けた。


「おはよう。お佳」

「……はよう。紅羽」

 ベッドの中で、まだ半分夢の中にいる(てい)で、お佳は言った。


「早いわねえ、紅羽。もう準備してるの?」

 紅羽は、まだナイティーのままだが、メイクを始めているところだった。


「紅羽のメイク道具、可愛いじゃない」

 お佳が、しげしげと紅羽の化粧ポーチの中を見つめて言った。

「え? お佳が使ってるような高級ブランドじゃないわよ」

 それは、ドラッグストアで売っている「CANMAKE(キヤンメイク)」のピンクのクリームチークに、ピンク・ブラウンの二色アイシャドウ、グロスだけちょっと背伸びした「JILL(ジル) STUART(スチユアート)」のロゼピンクだった。


「そういうプチプラアイテムでも、紅羽が使えば効果が違うわね」

「やだ、お佳。言っても何も出ないわよ」

朝から、女二人で盛り上がる。


 お佳もメイクを済ませ、昨日の装いとは違う紺のボーダーTシャツに、白い七分丈のクロップドパンツに着替えると言った。

「紅羽のリネンのワンピ、可愛い~!」

 それは、麻の赤いタータンチェックのシンプルなミモレ丈のワンピースだった。

「ふふ。これ、今年の夏一番のお気に入りなの」

 紅羽が、嬉しそうに笑う。


 メイク道具や私服などのあれこれも、女同士の旅の楽しみの一つだ。


「竣にLINEいれたら、準備出来てるって。チェックアウトの準備して、食堂前で落ち合おう、て」

「あの二人にしては、上出来じゃない。ま、竣がうのっちのお尻叩いたのが目に見えるようね」

 くすくすとお佳が笑う。


 その笑顔は何の混じりけもなく、すっきりとした表情だった。

 それを見て、紅羽は内心、この海に来て本当に良かったと思う。


「紅羽! お佳。おはよう!」

「おはよう! 竣。うのっち」


 四人は、午前八時半前に食堂まで来た。


「ここの朝食ビュッフェは期待できるらしいぜ」

「へえ。どんなんかなあ」

「本格フレンチに、スイーツもケーキだけで十五種類あるらしいから、紅羽たちはそっちをメインに楽しんでもいいと思うよ」

「うわ。フランス料理にケーキバイキング、てわけ? そりゃ、楽しまないとね」

「お佳はダイエットしてないのか?」

「ダイエットはメリハリが大事なの。楽しむ時は楽しまなきゃ!」


そうして、四人は約一時間かけて、贅沢な朝食ブッフェを味わった。

 焼きたてのクロワッサンにベーグル、ローストビーフとポトフは料理の中でもとりわけ美味しく、スイーツも種々のケーキに三種のアイスクリーム、新鮮なメロンやオレンジのフルーツポンチと、とてもバイキングとは思えない極上の味だった。

 四人は盛り上がりながら、存分にそれらを堪能した。


 チェックアウト時間の午前十時前に、四人はホテルを後にした。


 予定通りの帰りの電車に乗り込み、目の前を海辺の風景が通り過ぎてゆく。


「ああ。いい二日間だったわね」

 お佳が窓枠にもたれかかり、外の風景を眺めながら、そう言った。


 これで、ちょっとはお佳の傷心が癒えてくれればと、三人が三人共、黙ってはいるが同じ想いだった。


「あ……」

「どうしたの? 竣」

「いや。何でもない。悪い」

 竣は、とっさに取り繕った。


 その時、初めて竣は気付いたのだ。


 行きの電車では、紅羽とお佳、竣とうのっちが隣同志だったのに、帰りの今、竣の隣には紅羽、うのっっちの隣にはお佳がいる。


 それが単なる偶然なのか。


 竣には判断がつかなかったが、四人がごく自然にそう振る舞っていることを、嬉しく思う竣だった。




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