竣と紅羽の未来への絆
菜須よつ葉side
鳴治館大学の学位授与式も無事に終わり、思い出の詰まった講義室などで記念撮影もほぼ済ませた……。
そして、いよいよお別れの時──
「紅羽、ちょっと時間いいかな?」
竣が紅羽に声を掛けた。
お佳もうのっちも子供じゃない。
何となくこのあとのことは想像出来たのだろう。
「それじゃあ、俺ら帰るわ」
「じゃあね。あっ、何かあったらいつでも連絡してよ? 何もなくてもいいけど」
ふたりはそう言い残して帰って行った。
きっとお佳は、先輩が迎えに来ていて、お互いに大切な時間を紡いでいくのであろう。
竣と紅羽は少し歩き、誰もいない講義室へとたどり着いた。
「なんだかあっという間の学生生活だったなぁ」
懐かしそうに色々なことを思い出す紅羽。
「なぁ」
「あのさぁ」
同時だった──
それが何だかうれしくて、思わず笑みを溢すふたり──
「紅羽。今まで傍で支えてくれてありがとな」
竣が真剣な表情で感謝を伝えた。
「私も……同じこと言おうと思ってたんだよ。支えてもらったのは私の方。竣、いつも助けてくれてありがとう」
広い講義室に、瞬きほどの静寂が訪れ──
「俺、紅羽とはこれからも支え合っていきたいと思ってる。紅羽? これからも一緒にいて欲しい。俺と……付き合ってくれないか?」
素直な言葉で、心の中に伏せていた思いの丈を伝えた竣。
紅羽は目を閉じ、胸に手を当てると、ギュッと服ごと握った。
そして──
「……私も、竣とずっとずっと一緒にいたいよ。こんな私だけど、これからも……よろしくお願いします」
頬に感情を流す紅羽。
お互いに4年間想い続けたことが、実を結んだ瞬間だった。
カツカツカツという軽やかな靴音がひとつ、ふたりだけの講義室に響き渡る。
外は桜──
これから教師として歩んでいく未来、支え合う人生を決めた竣と紅羽の門出を祝うかのように、小さく美しい花が咲き誇っている。
未来に繋がる絆を心に、ふたりはこの先も歩んで行くのだろう──




