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私達の様子を見て顔面が引き攣っている乙女さん。
そりゃあ同級生達がずぶ濡れで胸触ってたら、そうなるよね。
「いや……えぇ? まじか……」
完全にドン引きですどうもありがとうございました。
バッと手を急いで花野子の胸から剥がして、弁解を試みるが乙女さんは全く聞く耳持たずで、ただただ心の距離が爆速で離れていくばかり。
「乙女さんあのね!」
「ひぃぃ、近寄らないでケダモノ!!」
私が微塵でも動こうものなら、反発する磁石のごとく青ざめている乙女さんが後ずさる。
「まぁまぁ、初花ちゃん。乙女ちゃんは話が通じる相手じゃないから」
お前もな!!!!
こんな状況でもニコニコ微笑む花野子が憎らしい。憎らしいほどに可愛いけれど、憎らしいほどに憎らしい。
「待たせたね、剛鬼さん。おや……」
するとふいに現れたのは初老の男性。シックな灰色のスーツを着こなした英国風(英国なんて知らないけど) の白髪混じりの男が、私と花野子を見遣って目を丸くする。
「お友達かな?」
ジェントルマンの問いかけに対して、乙女さんは「いえ、存じ上げませんわ」と笑顔で一蹴した。
すぐさま私達に「黙ってろ」と殺意の波動にて牽制する。
「おじ様、そんな事よりも雨が降ってるらしいので早く参りましょう? お車も待たせていますわよ」
「あぁ、そうだね。お嬢さん達、お気をつけて」
乙女さんは紳士の腕にするりと自身の腕を絡ませると、私と花野子に別れを告げる紳士を多少強引に引っ張って連れ去る。
すると、ちらっと振り返り「殺す」と口パクで一言残し去っていった。




