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帰還勇者ミナトのVRMMO戦記 ~剣も魔法も本物を知っているので、ゲームでも最強です~  作者: バモス
第二章 帰還勇者、初めてのダンジョン攻略

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第4話 地下遺構の調査報告と、帰還勇者の罠対策

東草原の地下遺構から無事に帰還した俺――《ミナト》たちは、夕暮れの街道を歩いていた。


初めてのダンジョン探索で遭遇したスケルトン、古い文字が刻まれた壁、そして通路に仕掛けられていた罠らしき石畳。短時間の探索だったが、収穫は十分にあった。


「ねえ、ミナト。あの床、もし踏んでいたらどうなってたのかな?」


隣を歩いていたユウキが、少し不安そうに尋ねてきた。


「壁に小さな穴が並んでいたから、矢か何かが飛び出す仕掛けだった可能性はあるな。ただ、実際には作動させていないから断定はできない」


「うわぁ……踏まなくてよかった」


ユウキが胸を撫で下ろすと、シルフィーが穏やかに微笑んだ。


「隼人が気づいてくださったおかげですね。でも、次も同じように発見できるとは限りません」


「ああ。だからこそ、対策が必要なんだ」


異世界で冒険していた頃も、ダンジョンの罠には何度も苦労させられた。敵と違って気配を感じ取れないものも多く、熟練した冒険者でも油断すれば命を落とす。


もっとも、ここはゲームの世界だ。現実のように命を失うわけではないが、戦闘不能になれば復帰後のペナルティがある。


それに、仲間が傷つくところを見たいわけでもない。


俺たちは始まりの街へ戻ると、そのまま冒険者ギルドへ向かった。


受付では、いつものようにリーナが冒険者たちの対応をしていた。


「お帰りなさい、ミナトさん。皆さんもご無事で何よりです」


「ただいま。地下遺構の探索結果を報告したいんだ」


俺はギルドから支給された《探索記録板》を差し出した。


リーナは記録を確認しながら、時折驚いたような表情を浮かべる。


「最初の広間でスケルトンを討伐……左側の通路では未確認の石板と、罠の可能性がある床を発見されたのですね」


「ああ。危険だと思ったから、それ以上は進まなかった」


「適切な判断だと思います。こちらの情報は専門の調査員にも共有させていただきますね」


リーナは記録板を専用の装置へ置き、情報を転写した。


すると、俺たちの視界に通知が表示された。


『《東草原・未確認地下遺構の探索》調査報告を受理しました』


『初回調査報酬を獲得しました』


『経験値を獲得しました』


経験値は増えたが、レベルアップには至らなかった。


「やっぱり、Lv6まではまだ時間がかかりそうだね」


ユウキがステータス画面を見ながら呟いた。


「まあ、焦る必要はないさ。今回の目的は調査だったからな」


俺がそう答えると、リーナが一枚の書類を取り出した。


「それと、発見された罠についてですが、ギルドの専門職員に確認していただくこともできます。少々お待ちいただけますか?」


「もちろん。お願いするよ」


しばらくすると、奥から一人の男性が現れた。


年齢は四十代ほどだろうか。短い茶髪に鋭い目つき、腰には工具の入った革袋を下げている。


「お前たちが罠を見つけた冒険者か?」


「ああ。俺がミナト。こっちはシルフィーとユウキだ」


「俺はガレス。ギルドで遺跡の仕掛けや罠の調査を担当している」


ガレスはそう名乗ると、探索記録板に映し出された石畳の画像を確認した。


「ほう……こいつはなかなか古い仕掛けだな」


「分かるのか?」


「完全には分からんが、床の沈み方と壁の穴の位置から考えると、踏み板式の射出罠に見える」


ガレスは画像を拡大し、壁の穴を指さした。


「この穴から矢や針が飛び出す仕組みかもしれん。ただし、内部の機構が生きているかどうかは現地で調べないと分からん」


「なるほど。やっぱり触らなくて正解だったな」


「そういうことだ。特に古い遺跡では、壊れかけた罠が予想外の動きをすることもある」


ユウキが真剣な表情で頷いた。


「じゃあ、次に行く時はどうすればいいんですか?」


「まずは足元と壁をよく観察することだ。それから、怪しい場所には不用意に近づかない。罠を発見したら位置を記録し、解除できないなら迂回するか引き返す」


ガレスの説明は、俺が異世界で学んだ基本とほとんど同じだった。


「解除用の道具もあるのか?」


「ああ。ただし、道具を持っているだけで解除できるわけじゃない。知識と技術が必要だ」


ガレスは腰の革袋から細い金属棒と小型の工具を取り出した。


「こういう道具を使って内部の機構を調べることもあるが、素人が適当に触れば逆に作動させる危険がある」


「それなら、俺たちはまず発見と回避を優先した方がよさそうだな」


「賢明だ。必要なら、罠の調査を専門とする冒険者と組むのも一つの方法だぞ」


俺は頷いた。


今のパーティーは剣士、魔法使い、僧侶の三人。戦闘面ではバランスが取れているが、探索技能についてはまだ不足している部分も多い。


今後、本格的にダンジョンを攻略するなら、そうした弱点も補っていく必要があるだろう。


ガレスに礼を告げた後、俺たちはギルドを出て道具屋へ向かった。


店内には冒険用の道具が所狭しと並んでいる。


「今日は何を買うの?」


ユウキが尋ねてきた。


「まずは予備のランタンと燃料。それから、通路に目印を残せる道具が欲しいな」


俺は棚を見ながら答えた。


地下遺構では帰還用の転移設備が使えないため、道に迷わないことが重要だ。


地図を作るだけでなく、分岐点を確認する方法も用意しておきたい。


「こちらの《探索用チョーク》はいかがですか?」


店員が差し出したのは、小さな箱に入った白いチョークだった。


「壁や床に目印を書けます。ただし、ダンジョンによっては一定時間で消えることがありますので、地図と併用してください」


「なるほど。それなら一箱もらおう」


俺たちは探索用チョーク、予備のランタン、燃料、携帯食料を購入した。


さらに、回復ポーションとMP回復ポーションも補充しておく。


シルフィーは購入した道具を確認しながら、嬉しそうに微笑んだ。


「これで前回より安心して探索できますね」


「ああ。ただ、準備が整ったからといって油断はできないけどな」


「もちろんです」


ユウキも頷いた。


「次はもう少し奥まで進めるといいね!」


「そうだな。でも、危険な罠があったら無理に進まない。それだけは約束してくれ」


「はーい!」


元気な返事に、俺は思わず笑ってしまった。


その頃、株式会社アストラル・リンクの運営監視室では、俺たちの探索記録が確認されていた。


モニターには、地下遺構の広間と左側通路の映像が映し出されている。


「ミナトさんたち、罠を作動させずに発見したんですね」


美波が感心したように呟くと、隣にいた竹田が頷いた。


「床のわずかな違いに気づいていますね。探索補助のスキルを使った形跡もありません」


「実際の経験があるような動きですよね」


そこへ主任の宇喜多が近づいてきた。


「地下遺構の調査状況はどう?」


「入口付近の情報が少しずつ集まっています。ただ、まだ全体構造は判明していません」


宇喜多は画面を確認し、静かに頷いた。


「プレイヤーたちの判断で探索が進んでいるなら、こちらから攻略に介入する必要はないわ。引き続き、不具合がないか監視を続けて」


「了解しました」


美波は再びモニターへ向き直った。


一方、そんな運営側の様子を知らない俺たちは、宿屋の一階で次回の予定を相談していた。


「次は右側の通路も調べてみるか?」


俺が尋ねると、シルフィーが少し考えてから答えた。


「そうですね。左側には罠がありましたから、右側の状況も確認しておきたいです」


「でも、右側にはスケルトンがいたんだよね?」


ユウキが確認する。


「ああ。だから、戦闘になる可能性は高い。まずは入口付近を調べて、危険そうなら戻ろう」


「うん、それなら安心だね!」


俺たちは翌日の探索方針を決め、ログアウトの準備を始めた。


地下遺構には、まだ分からないことが多い。


だが、一度にすべてを解き明かす必要はない。


仲間と協力し、少しずつ情報を集めながら進んでいけばいい。


俺は宿屋の窓から見える街並みを眺め、静かに微笑んだ。


こうして、俺たちの初めてのダンジョン攻略は、次の探索へ向けて着実に進み始めていた。


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