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 この世界は、私たちが毎日くらしている現実と同じ世界。

 町や学校、家での生活も変わらず、人々はふつうの日々を送っている。

 朝になれば学校や仕事へ行き、夜になれば家に帰る生活。

 その当たり前の中に、ほとんどの人が知らないもう一つの力がひそんでいる。


 それが鬼道きどうとよばれる力。

 鬼道とは、人の体の中にある見えない力で、心や命のエネルギーのようなもの。

 日本では鬼道、中国では気、イギリスでは魔法と呼ばれ、名前はちがっても同じものを指している。

 この力はだれでも持てるわけではなく、選ばれた子供だけにあらわれる特別なもの。


 その鬼道を使って不思議なことを起こす技が鬼術きじゅつ

 鬼術は鬼道を使い、火を出したり風を操ったりする力。

 日本では鬼術、中国では仙術、イギリスでは魔術と呼ばれる。

 鬼術はその人の心や考え方、毎日の生活によって使える力が変わってくる。


 しかし、そんな鬼道のちからには大きな問題が有る。

 鬼道は年を重ねるごとに強くなり、およそ十八歳ごろに一番強くなる性質を持つ。

 強くなりすぎた力をうまくあつかえない場合、体や心に大きな負担がかかるのだ。  

 昔はこの力の存在が知られていなかったため、鬼道を持つ人は組織のリーダーに成るか、心をこわし怖い存在としてあつかわれ、命を落とすこともあった

 そのため日本では飛鳥時代から、鬼道を持つ子供たちはある時期になると特別な場所へ行く事になる。

 まぁ昔は、すでに上手く鬼道をあつかえていたり、事情があって断る子供も多かったが……

 今では三月の初めごろ、家の玄関に一本の破魔矢はまやが届く。

 その矢には手紙がついており、それが招待状だ。

 今では招待の拒否は許されない。

 そして四月の初めの日曜日の朝。

 選ばれた子供たちは八咫烏やたがらすく石の船――天磐船あまのいわふねに、着替えや日用品の入ったリュックとともに、強制的に転移させられる。


 天磐船はふつうの人には見えない。

 不思議な力で隠されているためだ。

 中は昔の貴族の大きな屋しきのような造りで、その船で空をこえて進んだ先に高天原たかまがはらがある。

 空にうかぶ島で有り、鬼道を持つ子供たちが力のあつかい方を学ぶ学校がある場所。

 子供たちは生活をしながら、自分の力を少しずつ学んでいく。



 日本で鬼道の力がはじめて書かれたのは、中国の書物『魏志倭人伝』に出てくる卑弥呼ひみこという人物。

 鬼道の力で人々をまとめたと考えられている。

 そして魏志倭人伝の写本を読み、鬼道の力を持つ人たちを守るために高天原を作ったのがそう……

 厩戸皇子こと聖徳太子。

 太子は自ら鬼道を持っていて、この力の危うさを知っており、子供たちが安全に学べる場所を用意した。

 こうしてこの世界には、ふつうの人が知らないもう一つの世界が造られた。

 見えない所で、鬼道を持つ子供たちは自分の力と向き合いながら生きている。




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