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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
5章 モブキャラ、風紀委員会と接触する

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90/100

第90話 モブキャラ、修行する

「で、勝算は?」

「半々かなぁ。久しぶりに修行しないと」

「相変わらず行き当たりばったりね……」


 レアに呆れられてしまう。

 思い通りに上手くいくことなんて、そうそうない。

 アドリブで乗り越えてこそ、人生は面白い。


 ……本当はもう少しスムーズに進むと思ってたんだけどな。転生してからトラブルが多すぎる。


「大丈夫だよっ。ダーリンなら、あんなお漏らし委員長に負けないって♪」

「誰がお漏らし委員長ですか!! お姉さんに負けて泣きじゃくってたくせに!!」

「な、なんでそれを……!?」


 風紀委員会の連中が、どこかに潜んで情報を得ていたんだろう。

 ってことは、俺の計画も全部筒抜けか……まぁいいや。


「起こしてしまったものは仕方ありません。ですが、ゼクス・バーザム」

「ん?」

「貴方に遠慮はしません。徹底的に叩きのめします」


 覚悟のこもった視線で俺を見つめ、ナターシアは部屋を後にした。


「ゼクス」

「ん?」


 と、リーンが俺の袖をちょいちょいと引っ張る。


「結構大変だよ」

「大変? 俺が負けると思ってるのか?」

「そうじゃない。委員長は、すごく強いから」


 リーンがそうまで言い切るってことは、相当だな。

 流石に固有武器や戦術は大きく変わってないと思うが……一応聞いてみるか。


「二種類あるんだろ? 固有武器が」

「……流石。よく知ってるね」


 大当たり。伊達に原作をやり込んだわけじゃない。


「固有武器が二種類? どういうことですの?」

「そのままの意味だ。鞭と弓――それがナターシアの固有武器」

「えぇ!? 二種類あるなんて聞いたことないよ!?」


 武器に詳しいサーシャがここまで驚くってことは、この世界でも二種類の固有武器はかなり珍しいらしい。


「デュアルウェポン。風紀委員長になるだけあって、才能にも恵まれているよな」


 原作では中盤と終盤で立ちはだかる敵として登場した。

 二種類の武器を風魔法で自在に操るその姿――あれは、かなり厄介だった。


 ……なんで戦ったんだっけな。

 確か主人公がナターシアの胸を揉んでしまって……どこのエロゲだよ。まぁ、ゲームだけどさ。


「対策はあるのかしら?」

「武器が増えただけ、と考えればいい。簡単だろ?」

「そんな、あっさりと……」


 確かに攻撃手段は多い。だが、対策ができれば無意味だ。

 多いことが正義じゃない。倒せなきゃ、意味がない。


「そういやナターシアを万全にしないと……神聖水でも使ってやるか」

「神聖水を!?」

「これさえあれば問題なし。約束も守れて一石二鳥だ」

「依存させるとは言いましたが、ここまでとは……」


 貴重な道具も、使い方とタイミングがすべてだ。

 資産として抱えるより、こういう場面で使う方が面白い。


「で、ゼクスはどうやって鍛えますの?」

「とりあえず魔力充填からだな」

「魔力充填?」


 その場にいた全員が息をのむ。


「さらに凝縮させた魔力充填――“魔力神填”を使いこなす」


 地道に修練を重ねてきた、あの秘儀。

 ついに、それを披露する時が来た。


 ◇◇◇


「魔力神填とは?」

「魔力充填をさらに凝縮させたものだ。充填のままじゃスピード特化にしても追いつかれるからな」

「なるほど……確かに速いけど、見えますわね」


 その時点でおかしいんだよな。

 魔力充填は本来、ステータスを尖らせることに特化した魔法。

 その上がり幅は、ゲーム内でもトップクラスだったはずだ。


 だが――インフレのせいか、全員余裕で見切ってきやがる。

 だから、上位互換が必要だった。


「というか、修行してましたのね」

「作業しながら魔力のコントロールをしてた。魔力神填に耐えられる身体を作るためにな」

「あぁ……どうりで貴方の身体から魔力を感じる機会が……」


 もう二ヶ月くらいになるか。

 日課のトレーニングと、実務中の魔力訓練を繰り返す。


 魔力神填は強力だが、同時に危険な魔法だ。

 存在そのものがイレギュラー――だからこそ、時間と身体が必要だった。


「どれどれ、早速……」


 周囲はスライムたちが暮らす、何もない訓練部屋。

 リーンの治療もあるし、何か起きても対応できる。

 俺は右腕に魔力充填を施し、その上にさらに魔力を流し込んだ。


「っ!!」

「ちょっと!?」


 ……が、失敗。

 魔力は暴走し、皮膚から血が吹き出した。


「ってぇ……やっぱコントロールが難しいな」

「このままだと身体を破壊されますわよ!? というか、このレベルの魔法を使おうとしてますの!?」

「じゃないとナターシア戦はキツい。まぁ、ずっと魔力神填を使うわけじゃないし……」


 幸い、傷は魔力充填で回復できる。

 魔力回復も神聖水がある。


 つまり、気力と時間が続く限り――訓練はできる。


「レア、外から魔力の流れを見てくれ。多分、俺だけじゃわからないこともある」

「そうねぇ……魔力の放出が多いから、抑え込む分に魔力を回した方がいいわよ」


 なんと的確な指導。

 魔法に関しては、さすがエキスパートだ。


「肉体が弾け飛ばない程度に頑張りますか……」

「相変わらず無茶ばかりしますわね……」


 無茶ばかりの環境にいるんだ。仕方ない。

 俺はひたすら、魔力神填のトレーニングを続けた。


 失敗しては傷を治し、

 失敗しては傷を治し、


 それでも、確実に前進している感覚がある。

 何より――試行錯誤するのは、楽しい。

 魔法に関するトレーニングなんて、前世にはなかったからな。


「……何故笑っていますの?」

「面白いから」


 ワケがわからないと呆れられながら、修行の時間は過ぎていった。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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