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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
5章 モブキャラ、風紀委員会と接触する

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第89話 モブキャラ、挑む

「お前らは何もわかっていない!! 彼女の意志を尊重せず、勝手に行動するとはどういうことだ!!」

「なんだと……!?」

「貴様こそ何がわかるって言うんだ!!」


 燃え続ける怒り。

 それに構わず、俺は堂々とした態度を崩さない。


「や、やばいー!!」

「ゼクス様の元に行かせたらダメだよー!!」

「けど無理!! 限界!!」


 破教委員会の信者たちですら抑えきれず、今にも襲いかかろうとしている。

 その時、俺はニヤリと微笑みナターシアの方へ振り向いた。


「そうだろう、ナターシア!! 全部言ってしまえばいい!!」

「あ……えっと……」


 軽く会釈をした後、気まずそうに前へ踏み出すナターシア。

 視線は定まらず、口もなかなか開かない。


「なんだなんだ?」

「委員長の様子がおかしいぞ?」


 風紀委員たちがざわつき始める。

 被害者なのに言い返さないのはなぜか。

 本来なら、力では圧倒的なはずだ。


 ――だが、現実は違う。


「俺たちを裏切っても構わんぞ? 相応の対価は払ってもらうが」

「う……ううう……」


 敵に回れば支援も取り消す。

 つまりナターシアは、風紀委員会と破教委員会の板挟みになっていた。


 善意で動く風紀委員たちに顔を背けるわけにはいかない。

 だが風紀委員に賛同すれば、ここ二週間で手に入れた穏やかな日常を失う。


「……昨日の夜はどうだった?」

「へ!?」

「そのまま言えばいいんだよ。楽になりたかったらな」


 脅しを含んだ甘い言葉。

 ヤツらを納得させるには、風紀委員長自ら語るしかない。

 だから利用させてもらう。彼女の日常を対価にして。


「わ、私は……」


 たどたどしく、だが徐々に声のボリュームを上げていくナターシア。


「昨日っ!! とっても気持ちよかったですー!!」


 そして昨夜の感想を、声高らかに叫んだ。


「いい子だ。これで支援も継続だな」

「私は何をしてるのですか!? 本当にバカなんですかね!? バカなんですよぉ!!」

「落ち着けって」


 頭を抱えてその場にうずくまるナターシア。

 ここまで依存させておいてよかったな。


 快楽以上に強い薬は存在しない。

 現にナターシアは破教委員会と俺、どちらの虜にもなっている。


「あらあら、風紀委員長様がそんなことを……ずいぶん変わりましたわね」

「黙りなさい、レア・スカーレット!! あなたも子犬みたいに喘いでたくせに!!」

「そ、そんなわけありませんわ!! 妄言はよしてください!!」


 俺に抱かれて果てたナターシアをクスクスと眺めていたレア。

 だから、ついでに手を出してみた。

 初めはヤダヤダと駄々をこねていたのに、身体に触れるたび、次第に素直になって――


「貴方が悪いんですわ!! この女に弱みを握らせるなんて!!」

「そうか? ベッドの上のレアは美しくて、可愛げがあったと思うが……」

「そ、そういうのではなく!!」


 全く、と胸元を軽く突き、そっぽを向くレア。

 後でお姫様の機嫌を直さないとな。


「委員長、楽しそうだな……」

「けど脅されたのは事実だし……」

「わけわかんねー!!」


 最も動揺していたのは風紀委員たちだった。

 敬愛する委員長が破教委員会の肩を持つ――その事実に、誰もが言葉を失っていた。


(このまま放置とはいかないんだよな)


 代表の情けない姿に反発が生まれる可能性がある。

 風紀委員会をバラバラにするにはまだ早い。

 潰したい組織ではあるが、利用できるところは利用する。


「みんな、派手にかましていいか?」


 確かめるように、ヒロインたちの方へ目を向ける。


「何を言っても聞かないでしょ」

「ダーリンの言うことなら、なんでも従うよ♪」

「今度は何をするの? 楽しみ」


 穏やかな返事を前に、俺はフッと頬を緩ませた。


「え、何? 何をしようとしてるのですか?」

「楽しみにしてなさい。ウチの代表がただ者じゃないってことを」


 破教委員会も、まだ危うい。

 できたばかりの組織。

 元は評判の悪かった聖教委員会の後継。

 しかも代表は一年生という、前例のない体制。


 ――だからこそ、ここで示してやる。


「風紀委員に告げる!!」


 力強く、俺は宣言した。


「俺の格を証明するため……風紀委員長へ、一対一のタイマンを申し込む!!」

「はいっ!?」


 この戦いが、俺たちの立場を大きく変えるだろう。


「な、何を言って!? そもそも風紀委員長である私と戦うなんて!!」


 聞いてないと反発するナターシア。

 その思いは風紀委員たちも同じだった。


「一年が風紀委員長に?」

「無謀すぎだろ」

「やめとけー!! 赤っ恥かくぞー!!」


 圧倒的な実力で風紀委員の頂点に立った彼女。

 その力を知る者たちは、勝敗が見えきったように顔をしかめる。


「ゼ、ゼクス様が風紀委員長と?」

「大丈夫かなぁ……」

「信じたいけど信じられない自分が嫌ぁ……」


 破教委員会の面々ですら半信半疑。

 誰も俺が勝てるとは思っていない。

 ――そう考えるのが普通だ。


「試合は来週!! もちろん、俺お得意の魔力マッサージでコンディションも万全に整えてやる!!」


 だからこそ、勝つことに意味がある。

 圧倒的な強者を、実力で黙らせるからこそ――俺の格が証明される。


「お望みの全力全開の風紀委員長!! その姿が、憎き破教委員会をぶっ潰す――見たくないか!?」


 戦いの火種に油を注ぐように、俺は叫んだ。


「「「うぉおおおおおおおおお!!」」」


 風紀委員たちの歓声。

 耳が張り裂けそうな大音量が、破教委員会の施設を震わせる。

 その迫力に、ナターシアですら圧倒されていた。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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