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63.特大ミミズ討伐



洞穴の主に対し、ツユキの斬撃が飛んだ。

柔理気剣。

全身の柔軟性を瞬発力へ。さらに重力、遠心力、精神力、魔力――あらゆる力を斬ることだけに費やした攻撃のためだけの剣。


極意はどんな間合いでも、どこにいても、どんな体勢からでも斬る。



「なに!?」


だがその斬撃は特大ミミズには効かなかった。


「ぬ、固い……」


「やぁ!」


続いてクレアも二本の斧をその巨体に叩きつけた。


「――これ、外皮が固すぎるよ! 硬度は鉄以上!」

「極銀でございますね……ミスリルの外皮を持つ特殊な個体はいるにはいますが……」

「あの巨体の全身が極銀だというのか!?」


極銀は神鉄、聖銅に次ぐ希少な金属だ。

あれだけあれば一生遊んで暮らせる額になるだろうな。


「だが、いくら固かろうと衝撃までは殺せない。あの二人の攻撃を食らい続ければ」


ツユキが直接斬りかかった。特別小さいツユキ。シマ流には守りが無いという。どう戦う?


「『斬鉄』!」


シマ流の斬撃にスキルによる『斬鉄』効果。

これは効いただろ!


「――浅い! なんという質量か!」


極銀の外皮が抉れたが、刃は胴体に届いていない。


「『加速』『炎舞』!」


クレアがスキルの合わせ技で一点突破を狙う。

炎を纏った斧が止まることなく連続で叩き込まれる。


「やったか!?」


極銀を削り取っていくと体液のようなものが出た。


「なんだ‥‥‥?」


粘液のようなものが全身を覆っていく。

身体がやや小さくなり、荒々しかった極銀の外皮は丸みを帯びた。


「『環境適応』‥‥‥どうやらスキルのようでございますぅ」

「『解析』できたのか?」

「ダメージを負う事に生態を変異させ耐性を獲得するスキルのようです。申し訳ございません。この距離と暗さでは‥‥‥」


リナトリアの『解析』は『鑑定』の上位互換だが対象をよく見る必要がある。

あちらに加勢したいが三人を護りながらここで戦い続けるのは不利。シンシアがいるから被害はないがうじゃうじゃと押し寄せる巨大ミミズも油断できない。

かと言ってここから逃げるのも難しい。


「はぁぁぁぁ!!―――っ、ダメ! グネグネしてうまく当たらない」

「こちらもだ。刀が逝った」


ツユキが折れたサムライソードをポイっと捨てた。

これは本当にマズイぞ。


二人では相性が悪い。

おれは多重『デジャブ』で先を確認した。


>ツユキの指示でフォーメーションを変える

>シンシアに特大ミミズの動きを止めさせ、リナトリアに『解析』させる

>シンシアが『聖・光剣』を放つが『環境適応』で聖属性耐性を獲得

>『解析』が完了、レベル28、付与魔法で強化されたテイミングモンスターと発覚

>リナトリアが弱点を探るが見当たらない



―――っ、リナトリアは賢者だ。おそらく奴を瞬殺する魔法を持っている。だが、この環境では使えない。

崩落の危険がある洞穴で爆裂魔法も重力魔法もダメだ。



「うむ、シンシア殿! この隊列では厳しい。前衛へ!」

「うぇ!? いや、待てコッチの護りは!?」

「クレア殿と拙者が下がる!」

「待て!!」



分かってるツユキ。

だが『解析』は終わってる。『環境適応』で攻撃を変えればその分強くなってしまう。


やるなら最強の力で一気に叩く。出し惜しみは無しだ。


「シンシア、ゴットフリートを寄越せ!!」

「えぇ? 何だと? これは聖剣だぞ? ああ、盗るな! ああ~投げるなぁ!」


ツユキにパスした。

『サトリ』で理解したようだな。


再び多重『デジャブ』



>リナトリアに奥義を使わせる

>クレアにも護りに加わってもらう

>時間を稼いで召喚に成功


>「――ヴィンセント、まだ駄目だな」

>「なに? なぜおれの名前を?」

>「ステータスを上げろ、迷宮攻略は完璧にやれ、それからエレーナを救え」

>「エレーナ? なんだ? どうゆうことだ!」

>「おれを信じろ、お前らなら勝てる」


――っ、なんだ?


今のは???



とにかくリナトリアの奥義は今ダメだ。



「外皮に歯が立たないなら、狙うは一つ!!」


「クレア!?」


クレアが『加速』で再び特大ミミズに飛び掛かった。

その長い巨体を駆け登り、向かった先は口。


ダメだ。


『デジャブ』でその先を見た。


「躱せ!! クレア!!」

「ッ!? ぐぅ!!」


莫大な土砂が放出された。ほとんど岩。


間一髪クレアは回避。



「あんたら、おれたちのために逃げられないっていうなら構わん! 行ってくれ」

「冒険者として、この現状を伝えることが最優先だと理解します」

「ここまで来てくれただけで十分だ。おれたちも一か八か、時間を稼ぐ」


冒険者として、か。

だがこれはさっきまでとは違う。

目の前の死にかけている奴らを囮にして生き延びようなんて、理屈で言えば正しくても善くはないだろ。



古代の戦士は勝てると言っていた。

『予知』系のスキルか?




クレアが『炎舞』を繰り出す。


外皮は黄色く光るが溶けない。


あの色‥‥‥あれだけの高温でも極銀は砕けないか。


ん?


砕ける?



そうか‥‥‥!



「リナトリア、金属疲労だ!」


それだけでリナトリアは理解した。


「『アイシクルランス』!」


氷属性の魔法が放たれクレアが造った高温が急激に冷やされた。


「『アルファフレイム』」

「リトナリアさん、ありがとう!」


火属性付与でクレアの『炎舞』の火力を上げる。

再びクレアの斧が振るわれた。


無数の攻撃を受けるが、ダメージが無いため特大ミミズは意に介さない。


「いけます、『サウザンドランスオブアイシクル』!!」


今度はリトナリアが氷の槍を大量に打ち込んだ。槍は触れると特大ミミズを凍らせていく。


「――よし」


氷で動きが止まったのは一瞬。

だがそれだけあれば十分だった。



全員で総攻撃。


高温と急速冷凍を繰り返した急激な温度変化による金属疲労。



全身の外装を破壊され、むき出しになった中身を攻撃された特大ミミズはそのまま力なく土砂の中に倒れ込んで息絶えた。









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