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57.自己紹介から始まる


無事S級冒険者として試験に一発合格した二人――ツユキとリナトリア。


二人を迎えたおれたちは静かな場所を求めて、ギルドの個室を借りることにした。


作戦会議や依頼主との報酬の交渉、ステータスの開示を行う場合の配慮として使われる場所だ。


「リナトリア先生、魔法教えて教えてー」

「ツユキ先生、剣術教えてー」


クレアとシンシアはすっかり懐いた。分かりやすい。


「皆、浮かれるのは分かるが、落ち着いて話すべきことがあるだろう?」


おれたち5人はただの仲良しグループじゃない。

プロとして共に仕事をする仲間になるんだ。


「う、うん」

「そうだったな」

「そうでございますね。集まっただけではパーティ結成とは言えません」

「拙者は新参だ。まずはあいさつ致す」


そう言ってツユキは椅子の上に立った。


「拙者、ツユキ・シマと申す。元は先代魔王様の下に仕えていた侍、戦士だ。スキルは『サトリ』と『斬鉄』だ」

「……終わりか?」

「他に何を言うことがある?」

「うん。まぁいい。だがせめてその布取って顔見せてくれ」

「これは失敬」


ツユキが顔を覆っていた布を(まく)し上げた。

太々(ふてぶて)しい顔の幼女だった。


これでも成人しているいうから驚きだ。


「拙者はこう見えても25歳。一人前だ!」

「アヤカシ族でございますねぇ。魔族の中では比較的強力なスキルを持つ者が多いと聞きますぅ」

「うむ!」


腕組みをした幼女。


「かわいいぃ~ねぇ!」

「ああすごいかわいいな!!」

「ツユちゃん!」

「ツユちゃんだな!」

「ええい小娘共、無礼であろう!」


プンプンしてる。かわいいな。

小人族を見たことがあるが彼らは小さいだけでヒュームとは体格、顔の雰囲気がまるで違うし声も大人だ。だがツユキはただのヒュームの幼児のようだ。声もかわいい。

そういう種族なのだろう。


「ええい、もういい! 次だ!」

「ではワタクシでございますねぇ。ワタクシ、リナトリア・ユリレフォン。そちらにいるヴィンセントの伯母でございますぅ‥‥‥」


ツユキが首を傾げる。

確かに院長はおれにとって母親同然だがまるでおれの保護者みたいな言い方だな。

「貴殿のような術師は魔族国家にもおらなかった。あの秘伝は凄まじかったな」


ツユキが質問した。


過去と繋がる。

人を召喚。

そして使役。


30秒間だけならリナトリアは最強だ。


「あれはなぜかワタクシには簡単に手に入れることができたのでございますぅ。協会に放置されていた碑文を好きなお料理で解読してみたらあっさりできたのでございますぅ。書いてあった通りにしたら彼が現れたのですぅ」


そんな都合のいいことあるわけないだろ。


「あれ以外にも、精霊魔術、付与魔法が得意でございますぅ。スキルは『堕落』『解析』あたりがよく使いますねぇ」

「ほほう、さすが多彩だな」

「『堕落』は範囲デバフ、敵の戦意を削ぎ、動きを遅らせる。『解析』は『鑑定』の上位スキルで対象の情報を把握する力、だったか」

「すごいね!」

「ああ、『鑑定』の料金が浮くな」


なんだみんなして?

一人5万だぞ?

全員だと一々25万も取られるんだぞ?

大変な額じゃないか!


「では私か。シンシア・スノーホワイトだ。父上はあの偉大な伝説の勇者だ! 父上は――」

「いや、お父さんの紹介はいいから!」


すかさずクレアが止める。


「む、そうか? えっと……えっと、クレアの姉弟子だ!」

「いや、聖騎士で、クルセイダーもパラディンもできるすごい子なんです」


クレアがフォローに入った。


「基本なんでもできるが、強いて言えばやはり得意は護りだな」

「うむ、術師殿と拙者がいるなら護りに専念してもらう方がよかろう。敵の隙を突き、総攻撃する際には攻めにも転ずるという感じか」

「そんな感じだな!」


「じゃあ、次は私ね!」


クレアが立ち上がった。


「クレア・ドラグノフ、15歳です! 獣人の獅子族とヒュームのハーフで、職業は戦士。『加速』『炎舞』『マテリアルガード』『ヒール』『リフレッシュ』が使えます! 一撃入れて相手を怯ませたり、ラッシュに参加してとどめを刺したりできると思うよ!! よろしくね!」


おれは拍手した。

おれの彼女が一番ちゃんとしてる。

一番かわいい。一番いい子。


「獣人ならば索敵や斥候にも向いているな」

「それはヴィンにお任せします!」


ツユキが首を傾げる。

こんな奴よりもクレアの方ができそうとか思ってそう。


「じゃあ最後におれだな」


重要なことは一つだ。


「ヴィンセント……ユリレフォン。スキルは『デジャブ』のみ。効果は実体験の記憶化、つまり何が起こるかを知ることができる。それから一日が二回になる覚醒効果もある。一回目のことを覚えているのはおれだけだからお前たちにはおれが先々のことを全て知っているように思えるだろうし、まだ言っていないことを知っていることに違和感を覚えるかもしれない」


ツユキだけが驚く。


「おそらく、この中で迷宮の探索経験が最も多いのはおれだ。元魔王軍幹部だろうと、魔導協会の賢者であろうと、神殿の聖騎士であろうと、迷宮内ではおれに従ってもらおう」

「ほう……この面子を前にそう言い放つとは、お主余程の阿呆か、それとも‥‥‥」

「迷宮攻略は戦闘以外も重要なのでございますぅ。甥っ子はこの中で一番弱いですが、一番迷宮攻略に向いているのでございますぅ」

「まぁ、元々七大迷宮攻略はヴィンセントの達成するべき目的だからな。我々に付いて来られるなら指示には従ってやる」

「私はヴィンを信じているからね。さぁ、何からやろうか?」


即座に答えたのはシンシア。


「決まっているだろう! 王国には七代迷宮の一つ、『エンシェント迷宮』がある。まずはそこを攻略するのダ!」

「ぬ、魔族国家にある『モンスター×モンスターパニック迷宮』の方が良い。 陛下より支援のお約束を賜っているのだ。先にせよ」

「皆さま、落ち着いてくださいませぇ。まずやるべきこと、それは『ドラゴンズ迷宮』の攻略でございますぅ。希少なアイテムや素材をゲットすれば後が楽なのでござますぅ」

「あはは、みんなやる気満々だね~」


「みんな、迷宮攻略なめているだろ?」


いきなり攻略とかないわ。


「まず、情報集めだ。地図も必須。できれば各迷宮への転移ポートも入手したい。それと実戦的な演習をやる。非常時にどうするか、戦闘での細かいルールや取り決めをつくる。訓練でできないことは実戦でもできない。それから綿密に迷宮攻略の計画を立てる。全部攻略済みの迷宮だ。どのルートで、モンスターにはどう対処するのが効率的か、迷宮攻略にかかる日数、必要なアイテム、食料と水。それらは行く前にわかるだろう。攻略の順序はその後だ」


「ヴィンに賛成!」

「ワタクシもでございますぅ」

「異議なし!」

「拙者も異論は無い」


「よし、じゃあ『デンジャラスワーカー』始動だ!」


「「「「ちょっと待った!」」」」

「え?」

「パーティ名はみんなで決めるものなの!」

「なんだそれは! 不吉であろうが!」

「センスの欠片も感じられないのでございますぅ」

「偉業を成し遂げようという気概を感じぬ」



パーティ名を決める所から、揉めに揉めた。


「もっとかわいい感じで!」

「いや、もっとこう神聖な意味をだな――」

「ジェス・ワイスダムの書『言霊 命名の効果と呪い』に依れば――」

「後世に誇れるよう無骨で厳かであるべきだぞ」



一昼夜おれたちは激論を交わし合い、意見を出し尽くした。


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