34.クレア
クレア視点です
私が書いた手紙が原因だったらしい。
ママはずっとヴィンを探していたけどアマチュア時代は正式に任務を受けられなかったからどこにも記録が無かった。
手紙で私の彼氏がヴィンセント・アルトリンデンだと知ってすぐに会いに来た。
どおりでお父さんの動きが早すぎると思った。
まさかママが子供のころにヴィンと出会っていたなんて。
ヴィンもショックだったみたいだけど受け入れてくれた。
「ねぇ、お腹空いてない? パイを焼いてきたのよ! 好きだったでしょ、ヴィンセント」
「あ、ああ……」
「お肉も焼いてあげる。たくさん食べてね」
「はぁ……」
「おいしいお茶があるの、待ってて、すぐ淹れるからね」
ヴィンに何かしてあげたくて仕方ないと言った様子のママ。
自分の母親なんだから当たり前だけど、似ているなぁ……。
「ちょ、口ぐらい自分で拭ける! やめてくれ! いや、クレアもマネしなくていいから!」
チラチラとヴィンがお父さんの方を気にする。
口の周りをソースで汚したお父さん。
困った顔のママが布を差し出した。
「もう、まだおじいちゃんじゃないんだから自分で拭きましょう?」
ショックを受けるお父さん。
「ホラ、ヴィンセント遠慮しないでたくさん食べてね。はい、あーん」
「ママ、それは私がやるー!」
「いやいいいいいい、自分で食べるから!」
お父さんが食べる分がヴィンの下へ。
ショックを受けるお父さん。
でもママが嬉しそうだから何も言えないみたい。
ママの可愛がりが落ち着いた食後、当然話題は七大迷宮攻略について。
「ヴィンセント、お前は分かっているだろう。冒険者としての自分に欠けているもの」
「全てです」
「そうだ! 貴様はあらゆる点に置いて不完全だ! そんなことで七大迷宮を攻略できると思っているのか!!」
「いえ、思ってないです」
滅茶苦茶だけど、お父さんは私とヴィンの気にしていることを言い当てた。
「お前たちは不釣り合いだ。実力が違い過ぎてパーティにもなっていない。クレア、お前はヴィンセントに自分のステータスを見せたのか?」
「うぅ~」
ひぃ、ヴィンがコッチを見た。
見せて無いよ。
いや、実力差があり過ぎてヴィンが落ち込むとかは気にしてないんだけど。
ヴィンは私のこと同年代よりちょっと下ぐらいに思ってるからなぁ。
まぁ私は半分獣人だから人族よりは成長は確かに速いんだけど、ヴィンは細かいからなぁ。
「クレア、お前が冒険者ごっこをしたいのなら、一生コイツのフォローをしていてもとりあえず死にはしないだろう。だが、お前はコイツに才覚があると思ったから男と見たのだろう? お前のごっこ遊びに付き合わせてそれで幸せか?」
うぅ、お父さんのヴィンへの期待がすごい。
私は冒険者にはなったけど、明確に何かを成し遂げたいとか目標はない。
何となく、素敵な人に巡り合えたら、一緒に冒険していきたいぐらいに思っていた。
だって、冒険者にはなるように育てられたけど、七大迷宮の攻略なんて言われたことないし。
お父さんはヴィンにならできると思っているんだ。
七大迷宮攻略を。
「ごっこ遊びって、言い過ぎでは」
「お前はクレアに言われて拳闘士の動きを学んだな?」
「あ、はい」
「それ自体は間違っていない。だが、おれのような相手に最良の戦法が取れたか?」
はぅッ!
お父さんと戦うなら、遠くから魔法や遠距離武器で戦うべき。
だけど、ヴィンには……
「あの爆裂魔法の仕掛け筒は良かった。だがなぜ接近戦で使った? 爆裂魔法の威力にもムラがあった。なぜ半端な方陣札を使う?」
ヴィンが首を傾げる。
そうだよ、普通知らないよね。私が教えてませんでしたすいません!
市販されている方陣札はつくり手によって癖がある。
一流は専属の魔導士を付けて一定の威力、効果のものを作らせる。
「『デジャブ』を活かす戦闘として拳打が最適か? なぜ毒ナイフを使わない?」
「そ、それは……『デジャブ』に向いているのはアシストで、おれ単体の攻撃はスキルがないし、今から剣技や別の技術を習っても実戦で使い物にならないと」
はぃぃ、私が言いました。
「冒険者ごっこならそうだな。だがお前は命を懸けて戦える。冒険者ごっこをしたいわけではないはずだ。おれのような相手に立ち向かえるならば、出来得る限りのことをやれ」
お父さんはおもむろに詠唱を始めた。
手のひらから大きな『ファイアーボール』が発動し、瓦礫の山を破壊した。
「獣人は魔法が不得手だ。だが必要だったから学び修得した。冒険者の理想は自分の専門職をこなすスペシャリストであると同時に、どの職にも精通するプロフェッショナルだ」
分かっていた。
だからお父さんと師匠は私にもそう訓練をした。
なのに……
「そう落ち込まないでクレアちゃん」
「ママぁ」
「今までお父さんに娘さんを下さいって言ってきた人はたくさんいるけど、真っ向勝負を挑んだのはヴィンセントだけなのよ」
「そうなの?」
「だからうれしいのよ。七大迷宮攻略を一緒にさせようなんてあなたとの仲を認めているようなものだもの」
「――っは! そっか!!」
お父さんの熱の入り様はすごかった。
思えばお父さんがヴィンを試したのは、お父さんたちを迷宮で助けてくれたり、私を勇者から守ってくれたり、ママのことを許してくれたこととは関係なく、実力で認めたのだと示すためなのかもしれない。
だめだなぁ。
お父さんが期待するより、誰よりも、私がヴィンに期待しないと!!
本当は引き合わせないようにしようとか考えてたけどよかった。
「――ん、クレア、聞いているのか!?」
「ハイ!」




