24.ゴブリン討伐一回目
夜が明けてから寝たため起きたのは昼過ぎだった。
クレアに起こされ、支度させられた。
「もう出発か?」
「いいや、『鉄の盾』がゴブリン退治に行くから同行させてもらうことにしたよ」
ああ、盗賊先輩もゴブリンが村に襲われてるって言ってたな。
ついに実戦だ。
「ヴィン、これを訓練や練習の一環だと舐めないでね。ゴブリンは低級の魔物だけど、数や立地によってはD級でも手に余る」
「ああ、無論だ。邪魔にならないよう気を付けます」
ゴブリンとは一個体での脅威ではなくアリやハチのような超個体だ。
スキルを持つ特別な個体を頂点に、統率され、人を襲い、略奪し、女を攫い、増える。
まるで二本足の虫。
さらに狡猾で学習能力を持っているから厄介だ。
一匹は大したことが無くても群れのレベルが高いと危険度は高くなる。
ゴブリンだと甘く見て冒険者を雇わなかった村が壊滅し占領されていたなんて話はよくある。
「私は反対だなぁ。素人を戦闘に参加させるなんて。それで分け前も減るんでしょ?」
魔導士の少女はおれたちの参加に不満そうだ。
「分け前のことはともかく、戦えるのかは確かめておきたいですな。ゴブリンとの戦闘中、同士討ちなんてことはあってはなりません」
僧侶の男も反対に一票を投じた。
「いや、彼には盗賊・斥候のセンスがある。ゴブリンが出るのは森だし、巣を探すなら索敵できるやつは多い方がいいんじゃないかな」
盗賊先輩が賛成に一票。
「せっかく準備してんだし、いいんじゃねぇか? クレアさんも来るんだろ?」
「今回は報酬より、ゴブリン掃討を優先しよう。戦力は多い方がいい。こういう実績がランクアップにつながるんだからな」
剣士の青年とリーダーの中年ハゲが賛成し、他の2人も受け入れた。
◇
一時間ほどで村に到着した。
村の周囲には壁があり、その壁際を徘徊するゴブリンの足跡がすぐに見つかった。
それを伝えると村から討伐を頼まれた。
村人たちは気が付いていたがゴブリン程度なら平気だと高を括っていたようだ。
「対策はしっかりしているし、この村を攻めるって規模はどれぐらい?」
クレアが確認すると村長が「週に一、二回5,6匹がやってくる」と答えた。
「それじゃあ、おれたちが来た時に倒したあれではないか?」
『鉄の盾』リーダーが推測する。
「いや、おかしいよ」
「おれもそう思う」
クレアが疑問を呈し、おれも賛成した。
盗賊先輩も同意見らしい。
「ぼくもだ。足跡から見てゴブリンは最低でも十匹以上はいる。頻繁に村にやって来て、まるで陽動みたいだ」
おれの眼には30匹以上はいると見える。
たぶん、シフトを組んで煽りに来る面子を変えてる。
妙に組織立っている。
その割にやっていることが幼稚だ。何の意味がある?
30匹以上いてなぜ攻めてこない。
クレアも奇妙に感じたようだ。
そしてその原因に思い当たり、おれと『鉄の盾』に話し始めた。
「ゴブリンが標的を攻め切らないっていうのが、セオリーに反しているんだよね。奴らは基本仲間が半分死んでも戦意を失わない。この村の壁を前に毎回あきらめて帰るなんて普通はありえない。命令で動いている気がする。命令、つまり――『上位個体』がいる」
「『上位個体』だって!?」
『鉄の盾』のメンバーが驚いた。
『上位個体』はその名の通り通常の魔獣や魔物より上位の個体を指す。
群れのリーダーや、突然変異体だ。
ゴブリンにも才能のある/無しが存在する。
ゴブリンの中でも屈強な身体能力を有する個体を『ホブ』または『ホブゴブリン』と呼ぶ。
さらにスキルを獲得した個体はそのスキルによって『ゴブリンメイジ』『ゴブリンファイター』『ゴブリンウォーリアー』となり、多くのゴブリンを従える。
このように魔獣や魔物は標準よりスキルや能力が著しく高い『上位個体』が存在する。
『上位個体』の強さは一体でⅮ級かⅭ級に相当する。
「でも、『上位個体』がいるならなぜ村を攻めない?」
「考えすぎじゃないか?」
「目撃証言は通常のゴブリンだけだし……」
『鉄の盾』の面々は通常の討伐であるとの認識を変えない。
それもそうだろう。
根拠は乏しい。
みんなクレアの言葉を待っている。
「まず、情報収集のための斥候を送ろう。セオリー通りに」
『鉄の盾』は納得したようだ。
森への斥候はクレア、盗賊先輩、魔導士の少女、おれに決まった。
クレアは主戦力、盗賊先輩とおれが索敵係、魔導士の少女は遠距離攻撃要員だ。
村には重戦士のリーダーと剣士の優男、壮年の僧侶が残った。護り、攻め、回復要員。
「ではクレアさん、うちの者を頼みます」
「ええ、何かあったら鐘を叩いて報せて下さい」
おれたちは森の中へと足を踏み入れた。




