23.護衛任務 二回目
院長たちと二回目の別れをして街からの出発も二回目。
相変わらず『鉄の盾』のメンバーからのおれへの視線は冷たい。
だが、二回目も同じでは意味が無い。
「勉強させていただきます。邪魔にならないよう気を付けます」
「お、おう……ならいいんだ」
『鉄の盾』への心証を良くしようという試みだ。
クレアも三十歳のヒモを抱えてると思われるのは不本意なはず。
隊列の邪魔にならないよう気を付けた。
一回目と同じように前の二人の会話が聞こえて来た。
僧侶と魔導士の少女だ。
『あの荷物持ち、どうやってクレアさんに取り入ったのかしら?』
『妙に礼儀正しいのが逆に嘘くさいですね。何か隠している気がします』
『コワッ。クレアさん大丈夫かな』
あまり変わってないな。
というか、悪化している気がする。
ゴブリン襲撃後死体の処理も率先して協力した。
「手伝います! やらせて下さい!!」
「あっそ」
これおれの行動とか関係ないのか?
彼らが見ているのはA級クレアの横にいる不審人物としてのおれであって、おれの中身になど興味はないのだ。
いや我慢だ。受け止めよう。これが今のおれの現実なんだ。
野営して見張り。
「あの、ちょっといいですか?」
見張り役の盗賊職の男に注意する点を聞いてみた。
一回目は警戒されて話もできなかったがおれがクレアとパーティを組むにあたり、彼の役割が最も参考になる。
『デジャブ』を用いた斥候、身軽さとアイテムを生かしたアシスト。
「……教えるのは構わないだが、そう簡単じゃないぞ」
変わった。
やはり礼儀は大切!
我慢した甲斐があったというものだ。
「わかってます。おれには盗賊系のスキルがない。だからこそ知識を力にしたい」
「うん……じゃあ、基本だけなら」
「よろしくお願いします」
盗賊・斥候は隠密による情報収集、索敵、罠感知による危険の察知、短剣やナイフで素早く小回りの利くアタッカーとして活躍する。
「隠密や索敵、感知系、短剣術、ナイフ術なんかはスキルを使う者が多い。もちろん全部持ってる盗賊なんていないから足りない部分は訓練で補う。でもその訓練には時間が掛かる。特に隠密や索敵、感知というのは才能がいる。才能が無い者には時間がいる。両方無いと厳しいだろう」
あれ?
どうやらおれには無理だとそれとなく伝えたいようだ。
一回目に断られたのは見込みが無いというのもあったわけだ。
やはり、何かのプロフェッショナルになるというのは高望みが過ぎたか。
「例えば、君にはあの木々の間に何があるか見えるか?」
「……ああ、フクロウが留まってますね」
「え? 見える?」
「え? 見えますけど」
迷宮は基本明かりが無い。
おれは魔物に見つからないよう松明も持ち込まないようにしていたから自然と夜目が効くようになった。
「月明りもないのに……じゃあ、あの方角には何がある?」
「え? 川じゃないですかね?」
「聞こえているのか、水の音が……」
「聞こえますよね……?」
「うん……」
普通に聞こえるが、おかしいのか?
「じゃ、じゃあ、ちょっとコッチに……」
森の中を少し歩く。
「足跡あるだろう。たぶんゴブリンだ。何匹かわかるか?」
「え? いやさすがにそれは……」
そんな正確にわかるわけないだろ。
「十匹以上ってことぐらいしか」
「ええ、区別付くの!?」
いや、大きさと足の形で分かるだろう。
「それより、ゴブリンが十匹ってことはやっぱり昼間のあれは斥候だったわけですね」
「あ、そうだね。最近この辺りの村がよくゴブリンに襲われている。何度殲滅しても湧いてくるから困ったものだ」
盗賊先輩は見張りに戻ると黙ってしまった。
もっと実戦的なことを教えて欲しいんだが。
「……ヴィンセントだったよな。街で迷宮攻略をしたアマチュアだと聞いたけど、あれって嘘じゃなかったの?」
「嘘じゃないですよ! あ、それに今はプロの冒険者ですよ」
「いや、F級の認識票見せなくてもいいから、うん、わかったから――あの迷宮はおれも何度も潜ったけどトラップが厳しくて進めなかった。何か秘密があるのか?」
「ええーっと」
『デジャブ』のことは一応秘密だ。
このスキルはイカサマとかし放題だし、実家のこともある。
「いや、悪い。君はトラップなんかの知識もあるってことだろ? それにさっきの索敵、悪路でも音をさせず難なく付いて来た。ゴブリンを片付けているときの腕力と運んでいる荷からして体力もありそうだし、逆に聞くけどなんでアマチュアだったの? 君ならすぐにでも盗賊職に就けると思うんだけど」
「え、本当ですか?」
なんだ急に?
この人、おれのこと騙そうとか考えてないだろうな。
「ああ、ちなみにあの迷宮にどれぐらい潜ったんだ? 攻略にどれぐらいかけた?」
「かかった年数で言えば二十年です。どれぐらいって言うと、毎日必ず一回、多いときは三回ぐらいだから――1万回くらい?」
「ぼほっ!!」
盗賊先輩が噴き出した。
「大丈夫ですか、盗賊先輩!」
「あ、ああ驚いちゃって……いや、変なあだ名で呼ばないでよ」
水を差し出した。
盗賊先輩が落ち着くのを待った。なにやら考え込んでいるようだ。
「クレアさんが目を掛けたのも頷けるよ。普通冒険者が迷宮に潜るって言ったら月に一度とか、多くても二週に一回。おれは冒険者になって十年ぐらいだけど、迷宮に潜ったのなんてたぶん100回ないよ」
「はぁ、恐縮です。ただ、おれの場合、魔物と戦闘しなかったので、二十年間ほぼステータスに変化なかったですけどね。スキルも何も得られなかったですし」
「いや、魔物と戦闘せずに迷宮に潜るって逆にスゴいでしょ! あんなトラップがたたみかけてその音で魔物がワラワラ寄ってくる性質の悪い迷宮でよくそんなことできたね!?」
それは『デジャブ』のおかげだ。安全策を講じれば、あの迷宮はラクだ。これは持っているスキルの相性で実力ってわけじゃない。
「ヴィンセント、戦闘についてはただ説明するだけでは危険だからしない。でも他に関しては君にはすでに技能がある。ぼくには教えられることは何もない。君に必要なのは経験だと思う。だからクレアさんはぼくらと同行したんだな。全部君に学ばせるためだ」
「はぁ、そうですか」
もっと常識的なところから根掘り葉掘り聞きたかったが、これは面倒だと思われそうだから遠慮した。
あまり収穫がないまま、宿場町には到着してしまった。
ヴィンセント・アルトリンデン(30)♂
【職 業】:F級冒険者
【レベル】:34
【体 力】:B[ 950 / 5000]
【耐 久】:B[ 54 / 5000]
【膂 力】:B[ 200 / 5000]
【速 さ】:B[ 470 / 5000]
【知 力】:B[1120 / 5000]
【運 気】:E[ 280 / 500]
【魔 力】:B[4100 / 5000]
【精 神】:A[7150 / 8000]
【器 用】:B[3980 / 5000]
【スキル】:『デジャブ』(Ex[1003500/ 1000000])
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