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20 四人パーティーで行きましょう。

 宿から飛び出し、直ぐに走る。

 教えられた道を通りながら入ってきた所とは違う門の前まで来た。詰め所にいる兵士が何事かと思ってカレンの顔を見ている。



「いない……、か」

「よう、嬢ちゃんどうした」

「あ、仕事中にすみません。えーっと、年齢はちょっといっていて黒髪で、私より背が低くて、なよっとしている男性と、可愛い金髪のエルフ見なかったですか?」



 カレンが詰め所から出てきた兵士に説明していると、背後から息を切らしたナディが追いついてきた。ナディは転ぶと危ないので途中から手を離して走っていたのだ。



「おま、おまえ。相変わらず先生探すのに、その表現は酷いな……はぁはぁ」

「そっかなー……」

「君たちの探している男性か知らないけど。確かに金髪のエルフならこの門をぬけて砂丘の方へ向かったよ」

「本当ですかっ!」

「ああ。夜間は危険になるから一般人は止めるんだけど、一人は魔法ギルドのカードもっていたからね、町民だったら止めるんだけど、冒険者は出国を止めると面倒だからね」

「あの、私たちもファルマ砂丘行きますっ! これ冒険者カードですっ!」

「君たちも冒険者だったか、さっきのは失言だったかな」



 カレンは自分の冒険者カードを出す。それを詰め所に確認しに行く兵士、魔法石でカードのチェックをすると何事もないのだろう、笑顔で直ぐにカードを返してくれた。



「ギルド発行のカード確認もOK。冒険者だからといって危ない事はしないように、危険な魔物が現れたら直ぐに町に戻るように」

「はーい。ありがとう兵士のお兄さん」

「どういたしまして」

「ほら、ナディ君もいくよっ」



 ナディも兵士からカードを返してもらう。その様子を見ていたカレンはナディの手を握り駆け出す。


 砂丘へ向けて街道を歩いていく、走ろうと思ったカレンであるが、ナディの体力が既に尽きそうで荒い息をだしているからだ。

 ギルドの依頼が終わったのだろう、先ほどあった冒険者がカレン達を見て手を大きく上げた。



「やぁ、君たちはさっきの」

「あ、先ほどはありがとうございます。すみません――」



 カレンは冒険者にも、ロキとナナリーの姿を教え、この先に居なかったかを尋ねる。



「ああ、それだったら、さっきそこに居たよ。走れば間に合うんじゃないかな、僕の仕事を――」

「そう、それです。忙しいのにすみません、では失礼しますっ!」



 最後まで話を聞かないで、ナディの手を引いて走り出すカレン。

 手を引かれているナディのほうは悲鳴を上げているが、カレンは止まらなかった。残った冒険者は後姿を見て軽く苦笑すると、カーメルの町がある方向へ歩いていった。


 この先、立ち入り禁止と書かれた門の前で、中ぐらいの背の男性がフードを脱いで立っていた。

 ボサボサの黒髪をなびかせて、鉄の門の前に立っていた。その横ではフードを被った小さい姿のエルフが同じく門を見ている。


 カレン達に気付いたのだろう、エルフ、そうナナリーが振り返りカレン達を見た。



「師匠っ!」

「先生っ」



 ほぼ同時に声をかけその背中に追いつく。

 


「あら、カレンさんに、ナディさん……?」

「お久しぶりです、ナナリーさん。それに師匠っ」



 ロキが振り返ると信じられない物を見る目で二人を見ている。



「いや。なんで……」

「なんでって。追い掛けて来ちゃいました」



 カレンは、ロキ達が居なくなった後の事を手短に話した。

 ナナリーは、頷き、時は関心しながら、あいづちを打っている。

 ナディも、自分が魔法でスライムの群れを倒した事などを自慢し始めた。

 最後まで聞いたロキは溜息を付く。



「ナディは兎も角、君まで……、カレンまで一緒とは……」

「先生、なんかボクの扱いが酷いです」

「うーん。留守番してもらうようにカレンと、ミナトをつけたんだけど逆効果だったか」


 

 留守番だ、と言う約束を守らない二人に、不機嫌になるロキ。

 ロキの言葉に、小さくなるカレンとナディであったが、ナナリーが助け舟をだす。



「あら。良いじゃありませんか。その様子だと、ウチのミナトが、あおったようですし。愛する者を追いかける、素晴らしいと思いますわ」

「やだ、ちょっと、愛するとか、そのっ」



 ナナリーの言葉を聞いて、段々と声が小さくなるカレン。近くにいるロキの背中を豪快に叩く。大きな音と共に鉄の門へ体をぶつけるロキ。



「うわ。師匠っ! ご、ごめんなさいっ!」

「痛そうですわね……」

「痛そうじゃなくて、痛いんだけど……。っと、カレン。君もいきなり僕を叩かない」

「ご、ごめんなさい」


 一度溜息を付くロキであるが、結局は、来てしまったものはしょうがないと、顔を上げる。



「兎も角、無事で良かった」



 ロキの言葉に、大きいからだを震わせるカレン。褒められた事に顔が少し赤くなっている。

 ナナリーは、その姿を見ては、初々しいですわね。と微笑み始めた。



「所で師匠。結局は何しに此処に来たんですか?」

「うーん……」



 ちらっとナナリーを見ては言葉を濁し始める。



「もしかして、私たち邪魔でした」

「邪魔だから留守番を――っ!」



 ロキが素直な感想を言いきる前に、ナナリーの肘がロキの脇腹へと決まる。



「別に秘密にするような事でもありませんわ。だから、出発前にお二人を連れて行きましょうと提案しましたのに」

「いや、でも。別に大人数に動く事もない」

「これだから、ロキ様は。説明しますわね、カレンさんにナディさん。此処にいるのはナディさんが持って来たバジリスクの眼が関係あるのです」

「ボクの!?」

「ええ、この眼はとても貴重な、いえ。わたくしに取ってはとても貴重で、何十年も探していた物なのです。コレ一つで親愛なる友を助ける事が出きるかも知れない物だったのです」



 ナナリーは一度ポーチから取り出した眼を二人にみせると大事そうにポーチに戻し説明を続ける。



「まぁ、そんな所。で、これから行く場所には魔力を持った人間が必要で、僕がいるわけ」

「なるほど」

「先生っ! ボク、いやボク達も付いていっていいですかっ!」

「良いも何も、ここまで来たんだし、今から町に戻っても宿が取れないだろうし、しょうがない」


 

 ロキが許可すると、ナディは喜んでカレンの手を握る。ナナリーはその光景を見て何か口を開きかけ黙った。

 


「関係者以外先に入る事を禁ずる、ギルドより。って師匠書いてますけど、ギルドに立ち寄ったんですか?」



 カレンが看板を見てその文字を読み上げた。

 


「いや、立ち寄らないよ」



 そういいながら、ロキは辺りに人が居ないのを確認し、鉄の柵で出来た扉をあける。この先は砂に埋もれた古代都市ファルマ遺跡となっている。



「えっ!? え??」

「人が来ると面倒だ、カレン早くこっちに」



 ナディはナナリーに手を引っ張られ奥へと消えていく、カレンもロキにせかされ奥に入ると、ロキはその門を内側から閉めた。

 暗い遺跡の中を用意してきたランタンで先に進む。

 左手にランタンを持っており右手はカレンの手を繋いだままだ。

 特に何もいわないロキに黙って付いていくカレン、一度地下を通って地上に出るらしく直ぐに明るい場所へと付いた。



「ロキ様、何時までカレンさんの手を」

「ん? ああ、ごめん」

「い、いえっ大、大丈夫ですっ!」



 何が大丈夫なのか、カレンはいい訳をする。ロキは気にした様子はないが、ナナリーの口元が一瞬ニヤっと笑う。



「先生、エル……。ナナリーさんの友人ってこんな場所に居るんですか?」



 ナディはエルフと呼び捨てにしようとして言い直すとロキへと質問する。



「そういえば、こんな砂ばっかりの所に住んでいたら生活も大変そう」

「いると言えばいるし、居ないといえば居ない」

「なんですか、その意味不明な答えは」

「……。これでも師匠としての威厳を保とうとした答えなんだけど、カレン。僕の事あんまり師と思ってないよね」

「そ、そんな。やだなー。痛っ。ちょっとナディ君何も叩かなくてもいいじゃないっ!」

「まぁまぁ。お二人とも、いえ、三人とも喧嘩はその辺で」

「ナナリー。なんで、僕まで入っているん」

「なんでなんでしょうね。さて、次の地下にいきますわよ。暗くなると魔物が厄介ですし」



 ナナリーは三人を置いて次の地下へと進んでいく。ナディはその後ろを追いかけると、ロキも先にいく。自然にカレンの手を取ると、意識したのだろうすぐに離して先に進んだ。


 五つ目の地下道を通り抜けたあと、大きな広場に出た、古代都市の中央広場だったらしく、今でも壊れていない噴水跡地が残っていた。



「この辺かなー」



 ロキは一言呟くと、近くにある砂の山を指差す。ナナリーも、この辺で良いと思います、と首を立てにふる。



「えーと、何がです」

「ああ。魔力が濃い部分を探していたんだ」

「魔力ですか……、そういわれると、なんかあっちの方が濃いような……」



 カレンは違う砂山を指差す、ロキとナナリーは黙って顔を見合わせると、ナディが突っ込んでくる。



「お前なぁ。魔力の感知なんてボクでさえ出来なんだぞ、それを魔法球も作れないような奴が――」

「いや、ナディ。少しまって」

「先生っ」

「カレン。もう一度確認するけど、なぜあっちの砂山を?」

「いや、えーっと何となくですけどモヤが見えるというか。錯覚や暑さで空気がそう見えたのかもしれないですけど……」



 段々と声が小さくなるカレンに、ロキは微笑む。



「別に怒っているわけじゃない。うん、実はあっちのほうが魔力の濃度があるんだ、でも余りに魔力が固まっていると人体に悪い。何はともあれ、それが解るのは凄い」

「いやー。てれるなぁ」

「ふん、まぐれだろっ。ボクにさえ見えないんだ」

「酷いなー。確かに何となくだけどさー、そこまでいう事もないじゃないのー」



 少し頬を膨らませながらナディに文句を言う。ナナリーが直ぐに手を二回叩くと仲裁しにはいった。



「はいはい。その辺で、ロキ様の機嫌を損ねたら帰されますよー」

「ナナリー……。僕は、こんな事で気分は損ねない。まっ、でも無駄に争うよりはいい。携帯食料など全部、其処の台の上に置いておいて」

「えーっと……」



 カレンが説明を求めようとロキを見ると、一つの砂山の前で魔方陣を書いている。

 ナディと顔を見合わせた後、手持ちの携帯食料や薬草、傷薬なども、元噴水の場所へ固めて置いておく。



「師匠終わりましたけど?」

「こっちも、終わった。さて、ナナリーの友人が何所にいるかだったね、この先にいるんだ。……、君たち、僕のいう事を信じてないみたいだね」

「そんな事ないですよー」



 カレンは少しだけ声の高い声で返事をする。ロキは、この状態はそれもそうかと、言うとナナリーを見る。



「では、証明を見せましょう。ではロキ様」

「そうだね」



 ロキが描いた魔法陣に両手を着くと魔法陣が光っていく。魔方陣の上に半透明な扉が現れた。

 カレン達は何も言わずに見ていると、ロキがその扉を開ける。

 扉が開く前は背後には砂山しか見えなかったはずなのに扉の先は、そこだけ切り取ったように別世界が映し出されていた。

 土で固めた家やが整地された道が見える。カレン、ナディが何も言えないで呆然としていると、ロキが、行こうかと、扉をくぐった。


 次にナナリーがロキにお礼を言いながら扉をくぐる。反対側から二人を呼ぶ声が聞こえた。

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