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21 真実の町

 魔法で作られた扉の先からナナリーの顔が出てくる。

 もちろん、回りの背景と扉の中の空間とは別世界なのが見て取れた。あまりに固まっているとナナリーが嬉しそうに喋りだす。

 


「ここまで着いて来たのですから、何をしているのですか」



 ナディの手を引っ張る。バランスを崩しならがも扉へと進むナディは、カレンの服を思わず掴んだ。


 

「ほらほら、安心して下さい、初めては不安ですけど、痛い事は何一つありませんからね」

「ナナリー、変な事言わないで二人を早く連れてきてくれ」


 

 ロキの声が扉の先から聞こえてくる。

 ナディに引っ張られているカレン。その場所はズボンの端であり少しだけ脱げそうになっている。


 必死で腰の部分を押さえると扉の中へ入っていった。

 カレンは周りを見て、驚きの声をあげる。



「すごい、町……ですよね? え、でも扉の前はってあれ。この噴水さっきの噴水後と同じ形なんですけど」

「そうですわよ。よくお気づきに」



 カレンの前には大きな噴水があり、水を循環している。背後ではロキが半透明な扉を閉めていた。



「先生っ、ここってもしかして」

「うん、通称ファルマの古代都市。実際には千年ちょい前の都市であり古代と言われるほど昔じゃないんだけどね。今はまだルーカスの町かな。ここに来るまでにあったルーカスの町は二代目、本来はこっちが最初」

「師匠、師匠。って事は、ここは過去の世界って事です?」

「そう。さて行こうか、ナナリーの友人に会いに」


 

 ロキを先頭に過去の町を歩く。

 土を練って作った家が両側にある、所々に柵があり小さな子供が乗れるほどのトカゲが数匹を飼育している所が目立っていた。



「師匠ー。町の人達が余りこっちを視て来ないんですけど」

「僕ら本来いるはずの人間じゃないからね、幽霊みたいなものさ。回りからは見えない」

「へー」

「それでも、見える人間はいるけどね」

「あのトカゲはなんですか?」

「あれは、バジリスク。今の時代でもファルマ砂丘をまわれば数は少ないけどいるはず。これよりは小さいけどね。ギルドでも乱獲は禁止されて薬の材料として尻尾が取引されているよ。尻尾は取ればまた、生えてくるからね」

「私が知っているのより大きいんですけど……」

「そりゃね」

「師匠町の中の活気が――」



 ロキが立ち止まる、ナナリーがカレンの隣で小さく笑っている。



「君ね。知りたい事はわかるんだけど、僕だって全部を説明するのは疲れる」

「むー。ナナリーさんに何でも聞くのは、悪いそうで」

「僕ならいいのか」

「いや、そういうわけでも……」



 カレンが慌てると、ナディが大きな声を出す。

 


「ふん。これだから無学は。ファルマの古代都市は、一人の悪い魔法使いによって滅ぼされた町だ。先生は過去に来たという事は、悪い魔法使いファルマを倒しに過去に来たんですよねっ!」



 その言葉にナナリーが小さく笑う。



「そうですね。それではファルマさんが現れたらロキ様とナディさんに倒してもらいましょうか」

「ナナリー。君ね……」

「任せてください。先生と僕の魔法があれば一撃ですよ!」



 ロキの言葉を遮って、ナディが意気込む。

 ロキは全員の顔を見渡すと、まぁいいかと、喋ってから歩き出す。


 時折ラクダを引く老人や、水がめを頭に載せて歩く子供とすれ違う。バジリスクの眼がロキ達を見つけたのか首が動くと、飼い主が頭を軽く叩いてバジリスクの頭をポンポンと叩くと機嫌を取っていた。



「可愛い……」



 カレンは柵の近くにいる、バジリスクの頭を一緒になでると、紫の瞳がカレンを捉えていた。赤い舌を出してちゅるちゅると鳴いている。

 


「カレン……」

「あ。ごめんなさい触ったら不味かったですか」

「いや。注意しなかった僕も悪かった、ナディも余り触らないようにね」

「先生。ボクは、コイツみたいな子供じゃないです。危ない物には触りません」

「ああ、いい返事だ。昔パーティーを組んでいた人が。洞窟内で散々注意したにも拘らず、スイッチを踏むや、明らかに罠の宝箱を開けるわ、他のパーティーに喧嘩は売るわ。最終的に問いただしたら、ふりかとおもったって言われてね」

「そんな馬鹿が居たんですかっ!」



 ナディが信じられないと言う声をあげると、カレンが反論する。



「えー。馬鹿ですかね、可愛い性格かと思うんですけど……。私は会ってみたいなぁ、面白そうな人ですし」



 その会話を聞いていたナナリーが、本当に誰にも聞こえない声で。カレンさんなら実家で毎日会ってましたよ。とだけ、誰にも聞こえないように口を動かした。


 小さい子供が果物を持ちながら走ってくる。ロキ達の前でぶつかる事なく避けて行く。



「可愛い女の子。あれでも何で避けていったんですかね」

「僕らは、幽霊みたいなものだからね、自然に避けたんだろう」



 ロキの言葉に、話を聞いていたナディは考え込む。



「先生。幽霊って事は……。いえ何でもないです」

「ちょっと、ナディ君。どうしたのよ、顔赤いわよ」



 ロキは、一瞬だけナディを見ては、返事をしようとしてしないで前を向いた。

 代わりにナナリーが、笑顔で微笑む。



「ええ、ナディさんの思うとおりですわ。ロキ様が答えないようなので代わりにお答えします」

「ナナリーさーん。私わからないんですけど」

「私達はいま幽霊さんと同じです。先ほどのように可愛い女の子の後を付ければ何でも見放題ですわ、食事から寝室、浴室や、なんだったら排泄までみれますわよ」

「うわ。師匠にナディ君。最低っ……」



 思わずカレンが悪態を付くと、慌てる男性二人。



「ばっ。僕は何も言っていない。ナナリーっ!」

「ボクだってそんな事一言もだなっ!」

「あら。私は出来る事を申しただけですのに。カレンさんも安心してください、二人ともそのような事をする人間じゃありませんわ」

「そ、そうですよね」

「ええ」



 いくつかの角を曲がると、カレンが急に立ち止まる。

 ナディがカレンにぶつかり文句を言いだした。



「おい。急に止まるなっ! ぶつかったじゃないか」



 カレンは両腕を抱くと少し震えていた。



「ごめん。少し寒気がして」

「寒い? そういえば先生、空に太陽があるのに暑さ感じませんね」

「過去だからね。本来は寒さ暑さは感じない筈なんだけど。これから行く場所は高位の魔法使いの家だからね。魔力を感じたのかもしれない」



 ロキの言葉に、魔力を感じないナディは少し不機嫌な顔になる。



「先生、ボクは感じません……」

「普通は感じない」

「先生は感じるんですよね?」

「集中しないと無理かな」



 ロキさえも解らないと聞いて、少し不機嫌な顔になった。

 その顔を背後からナナリーが頬の部分を伸ばす。



「ほら、そんな顔をしませんことよ。笑顔笑顔ですわ」

「いひゃいです」

「女性のほうが魔力を感知しやすいのです。いたし方ありません」



 ロキが咳払いをして一軒の建物の前にたった。

 雨が少い地方である為の独自の作りで窓枠はあっても遮るものがない、扉もない開放的な家である。

 ナナリーが大きく手を広げ叫びだす。

 


「これこそが、悪の魔法使いファルマの家ですわっ! さぁ、ロキ様にナディさん、その力を魔法使いにぶつけるのですっ」

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