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義弟とヒロインを同時攻略する姿は悪役令嬢の鑑

せっかくヒロインをゲットしたのに、次は義弟問題とは。

さすが悪役令嬢、暇を許されない存在だ。


だが、リズレルちゃんは様々な悪役令嬢転生物を見てきた強者である。

先人の知恵さえ借りれば、義弟が出来た時の対処法などお茶の子さいさいだ!


「リ、リズレル様、お茶が入りました」


「ええ、ありがとう」


ヒロインであるマリアがおずおずと紅茶とおやつを差し出してくる。

サリューのメイド調教がうまくいっているようだ。良きかな良きかな。


ダンジョン経営が上手にいっているおかげで、砂糖やらチョコレートといった前世で良く口にした甘味が手に入るようになった。この世界では砂糖が高価なものらしく、チョコレートは存在すらしないそうだ。


典型的な科学の文明が遅れたファンタジー世界だね! 

こりゃ商売sugeeeもできちゃうかもしれないぞ!


問題はリズレルが商売などした事が無いってことと、ダンジョンから生み出した食材は人を魔物化させる効果があるってことだ。別に人が人外化しようが、どうでもいいんだけど、さすがにお宅のお菓子を食べたら、モンスターになったぞ! 責任を取れ! とか言う、クレーマーが出たら怖いよぉ。


どこの世界でも頭がおかしい奴はいるもんだ。


天才ジェイ先生は国落としで忙殺されているし。

悪役令嬢商会作ってぇ! って言ったところで、先生が過労死してしまう。

さすがにリズレルちゃんは身内に優しいのだ。我慢できる心を持っている良い子なのである。


だから、個人用に使用するのです。チョコ美味い美味い。

じーっとチョコレート菓子を見つめていたマリアにも、あーんして食べさせてあげる。

チョコを口に含んだマリアは目をぎゅっと瞑って、幸せそうに悶えていた。


やっぱりヒロインは何でも絵になるなぁ。かわいい。


「マリア、貴女に義弟が出来たとしたら、貴女はどうなさいます?」


「は、はい! リズレル様に義弟様が出来ると聞いておりますが、私にでございますか?」


軽く作った握り拳を手に当て、首を捻るマリア。攻略ヒロインの手腕を拝見させて頂こう。


「……見知らぬ家族の元に一人でやってくるのはとても心寂しいことだと思います。

今までの家族から引き離されてしまうのですから、悲しいし、辛いことだと感じます。

私は天涯孤独の身でございましたが、リズレル様の計らいにより、あの地獄のような家から助けて頂きました上に、学まで授けて頂きました。ラル家の皆様はとてもお優しく、温かい方ばかりで、私はこんなにも幸せになっていいのか悩む日々でございます。故に義弟様も皆様に触れているうちにきっと素晴らしい家族になると思います。だから、私は義弟様と真っ直ぐ向かいあいたいと思います」


両手に胸を当て、目を閉じるマリアが静かに語った。


好感度が高すぎて怖い。そんなに何かしてやったっけ?

扉の隙間から、サリューが親指を立てて見せているのが見えた。あっ、洗脳……。


まぁ、よくわからないうちにフラグを立てて、周囲から溺愛されちゃうのも悪役令嬢の特権よね!


さて義弟が来るまでに、攻略手段を考える。

乙女ゲー世界における義弟は大抵攻略対象の可能性が大である。

家族から虐げられて、愛に飢えているパターンが多く、優しくしてくれるヒロインに執着する。


溺愛のデロアマや! 

場合によってヤンデレのオプションも付いてくるパターンも知っている。


ここは、義弟に優しく、または洗脳をして、リズレルちゃんは本当に良い子ちゃんだ! と周囲から称賛されて、義弟を逆ハー要員にすべきなのでは? いやいや、忘れてはならない事がある。


今回の義弟騒動の裏には陰謀の臭いがするんだ。

心を許したところで背中からズドンと刺されるかもしれない。


殺される前に殺さなくては……!


だから、私。絶対に心を許しません!


「は、初めまして……ぼ、僕、ルフと申します……」


銀髪碧眼の美少年だった。許した。肩ほどで切り揃えた髪を一つにまとめ、お腹の上で重ねた手をもじもじさせ、恥じらいを含んだ表情でリズレルの様子を窺う美少年、ルフ。唯一問題があるとしたら、スカートを穿いているって事かな。まさかの義妹だと……?


「あ、ちゃんと付いてますぅ……」


真っ赤な顔で俯くルフがか細い声で言う。そうか、付いているなら義弟に間違いない。

彼を属性で表現するならば気弱系男の娘or女装男子なのだろう……いや、これから家族になる相手に自分の性癖を暴露するあたり、気弱系とは言わないわな。


どうしてだろう。私の周囲にまともな男性が居ないのか。

パパが私の肩を抱き、説明をしてくれた。


彼の家には男の子しか生まれなく、娘が欲しかった母親が末っ子のルフに女の子の格好を強要していたらしい。本来、七男であるルフではなく、六男の男の子を養子に受け入れる予定であったが、彼が余りに可哀想で引き取ってきたそうだ。別の意味で家族に虐げられているとは思わなんだ。


「王は六男を養子入りさせるようにおっしゃったのではないのですか? お父様」


「いや、兄の思い通りになるのは何か癪でな。自分の息子になるのだから、私が選んでもいいだろう」


パッパと現王の兄弟仲も闇が深いのかもしれない。パパを見ていたリズレルの袖が、ちょんと引っ張られる。そちらに顔を向けるとルフが涙目でこちらを見上げていた。


「ご、ごめんなさい。僕、気持ち悪いですよね……。

で、でも、六男のロベルトよりも頑張りますから、どうか、捨て、ないで下さい……」


目をうるうるさせて、嗚咽を上げそうになるのを必死に我慢している義弟。

リズレルは彼の両手を握りしめた。


「立派なイケメンにしたるわ!」

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