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プロローグ

初めまして。

本作は地続きの第二部となっておりますが、この作品から読み始めて頂いても問題ございません。

異世界に転生したプロマネの活躍、是非お楽しみください。


⭐︎第一部はこちらから⭐︎

異世界PMは不具合を許さない 〜ギルドの独占市場を改修する〜

https://ncode.syosetu.com/n5762lo/


女は諦観(ていかん)に近い感情で、眼前の屈強(くっきょう)な人間の戦士を眺めていた。

背後には高い岩壁(いわかべ)がそびえ、逃げ場はない。

自身の魔力はとっくに底を尽き、手にした武器は刃こぼれして使い物にならなかった。

絶体絶命だが、女には何の感情もない。

元よりそんな感情の機微(きび)を、彼女は持ち合わせていなかった。

ずっと独り。

この戦争も、ただ駆り出されただけ。

立派な思想も、英雄願望も、金銭すら彼女には興味がなかった。


「……これで、おしまいか」


漏れ出た独り言も、まるで他人事のような響き。

女の視界には、戦士が振り下ろす剣の軌跡(きせき)がスローモーションのように迫ってきていた。

そっと瞳を閉じる。

最期なんて呆気なくていいという思いが、女の胸中(きょうちゅう)を占めた。




「……ってところで、目が覚めたのよ。死ぬところだったの!ねぇ、聞いてる!?」

「ええ。はい、申し訳ございません。ただのノイズですので、気になさらないで下さい。それでは次回のステコミは、大川様のご都合に合わせて、来週のこの時間でまた宜しくお願いします。予定はTeamsで共有しておきます。本日はありがとうございました」


俺――ヨシダ・オサムは、画面先のスーツ姿のお偉いさんたちに頭を下げると、回線を落とした。

それから声をかけてきた少女――アダチ・フネに向き直り、苦言を放つ。


「だから、会議中には話しかけるなって言ってるだろ?」

「だって退屈なんだもん!」


フネは俺の言葉に、頬を膨らませて不満を(あら)わにすると即座に反論した。

いや、論じてはいないから反論ではない。

彼女の場合は反射だ。

俺は大きく溜息を吐くと、視線を窓の外に向ける。

窓外(そうがい)では道行く老若男女が、慌ただしく行き交う様子が見えた。

その先では建設途中の建物がいくつも垣間見える。

アステリスク国の復興は順調に進んでいて、だからこそ俺も本来の仕事に注力(ちゅうりょく)する時間を取れるようになったのだが。

――と、ここで俺とフネのことを軽く紹介しておこう。

俺たちは、端的に言えばこの世界の外からきたアウトサイダーだ。

元々俺はIT企業のプロジェクトマネージャーをこなす中年で、フネは普通のOLだった。

ひょんなことから世界を渡り、この地へやってきた異邦者(ストレンジャー)

よくわからない神という存在から若さと力をもらったが、フネは無双の力と無限の魔力というシンプルなモノ。

俺はといえば、元いた世界と通信できるという、変な力を授かった。

俺たち二人は転生後、そのまま行動を共にして、色々あって今に至る。

その辺のことは、追々語っていこう。

いつまでもフネを無視していると、後々面倒だ。


「で。夢の中で、フネはその女だったのか?」


俺はパーソナル・ターミナルを片付けながら、フネの話に合わせるように口を開く。

まだ頬を膨らませたままだった彼女は、自分に興味が向いたことでぱっと表情を和らげた。


「うん。そうそう。でも、ちょっと変なのよね」

「何がだ?」


フネは小さなベッドの上に腰を下ろすと、俺の問いに、枕を抱えてうーと(うな)る。

言い忘れたが、ここは俺たちが拠点にしている安宿の一室だ。

とあることをきっかけに追い出されたこともあったが、今では以前より安い代金で泊まらせてくれている、貴重な宿である。


「えっとねー。なんだか気持ちはその女の人と繋がってるんだけど、私はその光景を上から見下ろしてるような感じ」


夢ではよくあることなのだろうか。

正直フネが見た夢の話など、どうでもよいといえばどうでもよいのだが、俺はなぜか看過(かんか)できない気がしてさらに問いを重ねる。


俯瞰(ふかん)しているということか。どんな容姿だったんだ、その女は」

「人間だよ。美人さんだった。でも目が赤かったような……」

「目が赤い?」


俺は首を傾げて聞き返す。

この世界、といっても俺たちはまだアステリスク国しか知らないが、そんな瞳の色をした人間には出会ったことがない。

やはり、夢は夢か――

これ以上考えても仕方ないと判断し、俺はまだベッドの上で考え込んでいるフネに、手を差し出した。


「とりあえず、飯でも食いながら話の続きでもしよう。この間ガウェインさんに安くて美味い飯屋を教えてもらったんだ」

「ごはん!」


文字通り反射的に彼女は俺の手を取ると、ベッドから立ち上がって満面の笑みを浮かべる。

二人で件の飯処(めしどころ)に着くころには、すっかり夢の話など忘れてしまっていたのだった。

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