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外伝三『シュレディンガーの告白』【収束】

どちらの未来でも、変わらないことがある。


放課後、三人は一緒に帰る。


悠真が真ん中。環奈が左。紅音が右。


クレープを食べたり。カフェに寄ったり。遊園地に行ったり。


テストで平均点を取ったり。体育で手を抜いたり。結社の新入りに挑戦状を叩きつけられたり。


騒がしくて、危なっかしくて、少しだけ温かい日常。


どちらの未来を選んでも、この三人の関係は壊れない。


形は変わるかもしれない。距離感は変わるかもしれない。


でも、三人でいることだけは——変わらない。



そして。


屋上のフェンスに寄りかかった悠真は、まだ告白していなかった。


二つの未来を、脳内でシミュレーションしただけ。


≪虚数演算≫は使わなかったが、天才の頭脳は勝手に確率を弾いてしまう。どちらのルートを選んでも、三人の関係は続く。その結論だけは、確率100%として導き出された。


悠真は空を見上げた。


六月の空。入道雲が遠くに見える。もうすぐ夏が来る。


屋上の扉が開いた。


「悠真ー! 帰ろうよー!」


紅音の声。


「悠真、早くしなさい。アイスが溶けるわ」


環奈の声。


二人が屋上に顔を出している。紅音が手を振っていて、環奈がアイスの棒を掲げている。三本。悠真のぶんも買ってきたらしい。


悠真は笑った。


「今行く」


フェンスから背を離し、二人の方に歩き出す。


シュレディンガーの箱は閉じたまま。二つの未来は重なり合ったまま。


開けるのは、もう少し先でいい。


今はただ、三人でアイスを食べて帰る。


それだけで、十分に面白い。


外伝三『シュレディンガーの告白』 了

――箱を開けるのは、もう少し先。


猫は生きていると同時に死んでいる。


告白は成功すると同時に、まだ始まってもいない。


でも、どちらの未来でも、三人は一緒に笑っている。


それだけは、確率100%の、揺るがない真実だ。

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