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殺し屋と葬儀屋  作者: トムボーイ
10/11

おつりはいらないよ

 亜門百合と名乗った少女を葬儀屋は鹵獲し拷問することはしなかった。

 彼女の余裕たっぷりな表情は彼女の身の安全を保証するものなのか? それともそんなモノはないにも関わらず一歩間違えれば死ぬかそれよりも酷い目に遭わされる可能性があるこの状況で笑みを浮かべているただのイカれ女なのか

 その二択が葬儀屋の頭の中にあったが葬儀屋はこの亜門百合はただのイカれ女だと判断したからだ。

 イカれた人間に拷問は意味をなさない

 葬儀屋は彼女の後ろに誰かが見守っていたりそういったボディガードの存在がないと彼女を地面に叩きつけた時に確信した。

 そして彼女に葬儀屋を相手できるような実力もないということも


「いたた……それで? この後は私を使ってどう遊ぶ……?」


 葬儀屋は彼女から離れる


「やめやめ、お前を叩いた所で意味はねぇってことは今の一連のやり取りで痛感させられたよ、アンタは立派なイカれ女さ」

「まあ、そう言われても文句言えない性格だってことは認めるよ、貴方にそれを言われるのは光栄なような心外なような複雑な気分になるけどね」

「お前が本物のサンビアンカかどうかは今のところ判断はできねぇが、今お前をとっ捕まえてビシバシ鞭を振るうのは勘弁してやる、ほらこれで満足しただろ? 用事がねぇならとっととどっかいきな」

「見逃してくれるのね、優しいね」

「だってもったいねぇだろ? 依頼を受ける前に殺しちゃ」

「あはは、確かに! 貰えるモノは貰っておかないと勿体ないよね」


 亜門はそう言うと葬儀屋の真っ黒な瞳をジッと見つめた。


「うれしいなぁ、君と出会えてよかったよ、葬儀屋さん」


 と言って亜門はニコッと笑った。


「きしょ……」


 それを見て葬儀屋は顔を顰める


「きしょいのは許してね、色んな都市伝説を調査したりするのが私の趣味なんだけど久々の大当たりにこの亜門ちゃんも少々興奮気味でさ」

「あっそ、そんなオカルト好きの女の子がどうして人気アイドルに拳銃を売り渡すような密輸業者になっちまったんだ?」


 亜門はえへへと微笑む


「私のことサンビアンカだって信じてくれたんだ?」

「一先ずはな」

「信じてくれたのは嬉しいけどそのことについては教えてあげられないなぁ、守秘義務ってやつ、お客様のプライバシーは晒せません」


 葬儀屋は亜門の目の前に立ち彼女の顔を間近で覗き込む


「お前に鞭を振うのは勘弁してやるとは言ったが、お前の頭をかち割らねぇとは言ってねぇぞクソガキ」

「教えられませんよ、幾ら私を脅してもむだ」

「……」


 葬儀屋はその真っ黒な瞳で暫く亜門を睨み付けていたが無駄だと悟り顔を上げた。


「マジでどんな根性してやがんだ? お前」

「えへへそんな褒めてもなにもでないよぉ? それで私は殺さないの?」


 葬儀屋の狙いはアイドル山内勘助の自殺をするように唆した人物

 亜門は山内に銃を売っただけで山内の自殺に直接関与しているとは考えていなかったので葬儀屋は彼女を殺す理由などなかった。


「仲間を引き連れてこなくて正解だったなお嬢ちゃん」

「どうして?」

「そうしてたらお前らを皆殺しにしてたかもしれねぇからな、俺がお前を殺さない理由は1つ」


 お前の根性が気に入ったから

 と葬儀屋は語った。


 秋葉原のとあるビルの一室にて強盗事件が起きた。

 強盗事件の現場はヤクザの事務所

 その一室にはむさ苦しい男が数人居たが全員が中国剣を持った子供2人に鎮圧されてしまったのだ。


「サンビアンカ、どこにいる?」


 と独特のイントネーションで子供の1人が床に這いつくばっているヤクザに問う


「し、しらねぇよ」

「……ほんと? うそ?」

「ほ、ほんと、ほんとっ!」

「……ふ~~~~ん、わかった。信じるよ」


 といって子供は剣の柄で男の頭を殴って気絶させた。


「おわった?」


 ともう一人の子供が部屋の奥から姿を現わす。


「知らないって」

「ふーーーん」

「それより、そっちのほうは?」


 部屋の奥から姿を現わした子供は札束を見せ付けるようにして顔の前に出した。


「大量」


 それを見て子供はにやっと笑う

 

「ちわーす! レッドウィングでーす!」


 そんな現場にのこのことやって来たのは岡持ちを持った紅詩

 紅詩は事務所の曇りガラスが嵌められたドアを叩く

 ドアが開かれたらその奥には子供が立っていたので紅詩は驚く


「あれ!? えっと……」


 奥を見ると男達が気絶しているではないか

 レッドウィングの出前を担当してからこういった現場に遭遇すること自体はあった。

 しかし今回はその中でもトップクラスの厄介な現場だと紅詩の長年のバイト歴によって培われたセンスが叫んでいる


「お金」


 子供は一万円をばっと1枚紅詩に差し出した。


「おつりはいらないよ」

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