ep2 旅立ちⅠ
「ん~…!日の光を浴びるのはいつぶりかのぉ~」
ベルベス墳墓を出ると時刻は昼過ぎほどになっていて太陽が真上に射している。アーゼントニアからここまでは徒歩で大体1時間ほどの近場でどうやら墳墓の中にいた時間の方がかなり長かったようだ。
「それじゃあ、ササっと町にもどりましょう」
中途半端に整備された街道を歩くこと一時間、特に賊や魔物に会うこともなくアーゼントニアの町にたどりつくことができた。町の入り口には堅牢な見た目の門があり、そのそばに立っている衛兵に話をつけて門を開けてもらう必要がある。
「ゼックさん、門を開けてもらえませんか?」
ゼックと呼ばれた衛兵の人は僕たちを見て
「おう!今日もお疲れさん!後ろの嬢ちゃんはテオの連れかい?」
エレノアを見て僕に聞いてくる。僕は頷き
「街道の途中で会ったんだ、アーゼントニアに用があるみたいで」
と、適当に理由をでっちあげる。エレノアは笑顔でゼックさんに会釈をする。
「そうか!ようこそ!アーゼントニアの町へ!ここのシンボルは街道からも見えただろうがでっかい時計塔だ!ほかにも各国の大商人が直接売りに来てる商人市ってところもおすすめだな、金に余裕があるなら見に行くといいぜ」
と、言ったくらいに門が開ききる。僕らはゼックさんに礼を言い、アーゼントニアの町に入っていく。
「さて、ここがアーゼントニアよ!どう?なかなか賑わっているでしょう?」
あたりを見渡すと、たくさんの人が行き来しているのがよくわかる。いつも通りのにぎやかな街だ、通り過ぎる住民に挨拶を交わしながら僕らの住んでいる居住区へ向かっていく。場所は二等級区と呼ばれる平民が住むことを許されている場所だ。その中で割かしきれいな家がティアの家だ。二階建ての一戸建てで平民の中でも高価な住居だというのが見てわかる。
「ここがわたしたちの家よ、なかなかいいところでしょう?」
自分の家を紹介するティアにエレノアは
「なかなかいいところじゃのう、ほかのと見た目がかなり違うから驚いたぞ。二人はなかなか金を持っておるようじゃな」
それに対しティアは
「結構頑張ったのよ?コツコツお宝を売っては取って、売っては取って…このマイホームを手に入れるまでは苦しかったわ…」
ぐっとこみあげてくる感動を押し殺して語るティアのその姿は努力家の成果が実った姿そのものだった。
「っと、それはさておきこれからどうするかを話すんだったわね?エレノアはそこら辺の椅子に適当に座っていて、適当に何か作るから」
ティアは台所に向かい、僕はエレノアが座った対面に座る。
「エレノア、君は一体何者なんだい?わけのわからないままここまで来ちゃったから今聞くんだけど」
僕の質問にエレノアは顎に手を当て、少々考える。
「そうじゃのう…何から話そうか…なぁ、テオよ、お主は自分のことを覚えておるか?」
不思議なことを聞いてくる。
「僕はもともと孤児だから自分のことも何も…?」
と言いかけたとき、頭の中で声が響く。
───この手紙は必ず届けて…!
「な、なんだ…?頭の中に声が…!」
───お願い…!テオ‼
「だれなんだ…!君は一体…!」
慌てる僕を見て、エレノアは納得したように語り掛ける。
「ふむ、やはりか…テオよ、お主は近いうちにアストラ大陸に行かねばならん」
「…?なんでアストラ大陸に…?そもそもこの声の正体をエレノアは知ってるの…?」
僕の問いかけにエレノアは首を横に振って
「今はまだ何も答えられん。ひとまずティアが来てからいろいろと話すことにしようかの」
十数分ほどしてティアが大きな皿に小さい肉を焼いたスライスを盛りつけたものを持ってきて
「おまたせ、さっき何の話をしていたの?」
「なんでもないぞ、ただの世間話じゃ」
エレノアが反応し、ふっと笑って先ほどの話をごまかす。気が付くとさっきから頭の中で聞こえていた声は消えていた…
「さて、聞きたいことがあるのじゃが、長年地下に引きこもっていてかなり地理が疎くなっていてのぅ、今の世界について教えてくれんか?」
すぐにティアが任せてと言って近くにある棚の中から地図を取り出して
「いま私たちが暮らしている大陸がウェオルトっていうところで地図でいうところの左下ね、それでその上の方にある橋が架かってる大陸はルフスべニアっていう大陸でタイヒューアっていう種族が大半を占めてるわ、私たちの大陸とよく交流があって商人とかよく来るわ、それでこの右下にある大陸がアストラ、エルフって呼ばれてる魔法に秀でた種族がたくさんいる自然豊かな大陸よ、もう一つのアストラの下にある大きい大陸がクオリア大陸。機工大陸って言われていて大陸そのものが巨大な要塞になってるんだ。最後にヴェンダー大陸。これは地図にはないんだけど全部の大陸の真ん中くらいにあるといわれてるの」
これが大陸の全部かなって言い、地図を棚に戻して席に着く。
「なるほどの…昔とはずいぶんと違うみたいじゃな」
相槌を打ってコホンと咳ばらいをし
「そういえば儂の紹介を全然してなかったの、儂の名前はエレノア・オルカ。今がいつの年代かはわからぬが齢は200は超えておる。墳墓の地下にはわけあって滞在しておった」
エレノアの簡単な紹介を聞いて僕とティアは
「あの地下には別の道があったの!?」
「齢200ってタイヒューアだったり…?」
と、別々の疑問をぶつける。エレノアはハハハと笑って
「まぁ色々聞きたいことはわかるがひとまずこれからどうするかが大事なのではないのかの?」
エレノアに諭され、僕らは我に返る。そうだった、これからのことを話し合うんだった。
「そういえばあの地下にはお宝があるって情報屋に聞いたんだけど本当にエレノアがお宝だったり…?」
ティアが訪ねるとエレノアは首を横に振って
「いいや宝なんてものはない、あそこは墳墓の本当の姿、輪廻転生の根源と言われている場所で回生の泉ともいうようじゃの」
回生の泉、聞いたことがある。昔、伝説級の宝の一覧のようなものを見ていた時に見た名前だ。
「その回生の泉って何なんですか?」
「回生の泉の中に入ると生まれ変わることができる」
僕とテオは実感がわかずに首をかしげる。
「そのままの意味じゃ、転生して新しい人生を歩むことができる」
「新しい…人生…」
そんなすごいものがどうして今まで見つからなかったんだ…?いや、逆にみつからないのか…
「そんなわけで儂はあそこでここを見つけてくるものを待って居った。あそこを見つけられるものは導かれたものじゃからな…っとまた話が脱線してしもうたの」
導かれたもの、心当たりがある。おそらく先ほど頭の中に語り掛けてきた声だ。
「ねぇテオ、ちょっと急な相談なんだけど、この大陸外の遺跡とか調べてみない?」
ティアが僕に相談を持ち掛けてくる、本当に急だ。
「大陸外?僕は別にいいけど、急だね、どうしたの?」
尋ねると
「うん、さっき回生の泉っていう持ち帰れないすごいお宝を見つけたけどあれはお金にはできないでしょ?ほかにもそういったお宝があると思うの、そういったものにちょっと少し興味が出てきちゃって」
「ほかの持ち帰ることのできないお宝を世界中旅して見つけたいって、そういうこと?」
そう聞き返すとティアは頷いて
「せっかくこの家を買ったけどしばらく放置することになるかも」
放置してる間空き家になるわけなのだが…めちゃくちゃにされてたりしたらどうしようと考えていた時だった。
「それなら私らにお任せください!」
と、男性の声が扉の外からする。次の瞬間、扉を開けてこぎれいな格好をした男女2人が家の中へ入ってくる。僕は警戒して短剣に手をかけるがティアはそれを制する。
「驚かせてしまい申し訳ございません、わたくしらはそこのティアネットお嬢様の元従者のハドソンと」
「レーネでございます」
黒いタキシードを着た見た目60はありそうな茶髪の男性とゴスロリ服を着た物腰の柔らかそうな蒼髪で首まで伸びた髪を揺らしている女性が深々とお辞儀をする。
「ティア…この人たちは?それに元従者って?」
困惑する僕はひとまずティアに尋ねると、ティアは申し訳なさそうに
「隠しててごめんね、私って実はこの大陸の領主の娘なんだ」
てへっというようにウインクをして謝るティアを見て僕はめまいがした───
急に現れた元従者二人、彼らがお任せといった理由とは…?
見てくださりありがとうございます。まだまだ進んでおりませんが続きも楽しんで待ってもらえると嬉しいです。




