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魔王様、支配してください!  作者: 春花
エピローグ
24/24

究極逆転劇!

ハッピーエンドを用意しました。最後までドタバタで、みんなの本気をご覧ください。

 そして、恐慌に陥る。


「うわ~! もう~ダメだ~!」


「せっかくあんな命がけで頑張ったのに~!」


「もし閉鎖されてしまいますとX組と因果を結ばれているオージャン様が死んでしまい、お嬢様も死んでしまうのでは!?」


「なにそれ!?」


「ジャンヌは知りませんでしたこと? あ、そういえば最初はいませんでしたね。ちなみにわたくしは知っていましたことよ」


「はあ~! だから何だって言うのよ、マジで!」


 変な張り合いをしている二人もいる中、比較的落ち着いたキネマが真剣な顔で、


「買収しましょう。本家に頼んでお金を積んでもらいます」


「いきなり生々しい!」


「これがキネマの本気か」


 ゴクッと、ネフィとガロウが頬に汗を流しておののいた。


 端からみんなの混乱を見ていたオージャンは機を見計らって、


「後々弱みに繋がる事態を上の者に握られると厄介だ。買収というのは、上の弱みを握っている時に波風立てないよう懐柔する手段として使うものだ」


 前科がありそうな説得力に、みんなの頭に大きな汗が流れる。


「くぐってきた政治の数が違いますことね。さすがは大魔王ですこと」


「じゃ、どうすんのよ、マジで」


 この期に及んでオージャンがまだ落ち着いているので、みんなもなんとなく落ち着いてきた。


「本来なら、煽っておいたシャルマルのクラスを倒すことで回避するはずだったが」


「ナンバーズを!?」


「そんな無謀な!」


 みんな驚いた後、「でもオージャンならやっちゃうかも」と心の中で一致した。


「だが最早そんな時間はない。というわけで最終手段だ」


「まだあんの!?」


「そんなにあるの!? 私一つも思いつかなかったのに!?」


「やっぱ、マジでワイロ?」


 違う違うとオージャンは手を振り、


「愚か者共め。常に逆転の用意をしておくのが、優れた長というものだ」


「おお~」とみんなから歓声が上がるのを気持ちよさそうに受けて、


「というわけで貴様ら、月曜日から全員学園を休むぞ」


「非行に走らせる気だあ~!」


 ネフィの叫びが青空に響いた。



 五週目の火曜日、放課後。職員会議が会議室で開かれている。


「え~、それではまず、二年X組のオンザバージについて結論を下したいと思います。X組の一ヶ月の成果ですが、先日の戦功を同教室から出た反逆行為と引き換えに消失。情状酌量の余地有りとのことで、学生A(仮名)に対する処罰はなし。それにより、X組の戦功は第五階級の堕天使を一体撃破しただけです」


 報告している先生はプリントの二枚目をめくり、


「サポートの仕事は避難誘導と負傷者救助があります。両方共に特に報告はありません。つまり加点要素はなしです。平常点につきましては出席率が非常に悪く、改善の点が見られません。病欠などではなく、明らかなズル休みであると判断できます。練習試合に関しては三対三の代表戦で一勝。サポートランクとクラス対抗の形式で二勝一敗です」


 プリントにまとめたことを口頭で伝え、「質問はありますか?」と締めくくる。


 聖剣所有者に対する講習を受け持っている男性教員が手を上げる。


「先日の戦功と引き換えと言うが、オージャン君の闇の結界により、一般人への被害はゼロだったのだ。あれがなければかなりの被害が出たはず。確かに彼のクラスメイトが情報を流していたことや発電装置を止めたことは大問題だが、ラファエルと戦ったこととあわせて全く鑑みないというのは如何なものだろうか」


 数学の教科を担当している女性教員が、手を上げてから発言する。


「何を言っているのですか。そもそも発電装置が無事ならばオージャン君の力を借りる必要などなかったのです。言ってしまえば、ピンチを演出するためのクラスの結託」


 そこで一旦話を区切ってから、


「とはさすがに言いませんが、それほどの行為なのです。むしろ私は、あの程度の戦功ごときで帳消しにするのは生易しいと思いますが」


 金曜日の職員会議のことがまた蒸し返されそうになり、アステリアが止めて口を挟む。


「そのことについてはもう話がついています。議論の余地はありません」


 さらに、固い声質で冷然と続ける。


「木曜日のX組についての活躍は考えないでください。そして、資料にまとめた事項だけから判断し、X組を存続するべきだと思う方は挙手を――」


「ちょっと待った~!」


 会議室の両開きの扉を押し開けて、まだ傷だらけのオージャンが現れた。


「オージャン君!?」


 さすがのアステリアも、その乱入に驚いて声を上げた。


 ざわつく中、メッシュ先生は勢いよく立ち上がり、


「なんだ! 今は職員会議中だぞ!」


 怒声に怯まず、オージャンは近くのテーブルまで進み出て、


「オンザバージの結論を出すための資料として、X組はこれを提出する」


 と、ドンッと紙の束がテーブルに置かれた。テーブルが揺れた重量感から、かなりの枚数があるようだ。


「これは?」


 下座に座っている若い教員が聞くと、オージャンは魔王的笑みで口を吊り上がらせる。


「二年X組存続を願う署名、五四二一人分だ」


 会議室に衝撃が走った。


「ご! 五千!?」


「島民の半分以上!?」


「一体、いつの間に!?」


 全員が驚く中、オージャンは爽やかそうに髪をかき上げ、


「日曜日と月曜日と今日の午前だけでだ。あえて言えば、ジャンヌのブログに届いた声も加算すれば二万を楽に超えるぞ」


 気になった教員が手を伸ばし、一通りパラパラめくっていく。一枚に二十名ぐらいの名があり、それが隙間なく何枚も続いている。


「確かにX組は協調性に欠け、本来の目的も忘れるような幼稚な輩が多かった。しかしそんな期間があったにも関わらず、これほど島民から愛されているのだ! 〈守るべき者〉との交流を疎かにせず、芯では民のために尽くしていたということだ!」


「……分かりました。参考にしましょう。下がりなさい」


 ざわつく会議室を治めるために、アステリアはそう言う。


 オージャンは彼女と視線を交えてから、つけていないマントを翻すように退室した。


 彼がいなくなってから一番に手を上げたのは、


「広報部部長としていいでしょうか?」


 セルヴィ先生だ。


「はい」


 アステリアに促されてから立ち上がり、


「これほど島民に人気のあるクラスを閉鎖するのは上手くありません。日頃緊急避難などで島民に煙たがられることもある我らです。先程避難誘導で報告がないとありましたが、つまり加点要素もないが、減点要素になるクレームが一件もないということですね。それは珍しいです。人気があるのでしたら、避難時の島民のストレス緩和にもなります。私はX組を残すべきだと思います」


 ざわつきが大きくなった会議室を見回し、アステリアはかしわ手を一つ打つ。


「一旦署名を精査します。三十分後に署名についての報告をし、それからあらためて決を採ります」


 時間を開けることになった。だが、どうなるかはメッシュ先生の渋い顔で想像がつく。



 オージャンが署名を学園に届けに行き、残ったX組の面子はパプリカの一階席で力尽きていた。この数日、店は臨時休業になっている。


 三つのテーブルを合わせて作業台にしていたが、そのテーブルに突っ伏しているガロウは、半ば魂を口から出しつつ、


「し、死んだ。何回人数確認させるんだよ」


「たった三回です」


 にべもなく答えられ、ガロウはちょっと恨みがましい視線で、テーブルに姿勢よく座っているキネマを見た。


「って、キネマ。なんでそんな平気そうなんだ? 日曜も月曜も寝ずに、さっきまで枚数確認してたんだろ?」


「一名の有無で存続か閉鎖が決まるかもしれないのです。水増しなどできませんし、少なく数え間違いなど死んでもできません」


 と答えたが、そのままの姿勢でゆっくりキネマの上体がテーブルに倒れた。寝息が聞こえてきたので、限界を迎えたのだろう。その時、ガロウの魂もついに旅立った。


 男達に比べれば、まだ女性陣の方が元気そうで……それでも全身から疲労の色が窺える。


 ネフィはメガネの奥の目を虚ろにし、


「どうしてオージャンが避難誘導を入れていたのか、真意が分かったわ」


 オージャンの魔力の影響か、レシャールはライトグリーンの髪がボサボサになっているだけで、しっかりと正気を保っている。


「ガロウとわたくし達に〈守るべき島民〉のことを意識させるためかと思いましたけど、島民の人気取りが裏にありましたとは」


「どうりでお菓子とか配っていたわけだ」


『……………………』


「グリアスが沈黙しているわよ~、マジで死んでんじゃね?」


 ジャンヌはテーブルに顎をつけながら、羊のぬいぐるみの尻尾をつまんで左右に振る。


「本体に戻って寝ているんじゃありませんこと? さっきまで大きなぬいぐるみに入って商業区で人集めをしていましたから」


 ついに最後までみんなの前に生身の体を見せなかったグリアスは、そうやって署名集めに協力していた。


 会話が止まり、シンっと静かになった時間があった。ただ時計の秒針が動く音だけが聞こえる。


 はかったように、みんなのため息が重なった。くたばっていた男子も意識を取り戻したようだ。


 それでみんな力無く笑い、濃縮な二日を思い出す。


 ネフィが弱々しく笑ってガロウの方を見る。


「ガロウくんの交友関係はさすがだったね~。お年寄りの票はほとんど取ったし」


「最強だったのは運送会社関連の社員全員の署名を持ってきたときだって、マジで」


 草野球のチームメイト繋がりで集めた票だ。照れた笑いを見せるガロウは、


「そういうジャンヌだって、中等部から高等部の女子人気がすごかっただろ」


「まあ、そこに支持されないと終わりだし、マジで」


 レシャールは起き上がっているキネマに視線をやり、


「マダムキラーのキネマもすごかったですことよ」


「ご常連の方を頼ってさらに紹介もしてもらいました。ですが、お嬢様も実家の伝手を頼り、会社役員の方達からも署名をいただいていたではありませんか。あの名前は強力ですよ。一番上に持ってきておきました」


 疲れ切っているが、達成感のある笑いでみんなは締めた。自分達は本気で全力を尽くしたと。


「…………あれ? あたしは?」


 話題に上がらなかったネフィが、自分を指さしてみんなに聞く。それでみんなは若干目をそらしながら、


「委員長も頑張ってた」


「頑張っていました」


「ええ、頑張っていましたことよ」


「普通に頑張った頑張った」


「グリアスの隣で頑張ったのに~!」


 ネフィは腕をテーブルの上で重ね、そこに額を当てて泣いた。それでもみんな、一般票をたくさん取れたのは、ネフィとグリアスのおかげだと分かっている。


 その時、パプリカのドアが強く開けられた。


「待たせたな!」


『オージャン!』


 疲労困憊だったみんなが待ってましたと立ち上がる。


 期待を込めたみんなの視線に見られ、オージャンは一枚の書類をかざす。


「存続だ」


 歓喜に沸いて、みんな疲れを忘れて喜び合う。ちゃんとグリアスも羊のぬいぐるみに憑依して、テーブルの上で踊っている。


 その様子をオージャンも嬉しそうに見つめ、


「これで余の覇道も一歩前進だ」


 感じ入るように頷く。


 騒ぎの中、その声が聞こえたネフィはピタリと止まって首を傾げる。


「覇道?」


 ネフィにつられてみんなも止まり、全員の視線がオージャンに向けられる。


「ふふふ、余は敗北から――とは言え、負けてはいない。あれはまあ、勇者が卑怯だっただけだ」


 いつものオージャンの負けず嫌いの後、彼は胸を張って腕を組む。


「とにかく色々学んだのだ! 神の奴隷である勇者を倒したところで全ては徒労! ならばどうする!? 大本である神を倒すことこそ最重要課題!」


 ビシッと、オージャンは書類を持った手で天を指さす。


「都合のいいことに、この世界は天使が堕天してくるほど地上と天界の繋がりが太い! つまり、余がいた世界よりも天界にのり込みやすいのだ! ゆくゆくは天界にのり込み、神を倒す! 覚悟はいいな、新生魔王軍の先兵どもよ!」


 いきなり話を振られ、唖然としたクラスメイトの中からまずガロウが、


「ふざけんな!」


 次にジャンヌがオージャンにつめ寄る。


「本気でシャルマルが言ってた通りのこと考えてんじゃないわよ! マジで!」


 しかし、オージャンは本意気で哄笑をし、


「ハーハッハッハッハ! 愚かな! ガロウが言っていたように、余は善意とは真反対にいる存在だぞ! 裏もなく貴様らに協力すると思っているのか! せっかく堕天使と敵対しているという、天界にケンカを売るような土台が出来ている組織で地位を得られたのだ! 副委員長に留まらず、ゆくゆくは学園すらも掌握し、神を倒す!」


 あまりのバイタリティ溢れる熱量に、クラスメイトは逆にちょっと冷静になった。


「そのマニュフェストでは生徒会長になれないと思いますことよ」


「いや、口振りからして学園長を目指してるんじゃね、これ?」


「え、公務員? マジで!?」


『ケ~ケッケッケッケ! 安定した職業に目の色変わる~!』


「いや、学園って私立でしょ。公務員じゃないんじゃない? ていうか、どう考えたってオージャンが学園長って無理あるわよ」


 ネフィに言われるまでも無かったことで、クラスメイトは「ハハハ」と笑うが、キネマだけは難しそうに唸ってから、


「……お嬢様のご実家……学園に対してかなりの発言権がありますよ」


 ピタッとクラスメイトの笑い声が止まり、オージャンの哄笑だけが続く。


 なくはない! なくはなくなってきた!


 みんなは青ざめる。まさか後ろ盾を見込んでレシャールを助けたのだとしたら……………………さすがは大魔王! やることに無駄が無さすぎて、驚愕を通り越す。


 頼りになるリーダーだが、大魔王はやっぱり大魔王だ。


 好意的な気持ちと戸惑いの狭間で揺れ動くクラスメイトの中、決心がついているレシャールとキネマだけは、これから大変だと苦笑する。


「余は神の思惑など鼻歌混じりに越えていく! 神め! 世界を救うために余をこの世界に召喚したことを後悔するがいいわ! ハーハッハッハッハッハッハッハッ!」



 大魔王オージャン。異世界で勇者に敗北し、神の奴隷として閉鎖間近のクラスで副委員長となる。だがそのことにより、やがて名実共に大魔王に返り咲くのだった。

 オージャンの凄いところは、学園内の話を学園外にまで広げて解決策を見出したところですね。視点・発想を飛躍できるとは……こんな頼りになる上司がいれば!

 というわけで、オージャンの見事な手腕により閉鎖を回避しました。彼の壮大な野望もなくはないみたいです。

 この続きを書くとしたら、次は七月の話になりますね。期末テストの話ですね。学業・個人実技・クラスチームワークの三つのテストがある設定です。

 ヒマができたら書きます。理想の上司を書け、無能の上司にはひどいことができるので! いいストレス発散ですので! あ! 私とはまったく関係ありませんけど!

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