捨てられる悲しさというのは身に染みている(スーテラ)
本当に出ていった……。
軽々しく人の事情に首を突っ込んだことをこれほど後悔したのはいつぶりだろうか。
私がルファの部屋で立ち尽くしていると、ただならぬ様子を察した子ども達が集まって口々に問うてきた。
「お姉ちゃん、帰ってくるよね? いつもみたいにどこかに行ってるだけだよね?」
私が答えられないでいると、状況が分かっていそうな年長の子どもが言葉をこぼした。
「私達、見捨てられちゃったんですか?」
その言葉は、すぐに子ども達の間で波及した。
不安が手に取るように伝わってくる。
「捨てられたって、嘘だよね?」
「でもあんなお姉ちゃん初めてみたよ」
「じゃあ本当にもう帰ってこないの?」
「これからは良い子にするから……だからスーちゃん、お姉ちゃんを連れて帰ってきてよぉ」
口々に子ども達が聞いてくるけど、私に返してあげられる言葉はなかった。
あの馬鹿。
なんで子ども達のことを信じてあげないんだか。
ぽっとで私の方が好かれているなんてあるわけないのに。
私はあなたの代替物にされていただけなのよ。
その証拠に、求められるのはあなたがしてきたであろう事ばかりだった。
当然上手くいくはずもなく、笑われ役として人気があっただけ。
それなのにどうして子ども達の寂しさを分かってあげられないんだか。
余裕がなかったのはわかるけどさぁ。
結局私は、「きっと出かけているだけよ」なんて気休めの言葉しか吐けなくて。
そして昼ご飯の時間になってもルファは帰ってこなかった。
いつもは一時帰宅してご飯を作っていくか、作り置きしてあるのに、今日はそれもない。
これは本格的に見捨てたか?
参ったな。これで私まで出ていったら完全な悪者でしょ。
とはいえ、大人数のご飯なんて作ったことないし、そもそも私はサバイバル飯しか作れない。
こんな私がどうやって料理しろと?
しかし状況は待ってくれなかった。子ども達がお腹を空かせて嘆き始めている。
本当にあいつ一人で作っていたのね。
これだけ人数がいるんだから一人くらいは手伝っていたのかと思った。
誰に聞いても作れないと答えるばかり。
手伝わない方も悪いのかもしれないけど、いくらなんでも抱え込みすぎでしょ。
責任感が強いのはいいけど、結局潰れているなら世話ないわ。
幸い材料はあったので、買いに行かなくて済むだろう。
この状況で買い物なんて行きにくくてしょうがないから、そこは助かった。
ありものでなんとか作れるものを作ったけど……。
ルファが出ていった事実と、ご飯の不味さからか、いつも賑やかな声が聞こえてくる昼食の時間は沈黙に包まれていた。
私はなんとか場をとりなすために、子ども達に声をかけた。
「私、料理がそんなに得意じゃないからさ、美味しく作れないんだよね。だから夜ご飯は皆で作らない?」
私が尋ねると、子ども達の中で一番年長の少女が言葉を発した。
「あの、それは構わないんですが、買い物は一人で行かないで欲しいです」
そうだよね。私にまで出て行かれると思うと、耐えられないんだろうね。
そこまでする義理がないと言えばそうだけど、私も元は孤児だった。
捨てられる悲しさというのは身に染みている。
だからこそ、子ども達を見捨てるような真似をしたルファは許せないと思う。
私が勝負を制したら、目的のついででルファ達から手を引かせるつもりだったけど、彼女自身はもう救わなくていいかな。
身近な人すら大切に出来ないような奴なんて、奴隷にでもなんでもなればいい。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。今日明日で出ていくような事はしないから。ずっとは居られないけど、あなた達を自立できるよう育ててから出ていくわ」
それがこの子達からルファを奪う者としての義務だと思うから。
私は、彼女を地獄に落としてやると心に決めた。




