第九話 我々にとってのはじまりの街に到着
翌日
おはようございます。五体満足で生きてて良かったです。
バリケードも特に壊れてはいないっぽいし、まあ大丈夫かな。
朝ごはんは近くにあった鳥の巣(かなりデカい)から卵を拝借したので、目玉焼きになります。
鑑定して無精卵だった奴だけ選んできたから怒らないはず・・・。
あと昨日の野菜の残りも食べて、川で顔洗ったら準備完。
制服着たまま寝てたから、ちょっと居心地悪い。
制服もシワになってるところとかあるしね。
今日の予定は、とりあえず近くの国に行ってみて、情報収集をすること。
財布持ってたメンバーのお金は図書カードとかも含めてこっちの現金に変換されたらしいので、お金には困らない。
便利な世の中・・・。
「んじゃ留守番よろしく」
「ラジャー」
朱夏と秋白が拠点関連で残りたいらしいので、他のメンツで国にはいくことにした。
一瞬建材集めとかに氷人いるのでは?と思って聞いてみたら、男子組は一瞬顔を見合わせて、真顔で
「「ダメ」」
とのことだったので、だめなんだと思います。ハイ。
下山を開始すると、すぐ踏み固められた山道が見える。
結構人通りはあるらしい。誰もいないけど。
地図で見たとおりだな…と思いつつ、その山道にいる物体というか、生物?に目を向ける。
透明で、つるんとした形。ゆっくりと体を引きずるようにして地面を這っている。
どう考えてもスライムだな、これ。
まあ一応鑑定使おう…。
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Lv.3
マジックバブル
ステータス(所持ポイント:0)
HP:70 MP:50
STG:25 INT:15 VIT:30
AGI:10 DEX:20 LUK:10
装備
武器:なし (初期装備が選択されていません)
頭:なし 体:なし 空 靴:なし 盾:装備不可
装飾品:なし
スキル
攻撃:
防御:
支援:
妨害:
耐性:[物理耐性I]
ステータス:
その他:
種族能力:再生
使用可能魔力:200
技:小再生 使用魔力:5
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スライムだけどスライムじゃなかった件について。
マジックバブルってなんやねん。魔法の泡ってなんやねん。
まだ向こうは気づいてないっぽいけど、あそこ通らないといけないしなー。
「あれどうしよっか」
指をさすと、氷人と金央が同時に「あー」とこぼす。
「遠距離組いないしねー」
「…石投げようか」
そう言ってもうすでに石を見つけて手の上でポンポンと投げている。
スポーツ全部周回しているマン強い。
そして、そのまま渾身のストレートがスライム(仮)に命中。
そして反応する間もなくはじけていった。
‥‥。
うーん、ワンパンか。
STR300って怖いな。
あの感じだと、癪ながら我々より防御力のあるスライムと同じく、氷人の攻撃を食らったら死滅してしまう。
さすがに我々レベル1で何の耐性もないからだと思うけど。
「さて、国行きますか」
「…おー」
そして、5分でスライムが完全に忘れ去られるのであった。
とどめを刺した当の本人すらほぼ忘れて、他2人との会話を楽しんでいたのだった。
そして、歩くこと約1時間。
まさかこんなにかかるとは思わなかったのだが、途中途中でスライムがいたため、やり過ごしたり投石したりして少しだけ時間を食った。
それよりも時間を食ったのはひとえに私の体力不足である。
半分くらいでもうひぃひぃ言ってたからね。金央は今疲れ始めたくらいだし、氷人は涼しい顔している。
引きこもりの体力・・・。
今度ジョギングするかー…。
さて、目の前に見えるのは巨大な壁!
どこまでも続く壁!
どこの巨人が攻めてくんの?レベルの壁。
まあ、ドラゴンとかいるだろうし…仕方ない。
とりあえず門番さんと話をしよう・・・。
としたら、門番さんがこっちに気付いた。
「ようこそ、フォース国へ。身分証はお持ちですか?」
いるんかーい。
いるんかーい!!
大事なことだから二回言いました。
まあこれ嘘ついてもしょうがないからね、ちゃんとホントの事言おうね。
「いえ、持ってないです」
「わかりました…」
さーて何を言われるかなー。
ちょっとドキドキしますね。
こういう時って追い返されたりするんだろうか?されたらされたでやだけど…。
「どうぞお通りください。城内へは魔法陣で転送いたしますので、そのままで大丈夫です」
…。
セキュリティ大丈夫????
それでいいん?マジでそれでいいの???
普通入れないもんだよ?信用できない人間はいれないもんだよ???
まあ、これで「それでいいんですか!!?」と言っていぶかしげにされても困るので、とりあえず入ることにする。
まあ、このまま突っ立っとくだけだけどさ。
足元に彫ってある溝に光が集まり始める。
複雑な模様に水が流れるように、白い光が集まり、陣を形成していく。
そして、魔法陣がひときわ強い光を放ち、私は思わず目を閉じた。
そして、聞こえる雑音。
人の声、荷車の音、かすかに揺れている何かしらの物。
ゆるりと目を開けると、そこは現代とファンタジーを織り交ぜたような、異世界の街だった。