93
日曜日の夜。
愛野宅と雛山宅のそれぞれのお風呂タイム。
93
愛野宅
久々の遠出で、大して身体も動かしていないのに身体は疲れていた。
そんな身体を熱いぐらいの湯船で癒やす。
湯船に深々と浸かっている明の身体には、赤い痕が鮮やかに残っていた。
テント内での事情の名残。
キス以上の事をしたのは、今日が初めて。
お互いを欲して、ベッドの上で盛り上がった。
流石に場所が場所なだけに、最後までは致してないが・・・・
「やっぱり・・・・オレが、女役なのか・・・」
別に絶対にこっちがいい!なんて拘りはない。
女性とのセックスも大半は年上の女性だった事から、主導権を握られることもしばしばあった。
リードしなければと男としてのプライドは無く、お互い気持ちよければそれで良いと思っている。
なので今日あった事に対しては、明的には問題だとは思っていない。
白田が明の股の間に、アレを挟んだことなんて・・・・
その時の事を思い出して、頬が自然と赤くなる。
この歳で、素股をさせる方の経験をするとは思わなかった・・・
嫌ではなかったものの、その瞬間に我に返り急に恥ずかしくなった。
だが興奮していた男があまりにも色っぽくて、相手の求めるままに応じた。
その行為で相手が自分に何を欲しているか、理解できた。
自分を抱きたいと思っているのだと。
もしかしたら、身体を鍛えていたのはそれもあったのかもしれない。
てっきり太ったのかと思っていた明は、トップスだけ脱いだ男の身体を見てその時に違うんだと知った。
顕になった裸体は見事なまでに筋肉が乗っかり、以前より一回り大きく見えた。
元々着痩せするタイプだから、脱いでその凄さが解った感じだ。
逞しく男らしい体つきになった男に、惚れ惚れもしたが・・・・少しばかりジェラシーを抱いた。
オレももっと、鍛えようかな・・・・と。
体格や骨の太さが違うのだから、白田の様には成れなくとも・・・・・もう少しばかり自分も筋肉をつけたいという変な男のプライドが湧き上がった。
セックスに関してはプライドはなくとも、見た目には妙な拘りを持っている明。
「おしっ、ジムのメニュー組み直して貰うか!」
そう意気込みながら、勢いよく湯船から立ち上がった。
******
雛山宅
「白田さんも明さんも、めっちゃ浮いてたよ〜」
風呂場で反響する、雛山の声。
ぬるま湯に浸かりながら、縁に置いているジップロックに入ったスマホに向けて今日あった事を話している。
『あはははは。確かにあの2人には、回転寿司は似合わないよなぁ〜〜』
「普通ならスエットの僕でも溶け込めるのに、あの2人と一緒なもんだから僕まで変に目立っちゃってさ〜」
『ははははは。その場面、目に浮かぶわぁ」
スピーカーで話している相手は、鷹頭。
今日どうだった?と心配して・・・・いやもしかして面白がって、LINEをしてきた。
丁度お風呂に入る直前だったので、このまま風呂場で通話すればいいやと思ったのだ。
『けど普通に生活してたら、あの2人とそこまで仲良くなれないもんな。心配して家に来てくれるなんて、羨ましいよ』
「それは・・・・・鷹頭、僕をイジメてくれてありがとう」
『は!?何だよそれ』
「だってさ、イジメの事が無かったら白田さんが声を掛けてくれる事なんて、一生無かったと思うもん。だからありがとう〜ね」
『何か・・・すっげ〜複雑。めっちゃ反省してるのに・・・・・だけど、そう言われると少しは気持ちも軽くなるかな〜〜』
2人の行き違いから起こったイジメは、今では笑い話として話せる。
あの時の事を思い出せば、投げつけられた酷い言葉に今も胸にグサリと刺さるものはある。
だが、鷹頭も影では苦しんでいた・・・・そう思えば彼が言った言葉を全て許せた。
2人の笑い声が風呂場に響く中、雛山はふと思い出す。
「なぁ、鷹頭。一つ聞いてもいい?」
『何だ?』
「ゲイの僕が、友人でも良いの?もしかしたら、僕が鷹頭に恋しちゃうかもとか思って身構えない?」
『あ〜〜〜・・・恋されても、俺はそれに答えられないからな。無駄だぞって言うかな〜〜。つかお前のタイプには程遠いし』
「ん?タイプなんて、僕言ったっけ?」
『いや・・・・見てたら解るし』
「え!?どういう事!?」
自分には理想のタイプなんて無いものだと思っていた。
芸能人では江口洋介と言っておきながら、それはあくまで憧れの対象。
鷹頭が気づく程に、自分はわかりやすかったのだろうか・・・・。
『うちの事務所の男連中には見向きもしないけどさ、トマト急便の担当の人とか、隣の部署の派手な頭の新卒者とかよく見てるぞ。2人とも似たタイプだし』
「え・・・嘘・・・」
『自覚なしかよ・・・・。昔やんちゃしてました、みたいな人がタイプなんだと思ってた』
鷹頭の指摘に、何となく思い当たる節がある。
少し悪そうな見た目の人には、極端に反応してしまう。
それは自分が虐められてた過去があるから、警戒して意識しているのかと思っていた。
だがよくよく考えてみれば、それはおかしいのだ。
今までイジメていた人間は、自分と同じような普通又は地味な人間ばかりだったから。
ヤンキーとされる部類とは無縁だった。
そう考えれば・・・意識して視線を向けていたのは・・・・・・ただたんに好みのタイプだったから・・・
「まじか〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
『はははははっ今更知ったのかよ。そういえば・・・・』
「?」
『亀田さんも、そういうタイプだよな』
「んな〜〜〜!!???」
言葉にならない雛山の悲鳴が、風呂場に大きく響き渡る。
きっとご近所さんまで聞こえただろう声に、雛山は気にする余裕も無かった。
鷹頭の一言に、心臓が暴走したように高鳴り始めた
94へ続く




