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92

恋人のお父さんにご挨拶を!と緊張な面持ちで愛野宅へ訪れた白田。




92



愛野宅


雛山を家に送り届けてから、白田は明の家へ訪れていた。

朝の予定ならば、明との別れを惜しみながら帰宅している時間。

だが交際を知ってしまっている太郎に、何も言わずに帰ることは流石に出来なかった。


掘り炬燵がある居間。

そこには並んで座る明と白田。

そして、2人の正面には太郎が座っていた。

何も初めて顔を合わせるわけではないのに、白田は緊張の面持ち。

背筋をピンと伸ばし、両手拳は膝の上に置かれている。


「そんなに畏まらなくていいのに」


白田の様子に、苦笑する太郎。


「いえ。本当なら、ちゃんとご挨拶の日取りを決めてから伺うべきですので」


「30手前の男の交際に、わざわざ親に挨拶に来るのもおかしいだろう〜が」


大げさな男に、明は呆れ顔。


「そうだけど。太郎さんとは、何度も顔を合わせてるから・・・素知らぬ顔はできないよ」


「へぇへぇ・・・」


適当な返事をしながら明は腰を上げ「茶入れてくる」と、居間を出ていった。

2人きりになった空間。

太郎はいつもの様に穏やかな笑みを、白田に向けている。


「本当にそこまで重く考えないでね。僕は白田君に、物凄く感謝してるんだから」


「感謝・・ですか?」


「事件の事は知ってるかい?」


「はい・・・」


「腰の傷の事も?」


「はい、それも今日聞きました」


「彼女が亡くなって一年近く、明君塞ぎ込んでしまってね・・・。日富美ちゃんや雅君の支えがあって、大学受験に向けて前向きになってくれた。・・・・・けど・・・本当は、何かに打ち込んでいる時間は、現実を直視しなくて済んでいたからかもしれないけどね」

「・・・・・・・」



「それから明君は僕を心配させないようにって、ずっと平気なフリをしてた。そんな彼に気付かないふりをして、僕は見守る事しか出来なかった・・・。僕が気にかけてしまうと、明君の傷口を広げてしまう気がして・・・・・・・」


当時を思い出したのか、太郎はそこで一度言葉を区切る。


「いつか明君に、偽る事もなく弱い部分をさらけ出せれる人が現れたらって願ってたよ。そしたら、白田くんが現れたんだ」


「・・・・同性だという事に、抵抗はないですか?」


「最初は日富美ちゃんがね、いずれはお嫁さんに来てくれるかな〜って期待してたんだ。だけどね・・・あの事があってから、明君は女性にそういう気持ちを持てなくなっていたみたい。もういい年齢だし学歴や見た目から、ご近所さんや僕の会社の人からお見合いの話も何度もあったんだけど、頑なに女性との交際を拒むんだ。僕はそれでも良いと思ったけど・・・この先1人で生きていく明君を想像すると父親としては不安でね。なら雅君みたいに、同性でも人生を共に歩むパートナーが出来ればとも考えてたんだ。・・・・だから白田君がご飯を作り来たって聞いた時は、もしかしてって思ったんだ」


「あの時ですか!?まだ太郎さんとは面識が無かったのに」


「何があっても、家に他人を入れたがらないんだよ。由美さんも、日富美ちゃんの親友だからって気を許してたけど・・・それでも気を許したのは出会って4年だよ?。それなのに会って間もない白田君を家に入れたって聞いた時は、本当にビックリしたよ」


あの時は半場強引だったが・・・・

本当に明が嫌だと思っていたら、あの拳を白田に振るってでも止めていただろう。


「カニ鍋の時に、明君と喧嘩してたでしょ?なのに明君は君を家に入れてた・・・・それに何かと君の事を意識してたから、もしかして明君は白田君の事を好きなのかな~~って」


そんな前から・・・・・

まだお互い自分の気持ちに気付いてなかった時だ。

それなのに太郎はいち早く気がついていた・・・・流石、息子を見守っていただけはある。

明の変化にもう既に気がついていたなんて・・・。


「だからね、今更驚かないよ。そうなれば良いな〜って、2人を見ていたからね」


ふふふと笑いながら白田に優しい視線を向けている太郎に、白田はただただ頭が上がらない。


「ちょっと癖が強い息子だけど、これからもよろしくね」


「はい!こちらこそ、宜しくお願いします」


ペコリと頭を下げる白田に、太郎は嬉しそうな笑い声をあげる。


「癖が強くて悪かったな〜〜」


そこで明は三人分のお茶と茶菓子をトレイに乗せて戻ってきた。

最後の2人の会話が耳に入っていたのか、嫌そうな表情で太郎の言葉を反復する。


「わぁ。美味しそうだね」


「帰りのサービスエリアで買った」


明の手によって置かれたお茶と皿に盛られたミカンの和菓子に、太郎は目を輝かせる。

ちょっとのトイレ休憩で寄ったサービスエリア。

あまり時間が無い中、太郎へのお土産として白田が選んで買ったものだ。


「サービスエリアって事は、遠出したんだね。何処に行ってきたの?」


「キャンプ場。グランピングのレンタルで、一日ゆっくり出来た」


「グランピング!?テレビでやってたよ、オシャレなテントだよね。写真ないの?」


「有りますよ」


「見せて見せて~」


スマホを取り出す白田に、太郎はテーブルの上に乗り上げる勢いで前のめりになる。

何気ない親子の会話から始まる雑談。

興味津々な太郎に、無愛想ながらも今日の事を話す明。

愛野家の一員になったような感覚で、2人の会話に混じる白田。

この暖かな空間に最初の緊張は溶けて無くなり、白田の心はほっこりと和らいでいた。



93へ続く

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