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今日はフスカルに行く日だった雛山。
だが日曜日の事を考えると、行く気分でもなく・・・・
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双葉広告代理店
デザイン部
今日の仕事も終わり。
皆それぞれに帰り支度をしている。
雛山もこれから白田と共にフスカルへ向かう。
ほぼ時間通りに終わる雛山が先に待ち合わせ場所に居る事が多く、そう焦る必要もないのだが・・・いつになく帰り支度をする手が重い。
鷹頭との今までの蟠りがなくなり気分も良い筈なのに・・・やっぱり日曜日の事を思い出すと気が沈む。
今日は・・・・フスカルの気分じゃないなぁ・・・帰ってNetflix一気観しちゃおうかな。
といつものルーティンをやる気分でもなくなる。
「はぁ・・・・」
「お前、今日何度幸せ逃した?」
パシンと肩を叩かれる。
叩いた相手を見ると、にこにこ顔の鷹頭。
あぁこうやって普通に話し掛けてくれるとか、入社以来だなぁ〜と少し嬉しく感じてしまう。
「何、しけた面してんだ?明日は休みだぞ?」
「ん〜〜〜そうなんだよ・・・まだ仕事あったほうが気が紛れるのに」
「何だよ・・・何かあんのか?」
「ふふふっ。よかった、仲直りしたのね」
話の途中で割って入るのは、鷲森。
仲の良かった2人に戻ってほっとした表情だ。
「今日はずっと溜息ばかりで、気になって仕方なかったわよ」
「すみません・・・」
そんなに煩かったのか・・・と周りの事を気にせずに、盛大に溜息ばかりついていた自分を反省。
「鷹頭君、相談に乗ってあげてよ。休み明けもこの調子じゃ、私も釣られて溜息ついちゃいそうよ」
「はい、そうします」
鷲森の提案に、頷いて見せる鷹頭。
彼の返事に満足したのか、鷲森は「それじゃ、おつかれ様」と鞄を持って二人の前から立ち去った。
「この後、白田さんと行くんだろ?」
「いや、気分が乗らないから・・・・どうしようかなと迷ってた」
「そんなに!?なら、飯行こうぜ。話聞いてやるよ」
鷹頭の誘いに、それも悪くないなと思えた。
「うん、じゃ今日は鷹頭とご飯行こうかな」
百舌鳥から暖かな視線が向けられている事にも気付かず、2人は「何食べる?」と話しながら事務所を後にする。
エレベーターで1階に向かう途中、雛山は白田に『今日は予定が入ったので、フスカルは止めときます』とLINEを送った。
だがそのLINEが既読がつく前に、到着したエレベーターホールでバッタリ白田と鉢合わせ。
「あっ白田さん、今LINE送ったんですけど」
「丁度、見ようとしてた」
そう言った彼の手にはスマホが握られている。
そして白田の視線が、雛山の隣の青年に注がれる。
「今日は、フスカル行くの止めときます。鷹頭とご飯食べに行くので」
「そうか。解った」
この状況に白田は特に疑問に思っていないのか、あっさりと納得し2人の青年に「おつかれ」と声を掛けてエントランスを抜けて行った。
「なんか、言われると思ったんだけど・・・」
「・・・・・・・はははっ」
呆気の雛山の呟きに、空笑いの鷹頭。
その直後、雛山の手元にあるスマホに通知音。
すぐに画面を確認すれば、相手は先程その場に居た白田。
「え・・・」
まさかLINEで何か言われるの?と思いつつ、メッセージを確認した。
そこにはpeipeiで2万円の贈り物。
そして『給料前だろ、これで2人で美味いもん食え』のメッセージ。
「「イケメン!!!」」
白田の厚意に、2人の声がハモった。
それから2人は臨時収入により、普段は絶対に行かない少しお高めの焼肉屋へ来店。
畳の個室で、生まれてはじめて食べる特上肉に2人は気分もMAXになっていた。
「はぁ?プロボクサーを殴った!?嘘だろ・・・」
「頭だよ?頭をボコボコ殴ったの・・・・ねぇ、マズイよね」
「いや・・・まずかったら、その場でやり返されてただろう?」
「そうかな〜〜〜」
「けど愛野さんがお膳立てしてるなら、行くっきゃないだろう」
「うう〜〜〜〜〜」
「何て人?」
「ええとね・・・亀田・・・」
「竜一?」
「そうそう、そんな名前。知ってるの?」
「いやいやいやいや、スーパーフェザー級日本王者だぞ。世界進出も秒読みって時に、所属ジムを畳むって新聞にデカデカと載っていたぞ」
鷹頭の言葉に、目をパチパチとさせる雛山。
ボクシングは全然興味がないので、級とか言われてもピンと来ないが【日本王者】という単語だけが頭の中をぐるぐると回る。
「・・・・・・・・・・・ん?同姓同名?」
「ボクサー界で、亀田竜一って1人しか居ないって。つ〜かそんな凄い人と、出かけるって凄いじゃんか!」
「んじゃ、代わってあげる」
「いやいやいや、俺が行っても誰?ってなるでしょ〜〜に」
「そんなの聞いたら、余計に会い辛くなるじゃんかぁ〜〜〜」
「ははははっもう諦めろよ。にしても愛野さん、凄い知り合いいるんだな・・・」
「聞かなきゃよかった・・・」
「まぁ俺はさ、たまたま親父が格闘技好きだからその影響で知ってただけ。まぁ・・・・亀田選手に関しては、格闘技に無関心だった母さんもミーハー心出てるけど」
「何で?」
「普段は目つき悪くて強面だけどよ、笑うとエクボが浮き出るだろう?泣きホクロも相まって、ギャップがあって堪らんのだと」
「俺には、よくわからんけどな」と続けて話しながら、メニューを開く鷹頭。
雛山は、ふとあの時の事を思い出す。
竜一が笑った時・・・・・身にまとっていた雰囲気がガラリと変わった。
一気に幼く見えた竜一の笑顔。
トクン・・・・・
頭に思い浮かべた竜一の顔に、心臓が一瞬だけ強く脈打つ。
「?」
微かに感じた体の異変。
雛山は左胸に手をあてて、首を捻る。
「どうした?心臓バクバクするほど、飲んでねぇ〜だろ?追加頼むけど、どうする?」
「あっホルモン食べたい」
「いいねぇ〜どこにするよ」
「他に、何食べようかな〜」とメニューに視線を下ろす雛山。
先程感じた鼓動の事は、すでに頭から消え去ってしまった。
日曜日の事は気が重いが、こうやって愚痴を言える相手が出来ただけで気分も紛れる。
それも自分の性癖を知っている相手に、もう隠す必要もない。
それは鷹頭も同じ事を思っているのか・・・・入社時の時よりも、遠慮も無く距離感も近く感じる。
これが・・・・友達か・・・・
同じ歳の友人が出来たことが擽ったくもあり、そして嬉しかった。
78に続く
ボクシングの事は本当に詳しくないです!
なのでおかしいと思ったら、コソッと教えて下さい。
級は体重で決まりますが、竜一の身長178~180センチで軽すぎるのもと思ったので・・・・だけどスーパーフェザー級って58.97キロ以下なんです。
一時的な体重だったとしても、軽すぎる・・・・




