表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/162

77

今日はフスカルに行く日だった雛山。

だが日曜日の事を考えると、行く気分でもなく・・・・


77



双葉広告代理店

デザイン部


今日の仕事も終わり。

皆それぞれに帰り支度をしている。

雛山もこれから白田と共にフスカルへ向かう。

ほぼ時間通りに終わる雛山が先に待ち合わせ場所に居る事が多く、そう焦る必要もないのだが・・・いつになく帰り支度をする手が重い。

鷹頭との今までの蟠りがなくなり気分も良い筈なのに・・・やっぱり日曜日の事を思い出すと気が沈む。

今日は・・・・フスカルの気分じゃないなぁ・・・帰ってNetflix一気観しちゃおうかな。

といつものルーティンをやる気分でもなくなる。


「はぁ・・・・」


「お前、今日何度幸せ逃した?」


パシンと肩を叩かれる。

叩いた相手を見ると、にこにこ顔の鷹頭。

あぁこうやって普通に話し掛けてくれるとか、入社以来だなぁ〜と少し嬉しく感じてしまう。


「何、しけた面してんだ?明日は休みだぞ?」


「ん〜〜〜そうなんだよ・・・まだ仕事あったほうが気が紛れるのに」


「何だよ・・・何かあんのか?」


「ふふふっ。よかった、仲直りしたのね」


話の途中で割って入るのは、鷲森。

仲の良かった2人に戻ってほっとした表情だ。


「今日はずっと溜息ばかりで、気になって仕方なかったわよ」


「すみません・・・」


そんなに煩かったのか・・・と周りの事を気にせずに、盛大に溜息ばかりついていた自分を反省。


「鷹頭君、相談に乗ってあげてよ。休み明けもこの調子じゃ、私も釣られて溜息ついちゃいそうよ」


「はい、そうします」


鷲森の提案に、頷いて見せる鷹頭。

彼の返事に満足したのか、鷲森は「それじゃ、おつかれ様」と鞄を持って二人の前から立ち去った。


「この後、白田さんと行くんだろ?」


「いや、気分が乗らないから・・・・どうしようかなと迷ってた」


「そんなに!?なら、飯行こうぜ。話聞いてやるよ」


鷹頭の誘いに、それも悪くないなと思えた。


「うん、じゃ今日は鷹頭とご飯行こうかな」


百舌鳥から暖かな視線が向けられている事にも気付かず、2人は「何食べる?」と話しながら事務所を後にする。

エレベーターで1階に向かう途中、雛山は白田に『今日は予定が入ったので、フスカルは止めときます』とLINEを送った。

だがそのLINEが既読がつく前に、到着したエレベーターホールでバッタリ白田と鉢合わせ。


「あっ白田さん、今LINE送ったんですけど」


「丁度、見ようとしてた」


そう言った彼の手にはスマホが握られている。

そして白田の視線が、雛山の隣の青年に注がれる。


「今日は、フスカル行くの止めときます。鷹頭とご飯食べに行くので」


「そうか。解った」


この状況に白田は特に疑問に思っていないのか、あっさりと納得し2人の青年に「おつかれ」と声を掛けてエントランスを抜けて行った。


「なんか、言われると思ったんだけど・・・」


「・・・・・・・はははっ」


呆気の雛山の呟きに、空笑いの鷹頭。

その直後、雛山の手元にあるスマホに通知音。

すぐに画面を確認すれば、相手は先程その場に居た白田。


「え・・・」


まさかLINEで何か言われるの?と思いつつ、メッセージを確認した。

そこにはpeipeiで2万円の贈り物。

そして『給料前だろ、これで2人で美味いもん食え』のメッセージ。


「「イケメン!!!」」


白田の厚意に、2人の声がハモった。


それから2人は臨時収入により、普段は絶対に行かない少しお高めの焼肉屋へ来店。

畳の個室で、生まれてはじめて食べる特上肉に2人は気分もMAXになっていた。


「はぁ?プロボクサーを殴った!?嘘だろ・・・」


「頭だよ?頭をボコボコ殴ったの・・・・ねぇ、マズイよね」


「いや・・・まずかったら、その場でやり返されてただろう?」


「そうかな〜〜〜」


「けど愛野さんがお膳立てしてるなら、行くっきゃないだろう」


「うう〜〜〜〜〜」


「何て人?」


「ええとね・・・亀田・・・」


「竜一?」


「そうそう、そんな名前。知ってるの?」


「いやいやいやいや、スーパーフェザー級日本王者だぞ。世界進出も秒読みって時に、所属ジムを畳むって新聞にデカデカと載っていたぞ」


鷹頭の言葉に、目をパチパチとさせる雛山。

ボクシングは全然興味がないので、級とか言われてもピンと来ないが【日本王者】という単語だけが頭の中をぐるぐると回る。


「・・・・・・・・・・・ん?同姓同名?」


「ボクサー界で、亀田竜一って1人しか居ないって。つ〜かそんな凄い人と、出かけるって凄いじゃんか!」


「んじゃ、代わってあげる」


「いやいやいや、俺が行っても誰?ってなるでしょ〜〜に」


「そんなの聞いたら、余計に会い辛くなるじゃんかぁ〜〜〜」


「ははははっもう諦めろよ。にしても愛野さん、凄い知り合いいるんだな・・・」


「聞かなきゃよかった・・・」


「まぁ俺はさ、たまたま親父が格闘技好きだからその影響で知ってただけ。まぁ・・・・亀田選手に関しては、格闘技に無関心だった母さんもミーハー心出てるけど」


「何で?」


「普段は目つき悪くて強面だけどよ、笑うとエクボが浮き出るだろう?泣きホクロも相まって、ギャップがあって堪らんのだと」


「俺には、よくわからんけどな」と続けて話しながら、メニューを開く鷹頭。

雛山は、ふとあの時の事を思い出す。

竜一が笑った時・・・・・身にまとっていた雰囲気がガラリと変わった。

一気に幼く見えた竜一の笑顔。


トクン・・・・・


頭に思い浮かべた竜一の顔に、心臓が一瞬だけ強く脈打つ。


「?」


微かに感じた体の異変。

雛山は左胸に手をあてて、首を捻る。


「どうした?心臓バクバクするほど、飲んでねぇ〜だろ?追加頼むけど、どうする?」


「あっホルモン食べたい」


「いいねぇ〜どこにするよ」


「他に、何食べようかな〜」とメニューに視線を下ろす雛山。

先程感じた鼓動の事は、すでに頭から消え去ってしまった。


日曜日の事は気が重いが、こうやって愚痴を言える相手が出来ただけで気分も紛れる。

それも自分の性癖を知っている相手に、もう隠す必要もない。

それは鷹頭も同じ事を思っているのか・・・・入社時の時よりも、遠慮も無く距離感も近く感じる。

これが・・・・友達か・・・・

同じ歳の友人が出来たことが擽ったくもあり、そして嬉しかった。



78に続く


ボクシングの事は本当に詳しくないです!

なのでおかしいと思ったら、コソッと教えて下さい。

級は体重で決まりますが、竜一の身長178~180センチで軽すぎるのもと思ったので・・・・だけどスーパーフェザー級って58.97キロ以下なんです。

一時的な体重だったとしても、軽すぎる・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ