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72

仕事が終わりバイクで帰宅した明。

そこで待っていたのは、存在を忘れられていた鷹頭だった。


72



愛野宅前


竜一に日曜日の予定を入れさせた翌日。

仕事を終えて、会社からバイクで帰って来た明。

自宅前でバイクのエンジンを切ると、降りて押しながら敷地に入る。


「愛野さん」


背後から男に呼ばれ、フルヘルメットのまま首を捻って振り返る。


「!?・・・何で、ここに居るんだ」


予想していなかった相手に、明は目を見開く。

相手は、鷹頭だった。


「話があるんです・・・」


彼もまた仕事帰りなのだろう、畏まった様子で一歩明の方へと踏み出す。


「家まで押しかけてくるとか・・・・いい加減諦めろよ」


呆れたように溜息を吐きながら、明はいつもの定位置までバイクを押す。

その後を追いかけてくる鷹頭。


「その話じゃないんです!明さん、尾行されてますよね・・・」


「あ?・・・何でそれ知ってんだ」


「・・・・・・僕も明さんストーカーしてたので」


「!?」


ストーカーがストーカーと認める事にも驚くが、それよりも全く気付いていなかった事に驚く。

こんな状況下で警戒心が不足している自分が間抜けなのか、それとも鷹頭のステレスレベルがMAXなのか・・・・


「それで話が・・・」


「はぁ・・・・聞いてやるから、もう二度とストーカーなんてすんなっ!!お前が追いかけ回そうが、一ミリもオレの気持ちは揺らがね〜ぞ!!」


「・・・・・はい・・・」


きつい口調の明に、鷹頭も肩を落として返事を返す。

正直素直に従うとは思えないが、今は彼の話を聞くことを優先させる。

明はヘルメットを取り、それをバイクに固定していると・・・・


「明君っどうかしたの!?大きな声だして!」


第三者の声。

振り向けば塀の向こうから顔を出しているご近所のおばさん。

手には箒を手にしているが、持ち方が竹刀を思わせる。


「あっまたその子!?あんたね!明君の家の前でコソコソコソコソと」


鷹頭を見て声を荒げるおばちゃんは、敷地にドカドカと入ってくる。

その気迫に鷹頭は慌てて、明の背中に回り込んだ。


「あぁ、いいよ。今日はオレの客人」


「そうなの?ん〜〜明君がいいならいいけど・・・前々からあんたの家の周りその子以外に変な人がウロウロして大変なのよ〜。だけど大丈夫、おばちゃん達が追い払っておいたからね」


ご近所のパトロール隊かのようなおばちゃんに、明は苦笑いしてしまう。

しかも複数形の言い回し。

家の前では興信所の人間の姿が見かけないと不思議に思っていたが、ご近所のパトロール隊が仕事をしていたのだと納得。

ボランティアとはいえ、流石に後日菓子折りを渡したほうが今後の為にもよさそうだ。


「サンキュ、おばちゃん」


おばちゃんに手を挙げて気持ちを伝えると、明は鷹頭を引き連れて玄関の前へ向かった。



******



明自室



本当は自室に入れたくはなかったが、太郎が帰ってきた時の事を考えれば自室の方が都合がよかった。

明はソファにふんぞり返って座り、客人だと言われた鷹頭は床の上で正座。

異様な光景だが、2人の関係を考えればそう不思議ではない。

ストーカーに人権はないと思っている明は、青年を見下ろす視線が虫を見る目だ。

だが青年は口元に締まりがなく、キョロキョロと部屋の様子を見回している。

しかも小鼻を膨らませて激しく呼吸をしているのを見て、明はイラッとした。

思わずソファの上のクッションを青年に投げ「さっさと話せ!!」と怒鳴る。


「ぶっ!」


顔面ヒットしたクッションが、コロンと青年の前に転がり落ちた。

鷹頭は鼻を押さえながら、申し訳無さげに明を見上げる。


「その前に・・・今朝、愛野さんの家の敷地に入ってしまいました。すみませんでした」


「・・・・・・・」


突然のカミングアウトに、神経質そうな明の眉がピクリと動く。

ここでまた怒鳴りつけても話が前に進まないと、明は大きく深呼吸して気持ちを押さえつける。


「見てもらいたいのは、これです」


そう言うと鷹頭は鞄の中から、角2封筒を取り出して明に差し出す。

それを訝しげな顔で受け取り、中身を覗き込む明。

目に入ったのは、写真。

それもかなりの量だ。


まさか・・・オレの隠し撮り!?


そう思ってローテーブルの上で封筒を逆さまにし、バサバサと中身を出した。


「・・・・これ、興信所の奴」


鷹頭持ってきた写真には、明が微かに見切れて写っては入るが被写体は興信所の人間だった。


「え・・・こんなにも居たのか・・・」


顔を知っているのは一人、多分そうだろうなぁと思ってた人物も一人。

だが写真の中では、それぞれの場所で明の背中を見ている5人の人間が写っていた。

中には女性も居る。


「後を追い掛けたら、違う事務所の人間でした」


そう言うと、再び鷹頭の手から白い紙を渡される。

それは興信所や探偵事務所のHPがプリントされた用紙。


「尾行している人間までストーカー?しかもプロ顔負けじゃねぇ〜か・・・もう、転職しちまえよ」


嫌味で言った筈だが、鷹頭はそうとは受け取られず嬉しそうにモジモジとしている。


「褒めてねぇ〜よ・・・はぁ・・・」


呆れて溜息をつき、ローテーブルの上で写真を広げて確認する。


「おいおい、社内入ってきてんのか。これは・・・・やりすぎだろう」


あきらかにフローラ内で撮られている写真もある。

流石にこれはやりすぎだと、明の顔が険しくなった。


「つ〜かお前も今回は目瞑るけど、会社に入ってくんなよ・・・」


「はい・・・」


「うちの会社もどうなってんだ・・・」


部外者がコソコソしている事自体、会社のセキュリティを疑うレベル。

かなり大きな会社なので、警備員は居るのだが・・・・どうやら仕事をしていないようだ。


「これ・・・・」


そして明は一枚の写真が目に止まり、それを手にして目の前に持ってくる。

薄暗い夜明け頃の自宅敷地。

鮮明ではないが、バイクの前で男がしゃがんでいるように見える。


「それは今朝撮りました」


「・・・・お前が、不法侵入したって言ったよな」


「はい、この男が明さんのバイクを触ってたので・・・・」


そういう事かと明は解釈した。

鷹頭は好奇心で侵入した訳ではなく、男が何をしてたか確かめるために愛野宅の敷地に入った。


「で?何してたんだ?」


「これです」


コトンとテーブルに置かれる、黒い小さな機械。


「GPSを取り付けてました」


鷹頭の言葉に、心臓がひやりとした。

会社や自宅の敷地に入ってくるのは違法だ。

それにこのGPSは、かなり悪質。

訴えれば、あっけなく勝てるレベル。


「・・・・・ここまでしなきゃいけない程に、オレの情報がほしいのかよ」


倖田が依頼した興信所が1件ではなかった。

きっと報酬としてかなりの額を用意しているのだろう、ライバル事務所よりも早く情報をと焦って犯罪に手を染めた・・・・そう考えるのが妥当だろう。

もしストーカー鷹頭が居なければ、GPSの存在に気が付かず・・・フスカルや恋人の家に行っていた・・・。

といっても、まだ恋人の家に行ったことはない。


「タカハゲ・・・お前のストーカー行為は水に流してやる」


「タカハ・・・鷹頭です」


「コソコソ後付けられてたのは腹が立つけど、結果助かってんだしな。タカハゲ」


「あの・・・鷹頭ですけど・・・・」


明に勝手に命名された鷹頭は小さな声で訂正するが、明の耳には入らない。

すでに頭の中では、これをどう使おうかと考えを巡らせていた。



73へ続く

鷹頭君はただの当て馬じゃないんです。

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― 新着の感想 ―
[一言] すまん、鷹頭。誤解してたし、忘れてた。しかし、やってる事はアレなのにすごいいい働き。褒めるべき?悩むわぁ。
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