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36

明の脅しによって、初チューを奪われた鷹頭。

交際を申し込む鷹頭を諦めさせる為、白田が取った行動は・・・



36



明の二股騒動勃発。

波乱の幕開けとなった・・・・・と大袈裟に騒いでたのは林檎ちゃんだけ。

隙きあらば明に抱きつこうとする鷹頭は、養生テープで手足を縛られついでに口も塞がれ、BOX席のソファに寝かされている。

他の皆はカウンターに集まり、事の顛末を明と雛山が説明した。


「なるほどね・・・・彼がピヨちゃんを虐めてた同僚ね」


「おまえなぁ、考えなしにそういう事するなよぉ〜」


「けどけど雅君。いい考えだと思うよ。普通ならさ、二度とピヨちゃん虐めようとは思わないじゃん」


「その矛先が、明にきてんだろ」


「彼は普通じゃなかった訳だ・・・・・。もう白君、怒ってる顔も素敵だけど、ピヨちゃんが怖がってるから」


林檎の言う通り、白田はずっと無言のまま表情も硬い。

内面にふつふつとした怒りを抑え込んでいる白田に、隣に座る雛山は気が気でない様子。


「彼が初を奪われたって騒いでるなら、僕が次のお初を頂こうか?ひとまずフェ「バカ林檎、止めとけ」もう、雅君もお顔が怖い〜〜」


林檎がとんでもない事を言いそうになるのを、雅が咄嗟に言葉を被す。

カウンター内の棚にもたれ掛かっていた明は、「はぁ」とため息を付く。

静かに怒っている白田の顔をチラリと見、そして体を起こしてカウンターの外へと出た。

向かうは鷹頭が居るソファ席。

フガフガとテープ越しに何かを言っている青年。

横に寝かされている鷹頭の目線に合わせるように、明は前にしゃがみ込む。

そして青年の口からテープをぺりっと剥がす。


「愛野さんっ」


「お前さぁ、付き合えって言う前にオレに恋人が居るとか疑問に思わなかったわけ?」


「!?」


そう言えば!と言う表情をする青年に、盛大なため息を付く。


「居るんですか!?」


青年の問いかけに、カウンターに居る男に視線を向ける。

皆が明のする事を注目している中、白田と目が合う。

恋人のふりは、フスカルだけの話。

もしここで鷹頭に、白田と付き合っていると言えば・・・・・・社内で言いふらすかもしれない。

だが鷹頭を諦めさせるには、恋人が居た方が手っ取り早い。

白田に迷惑が掛かるからと、ここに存在しない恋人をでっち上げても林檎が居る手前ややこしくなる。

明はどうしたものかと、頭を掻く。

明の言葉をじっと待つ鷹頭。

何とか誤魔化そうと、悩みながら「あ〜〜」と口を開いた。


「明」


いつの間にか明の横に立っていた白田。

名を呼ばれ男の存在に気が付くと、すくっと立ち上がる。

何かいい案でもあるのか?と口には出さずにじっと白田を見上げる。

すると男の手が伸び、明の右の二の腕を掴み引き寄せる。

明は思わずバランスを崩して、男の体に寄り掛かる。

抱きしめられると思ったが、男は明の頬に手を添えると上に向かせた。

明の視界一杯に男の顔が広がる。

顔を傾けて明の唇に顔を寄せる白田に、思わず瞼をぎゅっと閉じた。

明の唇の端に、柔らかい感触

唇同士の接触ではないが、周りの人間はきっとそういう風に見えているはずだ。

現にカウンターから林檎の「WoW」という驚きが耳に届く。

時間にして数秒。

白田は明から顔を離すと、鷹頭を冷たい目で見下ろす。


「鷹頭、明は俺の恋人だ。諦めろ」


明の迷いを知ってか、躊躇する事なく鷹頭に恋人宣言する白田。

同じ会社の人間に公言すれば、どれほど大事になるか頭のいい男なら解るはず。

なのに明を庇って嘘を付く相手に、明は熱い感情がぐっとこみ上げてくる。

思わず男の背中部分のシャツをギュッと握りしめる。

白田の香りに包まれる中、優しい男の気持ちが嬉しいのに・・・全てがフリだと思うと切ない気持ちが湧き上がった。



******



愛野宅

ダイニング



風呂を済ませて、太郎の明日の弁当を作り終えた午前3時。

明はダイニングで珈琲タイム。

最低でも一日五杯は珈琲を飲む明は、寝る前だろうが気にしない。

それに明日は仕事が休みで、寝る時間も自由だ。

ダイニングテーブルには、珈琲カップ以外に女性雑誌を広げている。

発売前のサンセールのレビュー掲載されているページをチェックしていた。

だが明は、捲ったページを見ているようで見てない。

ぼ〜〜〜〜と、今日フスカルであった出来事を思い返していた。

白田の恋人宣言に、肩を落として帰っていった鷹頭。

良かった良かったと、その場の皆は胸を撫で下ろした。

それから続々と客が来店し、一瞬でピーク。

あれこれ考える余裕も無くなった。

帰りは雅と雛山も一緒だったから、白田と2人きりになる事もなく帰宅した。

会社での鷹頭の出方も心配だし・・・・・白田にあそこまでさせてしまったと罪悪感もある。

明が他人に対して、そこまで気を掛ける事はまずない。

それは雅や日富美や由美と同じように、彼も明にとって大切な存在だと認識しているからだろう。

そこは明も、もう認めるしかない。

だが!新たに感じた感情だけは理解できないのだ。

恋人のフリに切なさを感じた。

更に、キスのフリに物足りなさも感じた。

心配で

申し訳なくて

嬉しくて

切なくて

残念で

色んな感情が入り混じり、明自身も収拾がつかずにいる。


チーン


突然の電子音に、明の肩がビクッと跳ね上がる。


「明君も、朝食食べるかい?」


「!?」


台所に立っている太郎。

手には焼きたてのトースト。

明は何故こんな時間に太郎が起きてきてるのだ?と、壁に掛けている時計の針を見る。

午前6時。


「え・・・・まじか・・」


3時間もず〜〜と白田の事を考えていた明。

つい最近こんな事があったと、デジャヴュを感じる。


「明君、何だか顔が赤いけど熱でもあるのかな」


「違うっ、知恵熱だ知恵熱!」


そしてこれもまた、デジャヴュ。

たった一人の男を想うと、たちまち時間が溶けて無くなっていく。

頭と体は正直に男に反応しているのに、明自身はその想いに全く気がついていなかった。



37へ続く

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