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休日の明の家を訪ねたのは、女子2人。

そろそろ片想いを卒業したいと日富美は、明の背中を押す。

※今回は、シリアス展開となっております。



37


午前10時

愛野宅




「もう!うっせ〜なっ、ピンポンピンポン!新聞ならYAHOOニュースで間に合っとるわ!!」


勢いよく玄関の扉が開かれ、上下スエットで寝癖が酷い明が顔を出す。

結局太郎と一緒に朝食を取り、寝たのが7時。

3時間程しか寝れていない明は、超不機嫌だ。


「あ〜〜きら君、遊びましょっ」


玄関先に居たのは、今日もメイクバッチリの由美。

なのに誘い方が小学生のソレだ。


「休日までお前の顔を見たくねぇ、帰れ!」


「明くん、予定ないなら出かけよう」


そして由美の後ろからひょっこり顔を出す、日富美。


「・・・・・・・・どこに」


「見たぁ?日富美。私の時は追い返すくせに、日富美だともう行く気よ!?」


「まだ行くとは返事してね〜だろうが」


「場所訊いてる時点で、行く気じゃん。もう家の中で待たせてもらうから、さっさと支度してきなさいよ」


「ちょっと待て、せめて何処に行くか教えろよ」


家の中へ入ろうとする由美に、通せんぼする明。


「アウトレットモールに行きたいの」


「あのな、イチニ・・・女の買い物だろ、オレを巻き込むなよ」


「つい先月、大型のシューズショップがOPENしたんだけど、バーゲンしてるんだって。だから明君も興味あるかなって」


「10分で支度する」


日富美の言葉に、さっさと家の中に入る明。

「荷物持ちGET」と由美の言葉を背中に受けながら、洗面所に直行したのだった。

それから本当に10分で支度をすませた明は、由美の車を運転しアウトレットモールへ。

土曜なだけあり、人は多い。

女性の買い物に付き合うのも一苦労。

途中2人と別れて、目当てのシューズ店で買い物を済ませ、ちょっとした休憩所として設置してあるベンチで休む。

明の足元には、自分と女性2人分の大量の買い物袋。

完全に休日のお父さん状態。

待っている間ぼ〜とした時間の中、目の前のメンズ服の店のディスプレイを眺める。

ウィンドウに飾られているマネキン。

マネキンが着ているのはグレーのスーツ。

同じタイプのベストを着せられ、もう少し先に必需品になる紺のウールコートを羽織っている。


「何見てるの?」


ベンチで寛いでいる明の隣りに、話し掛けながら腰を下ろす日富美。


「あれ、あいつは?」


「まだ見るんだって」


「はぁ〜〜まだ買うのかよ」


呆れる明に、クスクス笑う日富美。

そして明がさっきまで見ていた、ディスプレイに視線を向ける。


「太郎さんのプレゼント決まったの?」


「ん〜まぁ時計をな」


「なんだ。あのマネキンじっと見てたから、コートかなって思った」


「あんなの、親父だと裾引きずるわ」


「それじゃ・・」


「オレでもないぞ、ただボーと見てただけ」


「そう・・・・」


嘘だ。

あのマネキンのコーディネートを見てると、白田を思い出してしまった。

似合いそうだな・・・とごく自然に。


「・・・・・ねぇ明君」


「ん?」


静かな声で名を呼ぶ日富美に、どうした?という表情で隣りの彼女を見る明。


「好きよ」


「・・・・・・」


突然の彼女の告白に、困った表情で笑う明。

彼女がずっと自分を想い続けているのは知っている。

そして彼女も、自分の気持ちを明が知っている事も知っている。


「明君、気になる人いるでしょ?」


「は・・?何、どっからそんな話になるんだよ」


「太郎さんに会う度に、色々聞くの。同年代の友達が出来たみたいで、家にもご飯作りに来たとか。ちょっと前は明君イライラしっぱなしだったり、ハッキリしない態度とってたり・・・・最近はボーとしてことが多いって。今日も顔を赤くして考え事してたみたいって、朝会った時に心配してたよ。だから好きな人が出来たのかなって」


「・・・・・そんなんじゃね〜よ」


「嘘つき」


「あのなぁ〜」


「私、明君以上に明君の事解ってるわよ。ず〜〜と側で見てきたもん」


「あいつは、そんなんじゃね〜よ」


「気になっちゃうんでしょ?その人の事。イライラしたり迷ったり、考えたり、思い出したりするぐらい。それって私が明君に対してず〜〜とそうだったのよ」


「・・・・・・・」


明は何も言えず、彼女の顔をじっと見つめている。

日富美は優しく笑いかけ、明の手にそっと自分の手を重ねる。


「それって、立派な恋よ」


「・・・・・・・・」


「由美も何か知ってるかなって今日誘ったんだけど・・・。彼女優しいから、何も言ってくれないの。私が傷つくと思って・・・勿論傷つくわよ。だけど応援するの、明君の恋。沢山傷つくかもしれないけど、前に進むには必要だと思ってるから平気。だから明君も前に進んでよ」


「日富美、無理だ」


「無理じゃないよ。怖いのは解るけど・・・・明君も前に進まなきゃ」


過去の事はもう過ぎたこと。

起きてしまった事件を無かったことには出来ないし、亡くなった人を蘇らせる事も出来ない。

あの子を助けられなかった事を今でも後悔していると、素直に口に出来るのは日富美だけ。

父親や雅の前では、立ち直ったと気丈に振る舞い。

昔こんな事があったと、平気で他人に話しても・・・・・・胸の奥底では未だに悔やみきれない暗い気持ちが存在している。

日富美だけがそれを知り受け入れてくれている。

そんな彼女が自分の前から居なくなったら・・・・誰に弱音を吐けばいいのか・・・・誰を頼ればいいのか・・・

今まで彼女が言わなかった前向きな言葉に、明は不安な気持ちに駆られた。



******



日富美の部屋



「あぁ〜、買いすぎた〜買いすぎて、もう既に今月ピンチ〜〜〜」


ベッドの横に、来客用の布団を敷いている日富美の部屋。

由美は今日はお泊りの予定で、朝から来ていた。

荷物持ちが居た事で、張り切って買い物すれば財布の中味は既にピンチ。

由美は借りた部屋着で、布団の上でゴロゴロとのたうち回る。

そんな由美を、ベッドの上で座りおかしそうに見ている部屋の主。


「余分なお金持ってるのが駄目よ」


「もっと早く言ってよ〜〜、せめて買い物する前に〜〜。なんなら、財布預けとけば良かった。」


「もう私、由美のお母さんじゃないよ〜」


「もうお母さんみたいなもんじゃん、愛野君だってそう思ってるんじゃないの〜?」


「・・・・・・」


「あっごめん」


一瞬顔が曇った彼女に、由美は慌てて体を起こして謝罪の言葉を口にする。


「ううん、強ち間違ってないよ」


「そんな事ないでしょ、いくらなんでも」


「明君が弱ってる時に、側に居たから・・・亡くなったお母さんと重ねてるところは、あるんだと思ってた。だから私に特別優しいんだって・・・・」


「日富美・・・」


「ねぇ、やっぱり教えて欲しいの。明君が気になってる人の事」


「・・・・・・・・・・・」


口を閉ざして困った表情で俯く由美。

そんな彼女の横に、ベッドから下りて座る。


「明君がフリーでいる限り、私もず〜〜と片思いし続けなきゃいけない。だからチャンスだと思ってる、明君の恋が上手く行けばやっと諦められるって」


「どうしても・・・・諦めなきゃいけないのかな」


「いけないの」


「愛野君の事、ずっとず〜〜〜〜〜〜と純粋に想い続けてるのに」


「由美・・・私、言ってない事があるの」


「何?」


「私純粋じゃない・・・弱ってる明君に寄り添うフリして、ずっと付け込んできた。それに最低な事をして、明君を傷つけたの。彼が私に依存してくれてるのをいい事に、抱いてって懇願したの」


「え」


「そしたら、私のこと好きになってくれるかなって・・・・・だけど駄目だった。恋愛感情は持てないって明君・・・泣いて謝って、結局二人とも傷ついて終わったの。それから私を壊れ物みたいに扱うの・・・私への負い目があるから。私に彼氏が出来ないのは自分のせいだって、明君は自分を責めてる。そして私も、明君に好きな人が出来ないのは、私のせいだとも思ってるの。だからね、いい加減・・・お互い前を向いて進まなきゃいけない」


「ごめん・・・日富美」


「ちょっと、何で由美が泣いてるの」


化粧を落としたすっぴんの由美は、大粒の涙を流しながら彼女に謝る。


「日富美の事応援したいけど・・・白田さんのことも応援したいの。どっちつかずの態度でごめんっ。日富美も苦しんでたのに、知らずに勝手な事言ってごめん〜。もう全部ごめん〜〜」


泣きながら抱きつてくる由美に、涙目になりなが相手の背中を擦る。


「私のことを思うなら、その人の事教えて。由美が応援したいって人なら、私も応援したいから」


涙声でうんうんと答える由美に、日富美は瞳から溢れた滴で頬を濡らしながら嬉しそうに笑った。



38へ続く


今回は重い話になりました!!すみません!

名前を頻繁に出しておいて、ガッツリ登場してませんでした日富美さん。

次回からは、恋の応援団として登場してくれると思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] まだまだ過去が隠れているので、明かされて行くのを楽しみに待ちます。
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