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ユリスの心情

今回はユリスの目線で書いてみました。

  ユリス Side



 わ~お、こいつは予想以上だな。


 オーギが次々とアサシンスネークを倒し、ジャイアントバジリスクをも一撃で粉砕した光景を目の当たりにしたユリスはそんなことを思った。


 いくら相手が10階層レベルの雑魚だっつっても、あの破壊力には目を見張るものがあんな~。

 見た感じ強化系か~?

 にしても一体いくつ組み合わせたらあーなんだよ。

 人間が獲得していー”能力”の数を超えてんだろ。

 つーかホントーに人間か?

 筋力も魔力も、ありゃーまったくの別次元だぜ。

 あのレベルなら中位……いや、上位天使にも引けを取らねーだろーな。

 だがそれはあたしが今見たもので全部ならっつー話だ。

 もしもまだ力を隠してんなら最悪……最高位天使にも匹敵すっかもな。

 あきらかに異常だ。なんだよあんの化物はよー。

 確かにあの強さなら()()()が気にかけるのも分からなくもねーけどな。

 しっかし、あんなのが居る中あいつの仲間を殺さなきゃなんねーのか……。


 そう考えると言いようのないゾクゾク感が身体中を駆け巡った。

 気持ちが昂ぶり、心臓がうるさいくらいの音を上げる。

 身体が直感的に判断した。

 

 ――アレは、久しく戦ってこなかった強者だと。


 身体が疼き、狂気に顔が歪む。

 早くあいつと戦いたい。

 一体いくつの”能力”を持っているのだろうか。

 一体どんな”能力”を持っているのだろうか。

 もしかしたら”権能”まで持っているかもしれない。

 だとしたらどんな”権能”なのだろうか?

 戦闘スタイルは? どんな武器を使う? 戦っている時、あいつはどんな顔をする? 無表情か? それとも苦しそうに戦うか? それとも――――楽しそうに笑うのか?

 

 あいつの全てが気になる。知りたいと感じた。

 人間という身でありながら、あそこまで力を付けた男。

 ”最強の闇”と呼ばれた()()()の目に留まった男。

 そんな特異な存在が今あたしの目の前に居る。

 本当なら今すぐにでも飛びかかりたい。

 飛びかかって血沸き肉躍る死闘を演じたい。


 だが、あたしはそんな昂る気持ちをグッと抑えた。


 今は……まだ我慢だ。

 今戦っちまったら、十中八九あたしが勝っちまう。そして殺しちまう。

 あいつはぜってーに今も見てやがる。あいつに見えねーものはねーかんな。

 そして、あいつは『チャンスは一度きり』っつークソったれな条件を出してきやがった。

 今ここで戦っちまったらすべてが終わりだ。

 オーギはこれからもっと強くなる。

 それまでは……最下層に来るまでは……我慢だ。

 だが、はっきり言ってそれまで待てそーにねーな。

 だがら自分ルールだ。

 もしも、オーギがあたしの()()()()()を連れた状態で目の前に現れた時は――


 その時は初めの宣言どーりに、全力で皆殺しにしてやんよ。


 狂気に歪む顔を必死に元に戻していると、オーギが『洗浄』と『乾燥』で汚れを落としながら、こっちにやってきた。


「ラプラス、最後の一撃どのくらい強化されてた?」


 どんぐらいっつったら、ま、百倍くらいじゃねーか?

 あの一撃はそんだけ凄かったかんな。

 あたしも真正面から受けてみてーぜ。

 一体どんだけの衝撃がくんだろーな。あ~早くあたしのターゲット来ねーかなー。


「いや今日は終わりだな。身体がだるい」


 なんだ。今日はもー終わりなのか。

 ったく、楽しー時間ってのは終わるのが早ーな。

 にしても――


「なー、オーギ」

「どうした、ユリス?」


 あたしは気になったことを聞いた。


「お前誰と話してんの?」

「え? あーそっか、見えないんだったな。悪い悪い。俺が話してたのはラプラスっていう、いわば妖精みたいなやつだよ」

「……妖精ー? あたしには見えねーんだけど?」

「まあ、こいつは少し特別だからな。普通の人には見えないんだよ」

「………………」


 何言ってんだこいつ。頭大丈夫か?

 妖精なわけがねーだろ?

 それならあたしに見えねーわけがねーかんな。

 だが、オーギが嘘をついてるよーには見えねーんだよな。

 いや、どちらかと言えばどう説明したらいーのか悩んでるって感じか?

 ま、隠し事は多い方が本番で楽しめっからあたしはいーけどな。

 

 って、なんで泣きそうな顔してんだよ!?

 あれか!? あたしがずっと黙ってたからか!?

 わーった! 謝っから! 泣くなよー!?


「あ~、その、なんつーか、ごめんな? あたしが悪かったよ。そこにちゃんといんだよな? 信じっからさー、落ち込んでんじゃねーよ、な?」


 あたしがそう言うとオーギは涙をひっこめた。


 なんか不気味に連呼してっけど……大丈夫なんだよな?


 そんなことを思っていると、オーギは顔を上げた。

 その顔はすっかり元の顔に戻っていた。

 あたしはほっと胸をなでおろした。

 って、なんであたしがこんなことで安心しなきゃなんねーんだよ?

 ま、いっか。こいつが無事ならそれでいーや。


「それで、俺たちは宿に戻るけどお前はどうするんだ?」


 オーギがそんなことを聞いてきた。

 ん~、どうすっかな。

 あたしっていつも最下層にいんだよな。

 かと言ってそれを馬鹿正直に言う訳にもいかねーし。

 ……適当ーに返すか。


「あたしか? そーだな、あたしはちっと用事があっからまだ戻らねーよ」

「そうか。でも大丈夫なのか?」


 こいつは多分あたしのことを心配してくれてんだろーな。

 あたしの正体を知らないとはいえ、誰かに心配されるってーのは初めてだな。

 なんつーか、悪い気はしねーな。


「問題ねーって。心配すんなよ。これでもあたしって強ーんだぜ?」


 あたしは笑いながら、袖をまくり力こぶを見せつけた。

 ただ…………多分、ミリも動いてなかったと思う。

 だが、オーギは微笑んだ。


「そっか。分かった。でも危なくなったらすぐに逃げろよ?」

「わーってるって。それじゃーな――――っと聞き忘れてたけど、お前って明日も此処に来んの?」


 あれ? あたし何でんなこと聞-てんだ?


「ああ、多分な。大体このぐらいの時間に来てるよ」

「ふーん、じゃーまた明日も会えっかもなー」

「そうなのか?」

「あー、でもあんま期待すんなよ? 会えっかどーかはびみょーだかんな」

「わかった。それじゃあまた明日な」

「ああ、またな」


 そう言うと、あたしはそそくさとその場から立ち去った。


 『またな』……か。

 ったく、一体どうしちまったんだ? 次に会う時は敵同士かもしんねーってのに。

 それに、相手の手札を一方的に知んのは不公平だよな。

 それなのにあたしは――――…………ま、不思議と嫌な気分じゃねーんだけどな。

 って、意味わかんねーな。

 ま、約束しちまったもんは仕方ねーか。

 仕方ねーから明日も此処に来てやんよ。

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