お泊り会 中編
「たまには男二人で買い物って言いうのもいいよね!」
「そうか?」
「そうだよ! いつもは女性陣が居てできないようなことも男同士ならできちゃうんだよ!」
「ちなみにどんな?」
「好きな人とか!」
「……定番すぎるだろ。もっと頑張れよ異世界」
俺は異世界で出てきた修学旅行の定番のような言葉に小さなため息をついた。
もっとあるだろ、異世界ならではのこととかさ。
――いや、そもそも相手が藤原だったわ。じゃあ諦めるしかないか。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。それよりも”好きな人”だったか? お前はアイルだろ?」
「えっ!? そ、そんなことないよ!? 全然違うよ!?」
俺がそう言うと藤原は慌てたように首と手をブンブンと振りながら否定した。
どう見ても確定でアイルが好きだよなこいつ?
この場で否定する必要はないと思うんだが。
「というか自分から話題振っといてウソつくなよ。まあいいけどさ」
「じゃ、じゃあさ! 扇君の好きな人は誰なの!?」
「話をそらしたな……。はぁ、で、俺の好きな人?」
「うん! だれだれ!?」
う~ん、今考えてみると俺って誰が好きなんだろうな。
この世界に来てから碌に考えたこともなかった。
この世界が楽しすぎるのが原因だな。
”魔法”に”能力”とここには俺の求めていたものすべてがある。
テレビやゲームがあれば尚良いんだが、そこまでのことを異世界に求めるのは酷な話だろう。
だからそこはいい。いざとなれば創ってしまうだけだし。
ただ、好きな人、か。
確かに失念していたが恋愛要素も異世界転生の醍醐味ってやつか。
確かによく考えてみれば出会いはたくさんあったな。アリスに始まりアイル、メイ、星野、確かに結構出会ってるな。これがフラグなのか?
だが俺は勘違いなどしない。
俺は自分がモテるとはこれっぽっちも思っていない。
むしろその逆とすら思える。
俺は転生者であってこの世界の主人公ではない。当然のことだ。
だが何も問題はない。
異世界転生モノの主人公みたいに何か使命を受けるのも面倒だし、自由気ままに異世界ライフを満喫できるんなら俺は主人公補正なんて必要ない。
今のままで十分楽しいからな。
っと、話がそれたな。確か好きな人……だったか?
「そうだな、好きな人はいないが、それに最も近いのはアイル……か?」
「やっぱり!?」
「なんだよやっぱりって。とっても、好きっていう訳じゃないぞ? あくまでそれに一番近いっていうだけで。今のところ恋愛感情はない」
「え~なにそれ~!」
うまく誤魔化したような俺の発言に藤原は頬を膨らませて怒っているようなポーズをとる。
こいつホントになんで男なんだろうな?
神様のいたずらとしか思えない。
もしくはBL好きの神様か。
と言うか『なにそれ~!』と言われてもな。
それが俺の偽らざる本音なんだから仕方がないだろ。
全員可愛いし、美人だし、それに付け加えて判断材料が少なすぎるんだよ。
アイルが一番長いこと一緒にいるから自然とそっちに傾いたって感じだな。
「ほら、さっさと買い物済ませるぞ。俺はお腹がすいてるんだよ」
「そんなの僕もだよ?」
「だったら早くしろ」
「は~い!」
そんなやり取りをしつつ食堂の横にある、食材売り場へと到着する。
地球のスーパーほどではないがなかなかの品ぞろえだ。選ぶのも大変そうだな。
と、そんなことを考えていると、俺の中に一つの疑問が発生した。
「なあ、藤原。お前って料理できるか?」
「えっ! もしかして僕の手料理が食べたいの!?」
「ちげぇよ! 変な解釈するな、文字通りの質問だ」
「料理? できないよそんなの!」
やっぱりか。これは厄介な事態になったぞ。
料理ができない奴がどうやって食材を選ぶんだよ。
せめて何がいいかくらい聞いておくんだった。
何を買えばいいのか全く分からない。
そもそもこっちの食材には明るくないからな。
こうなったら藤原が頼りだ。
「何買えばいいかわかるか? どんな料理を作るのかでもいいけど」
「う~ん、知らない!」
「あっそ」
藤原に聞いた俺が馬鹿だった。
だが困ったな。本格的に何を買えばいいのかわからなくなった。
どうしようか。いまから聞きに行くのもなぁ。
こんなことならアイルを連れてきておけばよかったよ。
俺がそんなことを考えていると、藤原が言った。
「焼肉でいいんじゃない? 簡単だし!」
「焼肉か。確かに案外いいかもな」
「でしょ!」
それで女性陣が喜ぶかは別だが。
そこは俺たちに任せた自分たちを恨んでほしい。
いや、アイルは代ろうとしてくれてたし、完全に俺たちが悪いのか。
…………考えても仕方がない。とにかく買い物だ。
焼肉ってことは、肉は必須として野菜とかも欲しいよな。あとは飲み物とタレか。
そうして買い物始めてから20分。
ようやくほしい食材をすべて買い終えた。
辺りはすっかりと暗くなっており、もう遅い時間であることを語っていた。
いやホントに藤原がいてくれて助かった。
この世界の食材って何が何かわからないんだよ。
ほんと助かった。バカにして悪かったな。
「さてと、帰るか」
「そうだね!」
そうして、俺たちは帰路についた。
雑談しながら帰っている途中、俺はあることに気が付いた。
「なぁ藤原。気付いてるか?」
「扇君も気付いてたの?」
「ああ、俺たち完全に――」
「――付けられてるよね」
完全に意見が一致した。これで間違いと言う線は消えたわけだ。
問題はその狙いだが、30番台の藤原に今さっき序列戦を終えたばかりの俺、どちらもターゲットになりえるな。
「さてと、どうする扇君? 迎え撃つ?」
「そうだな、あまり気分の良いものじゃないし。ただ今回は俺に任せてくれ。どうせなら親玉を見つけたい」
「了解だよ」
藤原にしては珍しく小さな声でそう返した。
そして俺たちは誘い出すため、薄暗い小道へと入っていく。
この学校は無駄に広いので意外とこういう場所が多い。そこを利用する。
そして、魚は予想より早く釣れた。
「飛んで火にいる何とやら、だな」
「囲まれちゃってるね。人数は5人くらい?」
「惜しいな6人だ。まあ問題ないだろ」
屋根の上や目の前、背後にいる敵を見ながら観察する。
闇に紛れるためなのか、全員黒い衣装のようなものをまとっており、顔は仮面で隠れている。
いかにもアサシンと言った感じだ。
「さてと。えーとアサシン諸君よく聞いてくれ。お前らには2つの選択肢がある。1つ目は大人しく投降すること、2つ目は俺と戦って敗北する、この2つだ。ちなみに今回逃げるという選択肢は用意していない。個人的には1つ目をお勧めする」
俺がそう言うとアサシンたちは顔を見合わせケタケタと笑った。
「冗談だろ。お前ひとりでこの人数を相手にする気か?」
「馬鹿だろお前!」
「はッ、ちげぇねぇ!」
そう言いながら一層大きな声で笑うアサシンたち。
こいつらアサシン失格だな。
ただ、自分たちの立場が分かっていないようだな。
「ド低能が。お前たち蟻ごときがたった6匹束になったところで一握りに潰されるのがオチだと分からないのか? どんなに頑張って地を這ったところで俺には勝てねぇよ」
「……なんだと?」
あきらかに口調が変わる。何を怒っているのか、すべて本当のことだろうに。
「全員、一斉攻撃でこいつを殺せ」
その一声ですべてのアサシンが俺に襲い掛かってきた。
藤原は【結界術】で身を守っているから気にする必要はない。
だったらここは圧倒的な力ってやつを見せつけるべきだろうな。
どうせ離れてみてる奴がいるんだろうし、もうこんな気を起こせないくらいの力量差ってやつを見せてやろう。
もちろん《創造主》は使わない。こんな雑魚相手に使うような力じゃないからな。
だから二番目に強い”能力”を見せてやろう。
「【ダークネスドミネーション】」
そう呟くと、虚空から漆黒の剣が現れた。
俺はその剣を手に持ち、軽くアサシンたちに向かって振った。
するとアサシンたちはまるで見えない何かに吹き飛ばされたかのように全員壁や地面に激突した。
同時に、地面の一部や壁の一部なんかが捲れ上がり、抉られた。
軽い一振りでこの威力。
全力で振ったらこの学園ごと無くなるな。気を付けよう。
「なん、だと……ッ!? このぐらい……ッ!」
アサシンたちは苦悶の声を上げながら体勢を立て直そうとする。
だが、もう舞台は整っている。今更お前らに勝ち目はない。
「先に手を出したのはそっちだ。なにも文句は言うなよ。例え――――死んだとしてもな」
「お前何をッ!?」
俺はニヤリと笑みを浮かべ、漆黒の剣を地面……いや、闇に突き刺した。
「”ダークネスドミネーション”」
刹那、日が落ちたことにより満ちた辺りの闇が一斉に波打った。
そしてそこから現れた鞭のようにしなやかな闇がアサシンたちに牙をむく。
アサシンたちは必死に応戦するが誰一人として闇に抵抗できた者はいない。
それはそうだ、闇に物理攻撃が効くわけがない。効くのはたった一つ、光属性のみだ。
”ダークネスドミネーション”。この力は【ダークネスドミネーション】のメインの力だ。
その特性は大きく分けて3つ。触れた対象を闇で支配し思い通りに操る、触れた対象を闇へと変換し自分の力とする、そして最後が剣を突き刺した場所から半径10km圏内の中にあるすべての闇を支配下に置き自由自在に操れる。と言うものだ。ただ、俺の【ダークネスドミネーション】はイメージ補正されてるいるからその規模は計り知れない。
そして、闇の鞭にあっさりと捕らえられ空中に貼り付けにされているアサシンたちを見て、言った。
「だから言っただろ。お前らじゃ俺には勝てないって」




