《創造主》はチートだった
目を開けるとそこは森の中だった。
木々の隙間からさす木漏れ日があたりを明るく照らしている。
どうやら俺は眠っていたらしい。
ん? でも森の中にしては柔らかいし、なにより寝心地がいい。
それじゃあこれは――
「おはようございます、扇様」
美少女が俺の顔を覗き込んでいた。無表情で。
え~と、アイルΔさんだっけ。
どうやら俺は彼女に膝枕をしてもらっていたらしい。
無表情美少女の膝枕。どうりで寝心地がいいと思った。
でもどうしてこんな事を……ってそういえばアリスが俺のお世話係に、とか言ってたな。
もしかしてこれもお世話のうちに入っているのか?
ほかにはどんなオプションがあるのか気になるが、いまはこの最高の寝心地を堪能しよう。
「あと五分だけ待ってくれ」
寝起きにありがちなべたなセリフを言ってみた。
「かしこまりました」
「………………」
う、う~ん、なんだろうね。
許可がもらえるのはいいけど罪悪感がすごい。
なんかもっとさ『あ、あと五分ですかっ? もう、仕方ないですね。本当にあと五分だけですよ?』ってな感じのことを恥じらいながら言ってほしかった…………さすがに贅沢すぎるか。
美少女と二人きりの時に膝枕とか最高に萌えるシチュエーションなんだ。
これ以上を望んだら罰が当たる。
そういえば罰ってアリスが当ててるのかな。
だとすればそれも悪くない気がする。
なんかアリスが嫉妬してるみたいじゃない?
なにそれすげー興奮するだけど。
「……」
でもな~…………。
「……」
「すみません。もう起きます」
うん、気まずさで楽しむどころじゃなかったわ。
ホントにすみません。
「もうよろしいのですか?」
無表情で首をかしげながらアイルΔはそう言った。
何というか、物凄くいかわいいです。
「このままだと俺の精神の方が危ないので大丈夫です」
「……かしこまりました」
あれ? なんか残念そう?
無表情だからわかりずらいけど何となくそんな気がする。
俺早まったかな。
まあそれはまた今度あらためてしてもらうとして、
「改めて自己紹介しようか。俺は八重樫扇。これからしばらくの間よろしく」
自己紹介しながら右手を出した。
「私はアイルΔと申します。こちらこそよろしくお願いいたします、扇様」
彼女はそっとその手を握った。
「アイルって呼ばせてもらっていいか?」
「はい、扇様」
「なあ、その、様付けはよさないか? 仮にもこれから一緒に行動するんだし」
「申し訳ございません。それはできかねます」
「謝る必要はないけど。何か理由が?」
「下手をすればアリス様に殺されます」
それはまた物騒だな。
アリスはそんなことしないと思うけど。
「そっかじゃあ仕方ないな」
俺は適当に流すことにした。
美少女に『ご主人様!』みたいなノリで様付けされるのって気分がいいし。
それに何より、アイル自身が様付け以外できないって言ってるんだから。
うん、これは仕方がないのだ。
「なあここってもう異世界ってことでいいんだよな」
「はい」
あたりを見渡すが樹があるばかりでまったく異世界にいるという気がしない。
本当に異世界なのか?
まあそれは自分の目で確かめればいいか。
「さて、定番だとステータスチェックからだよな。……ステータスっ!」
結論から言おう。――出なかった。
あれ? おかしいぞ? いきなり躓いた。
「僭越ながら、ステータスは右手を正面ではらうように動かすことで展開されます。もちろん任意です」
「なるほど、そっちだったか」
俺は言われたと通りに右手を正面ではらった。
すると目の前に薄い半透明の板のようなものが出現した。
これがステータスプレートか。
「おっ、でたな。ありがとなアイル」
「いえ、私はサポート役でもありますので」
そう言うがまんざらでもない様子だった。
相変わらず無表情なのは変わらないが。
さて、気を取り直して、これが俺のステータスです。
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八重樫扇 17歳 男 人間 レベル1
・筋力:100
・魔力:100
魔法
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能力
【言語理解】
権能
《創造主》
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ほうほう、なるほどなるほど。
”能力”の【言語理解】はわかる。
これのおかげで言葉の違う異世界人とでも会話ができる、ということだろう。
ただ、
「《創造主》ってのが転生特典ってことでいいんだよな? なんか凄そうだけど、どんな感じの能力なんだ?」
「自分の”能力”と”権能”はステータスプレートをタップすることでの詳しい説明を見ることができます」
なるほど、タップか。
スマホ……いやタブレットみたいだな。
言われた通りに”権能”の《創造主》をタップしてみる。
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《創造主》:この世の全てを思い通りに創り、創り変えることのできる万物創造の権能。自分の知識にないもの、この世に存在しないものでも創造可能。万能神の力の一つ。神の権能。
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「え~と、なになに?《創造主》……万物創造の権能? マジかよ」
転生特典の《創造主》はチートだった。
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