初めての創造
《創造主》は思いのほかチートだった。
いやね、物を創る感じの”権能”かなぁとは思ってたんだが、予想以上にチートだったな。
というか《創造主》って神様が世界とかを創ったりするための”権能”なんじゃないのか?
そう思うと急に不安になってきた。
「なあ、これって本当に俺が使ってもいいのか?」
「大丈夫だと思います」
「使いすぎてほかの神々に命狙われたりしない?」
「それはございません。扇様に手を出すということはアリス様を敵に回すことと同義ですから。よほどの命知らずでもなければそんな自殺まがいの行為をすることはないでしょう」
アリスがすごいのか、それとも恐怖政治的な感じなのか。
いやまあどっちにしろ凄いんだけどね。
まあいいや。
そういうことならありがたく使わせてもらおう。
実のところ俺も使ってみたかったんだよな。
だってカッコいいじゃん?
《創造主》っていう名前からしていい具合に中二心をくすぐるし。
「そういうことならありがたく。それじゃあさっそく使ってみたいんだけど、どうすればいいんだ?」
俺がそう尋ねるとアイルは使用方法の説明を始めた。無表情で。
「頭の中で作りたいものをイメージしてみてください。イメージさえできていれば空気中の魔力を利用して自動的に創造されます」
「イメージ、か」
俺はそっと目を閉じた。
やっぱりここは武器とかが無難だろうな。
剣とか槍なんかはゲームやアニメでこれでもかっていうほど見慣れてるし、イメージしやすいだろう。
ん~どっちにするか。
剣も槍も捨てがたい。
が、とりあえず剣を作ってみよう。
どうせならカッコいいやつがいいな。
あと強かったやつとか。
となるとアレかな?
俺が一番好きなゲームの最強の剣。
確か全体的に黒っぽくて――――
「扇様、目を開けてみてください」
そういわれて目を開く。
するとそこには漆黒の剣が宙に浮かんでいた。
一応は成功したっぽいけど……いつの間に出来上がったんだ?
まったく実感がなかった。
「お見事です」
「え、あぁうん。なんていうか自分が作ったっていう実感が全くないんだが」
「イメージするだけで万物を造り出せる。《創造主》とはそういう”権能”ですので」
そういうことなら納得するしかないな。
俺は目の前に浮かぶ漆黒の剣の柄に手を伸ばし、手に取った。
細部まできちんと作られてるな。
重さもちょうどいいし、手になじむ感じがする。
そして何よりかっこいい。
こうして実際に持ってみるとすごく胸が躍る。
「きれいな剣ですね。名前はあるんですか?」
「あるよ。【ダークネスドミネーション】、この剣に触れた対象を闇に変化させて支配する(ゲーム内では)ことができるんだ。他にもいろいろと能力があるが、メインはそれだな」
「それはすごいですね。少し見てみたいです」
ここに来て初めてアイルからのお願いだ。
できることなら見せてあげたいけど、これはあくまでゲーム内での話だからな。
さすがに難しいだろう。
「あくまでもゲーム内での話だからな。これはレプリカみたいなものだし、さすがに剣の能力までは再現できないと思う」
「なるほど、その剣にはモデルがあるのですが。であれば問題ないのではないでしょうか?」
「え~と、説明をプリーズ」
「はい。《創造主》というのは簡単に説明すると『イメージを形にする』という”権能”です」
うん、それはなんとなくわかってる。
「であれば『この剣にはそういう能力がある』というイメージで作られた剣には、その能力さえも反映して創造されているのではないでしょうか?」
え? ちょ、まさかそんなはずは……で、でもまあ今のうちに確かめておいたほうがいいかもしれないな。
俺は【ダークネスドミネーション】をなにもない山のほうへと向けた。
あくまでも念のため、と自分に言い聞かせてこの剣のもつ能力の一つである技の名をつぶやいた。
「”ダークネスライン”」
刹那、【ダークネスドミネーション】の剣先に直径10m程の魔法陣が出現し、漆黒の闇がとてつもない轟音を響かせながらその直線状にあるものすべてを蹂躙した。
地面は抉り取られたかのような跡ができており、向かいにあった山にはぽっかりと穴が開いていた。
「パチパチパチ……」
後ろから小さな拍手が聞こえてくる。
同時に俺の頬を一筋の冷や汗が伝う。
できた。できてしまった。
いやできる分にはいいんだ、何も問題はない。
ただ、ちょっと威力が強すぎるかな?
ゲームではもっと範囲が狭かったと思ったんだが…………うん、たぶん俺のイメージが強すぎたんだろうなってことはわかる。
いわゆる『イメージ補正』ってやつだな。
……やりすぎた。
「すごい威力ですね。おそらく神さえも殺せるのではないかと」
「……ふぅ~、よし! 無かったことにしよう! 俺は何も見なかったしこの場にもいなかった、ということにしよう。してくださいお願いします!」
アイルは無表情のままだったが、なんとなくやれやれといった雰囲気をまとっているように見えた。
「かしこまりました」
「……とりあえず人が来るまでにここから離れよっか」
俺たちはその場を離れ、全てを無かったことにした。
数時間後、轟音を聞きつけた人々の発見によって扇の耳にも抉られた大地の話が入るレベルにまで噂が広がるのだが、それはまた別の話。




