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08

「――連れて行け」


カイル・エルシオンが背を向けたまま告げる。


「丁重に扱え。傷一つつけるな」


「はっ」


黒いフードを被った者たちが一斉に動いた。


「こっちだ」


無機質な声。


リリアンの腕が掴まれる。


「離しなさい」


「大人しくしろ!」


抵抗するリリアンだが、そんな行動も虚しく簡単に押さえつけられてしまう


「おい、貴重な“生贄”だと言われただろ!」


「あ、ああ、わかってる」


フードの者たちの

その言葉に、リリアンの目がわずかに細まる。


(生贄……?)


歩かされながら、思考が回る。


(神隠し。寄付金。優秀な子供……)


断片が、繋がる。


(まさか――)


足が止まりかける。


だが、すぐに引かれる。


「止まるな」


「……っ」


そのまま、扉の前へ。


「開けろ」


――バンッ


重い音とともに、扉が開かれ強烈な光に思わず目を細める。


「……っ」



視界が白く染まる。


数秒。


目が慣れてきた頃ゆっくりと、像が浮かび上がる。


(……これは)


そこにあったのは――


異様な光景だった。


広い空間。


高い天井。


そして。


「……」


黒いフードを被った人間たち。


無数に。


円を描くように並び、中央を見つめている。


その中心には――


巨大な祭壇。


赤黒く染みついた石。


刻まれた見慣れない紋様。


(……儀式、ね)


リリアンは静かに息を吐く。


「並べろ」


「動くな」


子供たちが次々と前へ押し出される。


ぼんやりとした目のまま。


抵抗はない。


リリアンも、その列に加えられる。


「……」


視線だけを動かす。


人数。


配置。


出口。


(そろそろかしら)


コツ、コツ、と足音が響いた。


人々の間が、自然に開く。


「――お待たせしました」


カイル・エルシオン。


ゆっくりと、祭壇の前へ進み出る。


両手を広げる。


「紳士淑女の皆様」


その声は、よく通る。


「本日は――エルシオン家主催のミサへようこそ」


ざわめきが、広がる。


「ここにお集まりの皆様は、この学園に多大なる寄付をしてくださった方々です」


軽く一礼。


「子供たちの教育のために、多くの支援をいただき――心より感謝申し上げます」


「教育、ね」


「建前はな」


小さな囁き。


リリアンの耳に入る。


(……やっぱり)


「そして」


カイルは顔を上げる。


「このミサへの“参加権”を手にされた皆様へ」


わずかに、声の温度が変わる。


「本日は、特別な夜をご用意いたしました」


フードの奥で、視線が集まる。


期待。


欲望。


「今回は――」


ゆっくりと、子供たちへ視線を向ける。


「大変“質の良い”生贄を揃えております」


どよめき。


「おお……」


「今回は当たりだな」


「見ろ、あの子……」


露骨な声。


リリアンの目が、冷たくなる。


(……すべてが繋がったわ)


寄付金。


選ばれた子供。


消えた行方。


「どの子も、最上級」


カイルは満足げに微笑む。


「知性、血筋、素質――すべてにおいて優れている」


一歩、祭壇へ近づく。


「きっと、“応えてくれる”でしょう」


その言葉に。


空気が変わる。


「……悪魔が」


静かな囁き。


ざわめきが、一段深くなる。


「さあ」


カイルが手を振る。


「子供たちを、祭壇へ」


「おおお……」


歓声にも似た声が上がる。


フードの者たちが動く。


リリアンの腕が、再び引かれる。


「進め」


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