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31.心に浮かんだ想い

「……………!!」


 怖い。嫌だ。気持ち悪い。

 そんな気持ちが一気に頭をよぎる。


「ハインリヒ様!!!」


 気付けば、その名前を叫んでいた。


「何言ってるの。こんなところに来るわけ……え?」


 嘲るような妹の口調が疑問に変わった。同時に聞こえたのは、聞き慣れた……大好きな男の人の声。


「お前ら、マレンから離れろ」


 目の前にいた男子生徒が吹っ飛んだ。いや、ホントに文字通り。ついでに、腕や足を押さえていた人たちも吹っ飛んでいた。


「マレン! 平気か!?」

「……ハインリヒさま」


 ボロボロ泣き出して、すがりつく。


「何された!?」


 怒ってくれるハインリヒ様の声が、とても嬉しい。

 私は首を横に振った。


「……だいじょうぶ。地面に押し倒されただけだから。ちょっと背中が痛かったけど」

「なるほど分かった。あいつらの背中を踏み潰そう」


 本気でやりそうなハインリヒ様に、ちょっと笑う。

 さっきまであんなに怖かったのに、もう笑える自分にビックリだ。


「ハインリヒ様、十分じゅっぷんって約束だったのに、まだ五分も経ってないよね?」

「……いいじゃないか、別に。様子次第じゃ、邪魔はしないつもりだったんだから」


 ハインリヒ様が出した条件。それが、「話をする時間は十分だけ」というものだ。十分経って迎えに行くまでと言われて、私はそれに頷いた。

 でも、どう考えても十分なんか経ってない。言い訳がましいハインリヒ様が、ちょっと可愛い。


「でも、助けてくれてありがとう。来てくれて嬉しかった」

「ああ」


 素直にハインリヒ様が十分待ってたら、私も無事じゃ済まなかった。自然に出た笑顔でお礼を言ったら、ハインリヒ様は少し照れたように笑った。


「なんでっ!? なんでハインリヒ様、そんな低能のこと、助けるんですか!!」


 すっかり忘れてた妹が、そこにいて叫んでいた。ハインリヒ様が私を背中で庇うように立って、妹に向き直る。


「ピーア嬢、これはどういう状況だ? マレンはファルター殿下に呼び出されたはずだが、殿下はどこだ? なぜあなたがここにいる? 無関係ではないよな?」


「お姉様が悪いんです! ハインリヒ様、目を覚まして下さい! お姉様が何かして、ハインリヒ様を騙しているんです! あたしは、ハインリヒ様を助けようと……!」


 ハインリヒ様が、目を細めた。


「ほお。俺を助けようとして、マレンを男子生徒に襲わせたと、そういうことか? ファルター殿下の名前を騙って?」

「そうです! ハインリヒ様、分かってくれましたか!?」


 ハインリヒ様の声は低くて、どう聞いても怒ってるんだけど、なぜか妹は分かってくれたと顔を輝かせている。どうしてそう、自分の都合の良いように取る事ができるのやら。


「……話は分かった。とりあえず、シルとファルター殿下に話を通そう。ピーア嬢、一緒に来い」

「はいっ!」


 何も考えない妹は、満面の笑みで頷いている。それを不気味そうに見たハインリヒ様は、倒れて呻いている男子生徒三人の所に行く。私の手を掴んだままだ。


「さてお前ら、背中を踏み潰されて引きずられるのと、自分の足で立って歩いて、俺たちについてくるの、どっちか選べ」


 私でさえヒィッと悲鳴を上げたくなるくらいの迫力だから、目の前の男子生徒の恐怖はそれ以上だったろう。

 本当に踏み潰されると思ったのか、痛みに顔を歪めつつも機敏に起き上がっている。


「あ、歩きます」

「分かった、ついてこい。言っておくが、顔は覚えたからな。逃げようとしたらどうなるか、分かっているな?」


 ハインリヒ様の脅しに、男子生徒たちは真っ青な顔をして、無言のまま何度も頷いていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 理解不能っぷりはモンスターと大差ないけど下手に人型して人語を口にするだけに不気味さマシマシ
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